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その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
第四話 その黒死の暴威を彼らは知りたくなかった
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その魔物が連れ去られたことを僕は知りたくなかった

 葛餅がスカイベアーから何かを聞いた。

 即座に会話のためにプレートに何かを書いて行く。

 何書いてんだろ? そう思って覗き込むと、予想外のお話が。


 同じように覗き込んだリエラもだんだんと顔が青くなっていく。

 そこには、アルセの代わりにアルセイデスがヘンリーと名乗る男に連れて行かれたという事が書かれていたのである。


「あ、アルセの代わりにって、え? どういうこと?」


「あー。もしかしてだけどリエラ。またアルセとドリアデス間違えたでしょー」


「ドリアデス……あ」


 なんとなく思う事があったらしい。アニアの言葉にリエラがばっと顔をあげる。

 まぁ、確かに僕とアルセが一緒で間違えてアルセイデス連れてく現場見てたからね。ドリアデスではなかったけど間違えたのは確実だ。


「そういえば、あの時ルクルがアルラウネ達に着いて行ってたのは……あっちにアルセがいたから? 連れて来たアルセイデス。確かに今思えば頭の花が双葉だった気が……」


「それってつまり、アルセの代わりにアルセに似た魔物が連れ去られたってことですよね?」


 パルティの言葉にリエラが力なく頷く。

 普通の人からすればアルセイデス一匹と思うかもしれないが、僕らにとってはその一人がかけがえのない魔物になる。


 リエラとアルセの視線が交錯する。

 コクリと頷き合う二人。

 それが伝播するように、周囲の仲間たちも真剣な顔へと変化する。


「探さなきゃ」


「おー!」


「えっと、とにかく集合場所決めて散開しましょ、何か情報を得たら必ず皆に知らせること。先行して勇者に敵対したりはしないこと。それと……」


「カインさんとネッテさんには連絡がいかないように秘密裏に救出すること、ですね!」


 噴水広場を集合場所に指定して、僕らは散開して情報を探す。

 アルセイデスを抱えたヘンリー。多分ホーキンスもだから二人組を探せばすぐに見つかるはずだ。


 僕はアルセ、ルクル、リエラの四人で北側を探索する。

 でも、こっち側はアルセと見送りしたしなぁ。もしかして入れ違いで? あり得そうではあるけれど。


「そういえば、北門の衛兵は基本門前に立ってないですよね?」


「お?」


 リエラは普通に話しかけて、気付く。このメンツでは人間が一人だけ。リエラの言葉に何かを返してくれる返答者がいらっしゃらない。


「あら? 何してるのリエラ?」


「ブヒ?」


 丁度北門前の人通りが少ない一角、豚が屯している場所があった。

 プリカを中心に集まっていたオーク集団からかなり離れ、奥まった場所へと向かっていたバズとエンリカが、リエラに気付いて声を掛けて来たのだ。

 あの二人、我慢できなくなって人気のないところで子作りする気だったな。


「エンリカさん! バズさん!」


「リエラ? なにかあったのね!」


 察しがいいエンリカがバズと頷きリエラに合流する。

 エンリカに呼ばれたプリカもしぶしぶ彼女のもとへとやってきた。


「うぅ、お腹減ったよぉ」


「さっき店一つ潰れるくらい食べたでしょ」


 結局潰れるのかあの店。新装開店大セールとかするから……

 沢山の人に高い値段で配る予定だった豚の丸焼きが何体も二人に丸呑みされて金が殆ど入らなかったんだとか。

 お金の付け方失敗して大損こいたって奴だね。可哀想に。


 リエラから現状を聞いたエンリカとバズがオーク語で会話を始める。

 時折えーっとプリカが言っていることからして、プリカ参加で彼女の食指が動かない出来事があるようだ。

 まぁ、探索に参加させられる程度だろうけど。


 とりあえず、森の警護をしていた兵士達にこちらに来てないかの確認を行う。

 北門から脱出したというわけではないらしい。

 後この辺りに行ける場所があるとすれば……

 ああ、ネズミンランドがあったな。

 アルセと共にネズミンランドへと歩を進める。


「あ、ちょっとアルセちゃんどこ行くの!?」


「待ってプリカ、これ、もしかしてアルセがまた?」


 何かを感じ取ったのかもしれない。とエンリカさん。

 いや、ただ僕がこっちに歩いてみただけですからね。大した理由は無いですよ。

 アルセを先頭にしてリエラ達がぞろぞろとやってくる。


 こんな日だからかさすがにネズミンランド入場者は少ない。

 それでも入口に案内人と数人の人が並んでいるのが見えた。

 リエラが先行して案内人に妖しい人物がいなかったか聴いている。


 会話が終わると、リエラはチグサから渡された信号弾を空へと打ち上げた。

 何か情報を得たらその場で打ち上げてくれと言われていたモノだ。

 忍者の秘密道具の一つなんだって。よくもまぁ用意で来たねチグサさん。


 数分後、リエラのもとにアルセ姫護衛騎士団と魔物たちがほぼ集合していた。

 集合してないのはネッテ、カイン、そしてマリナさんくらいだろう。

 全員貴族との会合中だ。あ、クーフ達もか。


「何か緊急事態ですって?」


 アカネさんは丁度一緒だった戦乙女の花園の面々を引き連れやってきていた。

 頼もしいメンツが揃ってるね。

 これ、ヘンリーさん完全に詰んでない? 僕が何かするまでもないような?

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