その討伐隊が組まれたことを勇者は知らない
「全く、あの勇者面倒なことしてくれるわね」
「洞窟内だから精鋭部隊で救出に向かった方がいいわね。どうします?」
アカネの言葉にエンリカが告げる。
そうね。と考え始めたアカネは僕らを見回した。
ピンからキリまで素敵なメンツが揃ってます。
「とりあえず、にっくんとかレーニャは留守番の方がいいわね。下手したら捕えられかねないし。それとのじゃ姫も留守番」
「のじゃ!?」
「洞窟内が狭いのよ。あなたの強みである部下召喚が役に立たないばかりか皆の動きを阻害しかねないわ」
確かに、おじゃるとかござるだらけにされたら動きが取れなくなるし、それに紛れて奴らが逃げる可能性はあるかなぁ。
そういった感じで勇者相手に満足に闘えそうにない人をどんどん切って行くアカネ。
結果的に残ったのが魔王と対峙しても充分闘えるメンツだ。
「ま、待って、バズまで留守番なんて!」
「ブヒ」
「で、でもあなた、酷いわ。バズは凄く強いのよ?」
いや、確かにバズは強いの分かってるけど、あんたに言われるのが一番つらいと思うよ。エンリカさんのが無駄に強いから。
「バズが強いのは分かってるのよ。できるなら守り要員で付いて来て貰いたいとは思うわ。でもね、バズにはここを守ってもらいたいの」
「ここ?」
「ええ。ネズミンランド入口。もしも逃げられたらここが最後の防衛戦になるわ。地下へ潜るわたしたちが戻るまで、ここを守ってもらう存在も必要なのよ。だから、戦乙女の面々と共にバズにはここで皆の指揮をお願い。のじゃ姫が居れば魔物が溢れて来ても対処できるでしょ?」
「魔物が溢れるって……」
エンリカの言葉に、アカネは答えず皆を見る。
「ダンジョンに潜るのは私、リエラ、エンリカ、プリカ、ネフティア、ロリコーン紳……なにアルセ? え? あいつ進化してたの? ああ、うん。じゃあロリコーン侯爵ね。チグサさんもお願い」
「私も、ですか。でも……」
「行ってきてチグサ」
戸惑うチグサさん。でもケトルさんにお願いされ、不承不承頷く。
姫の護衛はのじゃ姫に任せなさい。
「デヌと葛餅。このメンツでしょうね」
あれ? アルセは? 僕は?
うそん。戦力外通知ですか?
そしてアカネさんは僕を通りすぎルクルのもとへ向う。
「ルクルたちはアルセを見ていてあげて。アルセの暴走はあんたたちに任せるわ」
だいたいアルセの近くに一番多くいるルクル。皆の認識ではルクルさんはアルセのストーカーとして認識されているようで、アカネの言葉になるほど。と納得した顔をする面々。
それでいいのかチミたち。
「辰真、貴方も強いんだけどバズと一緒にツッパリ率いてここに居て。何か嫌な予感がするの」
「オルァ」
まかせな。とアルセバットを地面に突き刺し仁王立ちする。なんか様になってるな。
これ、まるで今からカチコミ行くぞテメーら。とか言いそうな姿じゃない?
ツッパリ達も少しづつだけど辰真のもとに集まりだしてるし、直ぐにツッパリ愚連隊が完成するだろう。
「じゃあ、準備はいい?」
アカネを筆頭に、リエラ、エンリカ、プリカ、ネフティア、ロリコーン侯爵、チグサ、葛餅、デヌのメンバーがネズミンランドへと向って行く。緊急事態ということでさっさと入って行ったけどギルドから派遣された案内役の人が困った顔をしている。
モーネットさんがいてくれてよかった。
戸惑う案内役の人に説明を始めて、危険を伝えて一般人の見学者を帰しているらしい。
「ピィ」
「お? おー」
「まっまっ」
ハーピークイーンがしょげかえった顔をする。自分たちの不注意で迷惑掛けてすまない。みたいなことをアルセに告げるが、よく分かっていないアルセは首を可愛らしく捻るだけだ。
熊姫様もなんか謝ってるような感じだけど、アルセは理解できてません。
それからしばらく、僕らはネズミンランド入口でぼうっとした。
暇だけどここで待っとかないとね。
アルセたちは空が暗くなったせいで松明持って踊りまくっている。
ファイヤーダンスだね。可愛いよアルセ。
ちなみに、図鑑で確認したらハーピークイーンの名前がピッカというネームドモンスターになっていることに気付いた。
しかもいつの間にかアルセと親友になってるし。
でも熊姫様とは友人にもなってないんだねアルセ。なんで?
って!? うわあああああっ!!
ピッカの羽に引火しとるっ!?
気付いたピッカが走りだす。
気付いたゴールデンベアーがアクアリウスベア―に即座に指令を送るが、追い掛け始めるアクアリウスベア―がピッカに追い付かない。
燃えてるなら止まれば消火して貰えるのにパニック起こして立ち止まるという思考すらできなくなっているらしいピッカ。僕らはしばらくピッカに振りまわされるように大騒ぎするのだった。
追伸、ピッカの頭がボンバーヘッドになりました。




