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その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
第二部 第一話 それが偶然の一致だと彼らは知らない
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その能力の凄さを彼らは知らない

「すいません、新種の魔物報告を行いたいのですが」


 代表するようにネッテがカウンターで告げる。

 それを聞いた受付嬢ははっと我に返るように顔を上げた。

 ……寝てたなこいつ。


 目を開けたまま寝るとかなんとまぁ凄い技術をお持ちなのやら。

 あ、でも日本でも結構いるっけそういう人。

 先生の授業真面目に聞いてる振りして微動だにしていない川渕さんなんか先生の目の前で寝てたからなぁ。


 目開いたまましっかりと見据えているから先生も真面目な生徒だとばかり思っていたけどテストの点で直ぐに不審を抱いて判明した、目を開いたまま眠る女。

 判明した時の先生の顔は印象的だった。「やはりか……寝てる」顔を覗きこんで真顔で戦慄する姿が脳裏に焼き付いている。


「えっと、新種の報告ですね。既存の魔物と照らし合わせますので特徴を教えていただけますか?」


「討伐部位があるわ。これ。あとコレね」


「はい、ありがとうございます。これは……蛇型ですね。こちらは? この鱗、鰐? ブラッディクロコダイルを倒したんですか? いえ、違いますね。この色合いよりもう少し黒かったはず……ふむ、ふむ。【鑑定】……あら?」


 何かスキルでも使ったのだろうか?

 鑑定と口にした瞬間何かに気付いたように目を見開く。


「これは素晴らしいですね。間違いなく新種の魔物。いえ、魔族です」


「魔族!?」


「種族名はワーダイル。鰐人間ですね。どこに居たんですかこんな生物」


「えっと、あの川って何て名前だったっけ?」


 受付嬢は背後の職員に声を掛けて地図を持ってくる。

 そのおかげでかいんのばーか川を指差すことで居場所を特定させられた。


「え!? ストラウテ河に行ったんですか!? よく戻って来れましたね」


 なんと!? あの川の名前が判明してしまった。

 ストラウテ河? あの川にそんな大層な名前はいらん。かいんのばーか川で十分さ!


「他にもいくつかの生物が存在していたわ」


「魔物の分布図だけでも助かります情報の提示を」


「えっと、まず向ったのはこの平原。ここではあの狼モドキに襲われたわ」


「ああ、アレですか。トルーミング王国へ向う際に使われる平原なんですけど、魔物が強力過ぎて滅多に使われないんですよね。なのでここから先は殆ど人の手が入っていません」


「この森ではスマッシュクラッシャーが大量に出たわ」


「スマッシュクラッシャーが? 魔物学者には宝庫ですね」


「で、この川なんだけど、昼間に見たのは河原部分に小型竜が居たわね。容姿は……こんな感じ」


 と、見せたのは結構リアルな絵だった。ネッテも絵は上手いのか。


「あと、スライム、河童とリザードマン、魚に手足の生えた生物も居たわね」


「スライム……というとそのアルセイデスの頭に乗っているモノですか?」


「いえ、これは多分スライムの亜種だと思うんですけど」


 と、ネッテが呟いた瞬間、受付嬢はぐわりと目を見開いた。


「鑑定!」


 僕ら全員に目を向けて受付嬢は再びスキルを使う。

 次の瞬間、慌てたように踵を返して走り出してしまった。

 なんだ? と思う間もなくドアの向こう側から叫び声のような声が響く。


「マスター、マスターッ!! 大発見、大発見ですッ! 早く来いやコラァッ!!」


 ちょっ……

 口調、口調がおかしいよ。

 受付嬢さん正気に戻って! マスターさん逃げてーっ。


 少しして、カインたちは別室に通されることになった。

 うん、こういうイベント、自分が主人公なら大歓迎だったな。

 別室は簡素な客間で、中央部に角の丸い四角い机、その左右に長椅子があり、右側の中央にギルドマスターらしき人物が座っていた。


 カイゼル髭の初老のおじ様である。

 ダンディだ。

 その背後に先程の受付嬢が目をキラキラさせて立っていた。


「ささ、どうぞ座ってください。どうぞどうぞ、さっさと座れコラッ」


 ちょっと小さめの声だけど最後の一言聞こえたぞ。

 何この人、恐い。

 カインたちは促されるように長椅子に座る。

 カイン、ネッテ、リエラの順に座り、バズ・オークとクーフは椅子の背後に佇んだ。


「新種の発見という話を聞いたのだが、コリータ、なぜ私は呼ばれたのかね?」


「はい。鑑定スキルを使ったのですが、彼らの従えている魔物が全てレアモンスターですよ! 五体全部です!」


 おお、バズ・オークたちもレアなのか。うんうん……うん?

 五体?

 改めて数を数えてみる。

 バズ・オーク、アルセ、スライムもどき、たぶんクーフも。

 後一人……は?


「まず、バズ・オークですっけ? 人語読解スキルと忠誠騎士の称号を持っているオークナイトです! 普通あり得ませんよ。人間……じゃない。アルセイデス!? に忠誠を誓うオークなんて! 知能度も高いですし」


 おお、バズ・オークが凄いらしい。

 やはり彼はアルセに忠誠を誓っているのか。

 というかあの女の人、もしかしてゲームのステータス画面みたいなのが見えるのだろうか?


「次にミミック・ジュエリー」


 おお、スライムもどきの種族名判明だ。

 というか、全員の説明するのこの人?

 まぁ五体らしいから別にいいけど、僕が入ってたら即行止めるよ。

 リエラが隠そうとしてるみたいだし全力で阻止します。

 コリータ

  クラス:○○○国ギルド受付係

 ・疲れた顔の女性

  目を開けたまま寝れる。

  スキル:鑑定 

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