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その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
第四話 その黒死の暴威を彼らは知りたくなかった
622/1818

その地下四階の悪夢を僕らは知りたくなかった

「チューッ」


 四階に下りる。

 カインが梅雨払いしているのはネズミンのようだ。

 ただし、一階にいたネズミンとは違い、ニンゲン向けて襲い掛かってくる。


 僕は思わず図鑑を取りだした。

 見たくはないけど見ないわけにはいかないんだ。

 そして、やはり、予想通りだと気付かされた。


 ブラックネズミン

種族:ネズミン クラス:ネズミン

状態:黒死病

スキル:

 飛び跳ねる:ただ飛び跳ねたいあなたのためのスキル。追加効果なし。

 穴あけ:壁に穴を開けるスキル。

 噛みつき:噛みつく攻撃。稀に相手を黒死病にする。

常時スキル:

 帰巣本能:指定した家に自力で帰りつく能力。どんな場所に飛ばされても必ず帰って来ます。

 黒死の運び手:フリアールに寄生されやすい。寄生されるとフリアールに黒死病注入のスキルを与える

種族スキル:

 ぷにぽよん:ぷにんと柔らかくぽよんとした抱き心地。人肌温度で冬もあったか。

 大家族:一度に生まれる個体数が十倍になる。

 ドロップアイテム・ねずみんしっぽ・ブラックネズミンの皮衣・ブラックネズ耳カチューシャ


 やばい。これ完全にアウトな奴だ。

 アルセも今回は遊びがなかった。

 近づいて来るブラックネズミンを不折れネギでぶん殴ったり、叩いたりしている。

 トドメはもっぱら別の人が刺してるけど、丁度前衛が打ち漏らしたネズミンたちをアルセが処理している感じだ。


「なんだぁ? 上にいた鼠どもが凶暴になっただけか?」


「か、数が多いんだからダメージ喰らい易くなってるかも」


 ミルクティの言葉にクーフが仲間を見る。


「誰かダメージは受けてないか? ふむ。あの鼠の多さでノ―ダメージなら充分探索可能だな」


 納得するクーフの下で、アルセがぴょこぴょこ歩きながらしゃがみ込む。

 何してんのアル……ちょぉ!? 今の何!? 何食べた!?

 何をしてるのかと思えば突然地面に手を伸ばしてひょい、ぱくっと何かを食べるアルセ。

 頭上の花が踊り狂い花弁がぐるぐると回りだした。

 何あの大車輪? あの花弁、回るんだ。

 まるでダーツの的みたいに回る花弁を見ながら、ああ、今食べた何かで花弁が回りだしたんだね。と察してしまう僕でした。


 全くもう、ダメだよアルセ、拾い食いなんてしちゃ。

 笑顔で僕のもとへ戻ってくるアルセの頬をむにっと掴む。

 なんで~!? と意味が分かってないアルセに言い聞かせる方法がないのでむにむにっと頬を引っ張るだけにしておく。

 全くもう。アルセに教育出来ない自分が恨めしい。


「出現する魔物は黒皮のネズミンだけか?」


「ブヒ!」


「どうしたバズ? え? 下?」


 バズがダムッと地面を踏みしめる。

 なんだ? と思ったカインが地面をじっと見つめると、ぴょんぴょんと跳ねる謎の生物。


「なぁ、誰か魔物図鑑持ってないか?」


 パルティが僕に寄って来てどうします? と言った顔をする。

 当然。見せた方がいいと思う。

 僕は魔物図鑑を取り出し、おそらく魔物だろう飛び跳ねている生物を写してからパルティに渡した。


「あの、私が持ってます。これですよ……ね……?」


 そう言って図鑑のページを覗いたパルティが固まった。

 どうした? とばかりにアルベルトとミルクティが背後から覗きこむ。


 フリアール

種族:フリアール クラス:フリアール

状態:黒死病

スキル:

 飛び跳ねる:ただ飛び跳ねたいあなたのためのスキル。追加効果なし。

 吸血:相手の血を吸い取り栄養とするスキル。

常時スキル:

 帰巣本能:指定した家に自力で帰りつく能力。どんな場所に飛ばされても必ず帰って来ます。

 黒死無効

 黒死病注入:動物の血を吸い黒死病を注入するスキル。ネズミン以外の生物に黒死病が注入されると空気感染型の病を発症する。

種族スキル:なし

 ドロップアイテム・なし


「「い、いやああああああああああああああああああああああああっ!!?」」


 パルティとミルクティの絶叫が響いた。

 パルティから図鑑を奪い取ったアルベルトが身体を震わせ食い入るように見つめる。

 隣に載っているのはブラックネズミン。

 アルベルトはようやく自分たちの置かれた状況を正しく理解した。


「まずいぞカイン! こいつら魔物だ。吸血に気を付けろ!」


「気を付けろって、こんなに小さい生物だぞ、そこらじゅうにいるんだ、避け切れるか!」


「クソ、もう遅いってことか!?」


 アルベルトが泣きそうな顔で悔しがる。

 覚悟してたけど。やっぱりか……

 僕ら、ここで死んじゃうのかなぁ……


 計らずしもヘンリーの思惑通り、カインとネッテに致命的な危機を与えたということで奴の目的は達成されたようなものである。

 ……ん? あ、そうか!


 僕はアルセを操りフレイムベアーにグッドマークを送る。

 分かっていないフレイムベアーだったが、バズは即座に察したらしい。

 ブヒっと鼻を鳴らすと、察したフレイムベアーがその炎を床に広げた。

 次の瞬間、僕らパーティー全員をフレイムベアーの炎が包み込んだ。

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