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その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
第四話 その黒死の暴威を彼らは知りたくなかった
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その魔物が連れ去られたことを僕は知らない

「おーっ!!」


 丁度城から出てきたリエラ達を見付けて、僕はアルセと共に近寄った。

 チグサとケトルもいるが、後はハーピークイーンと五匹の熊だけだ。

 他の面々はまだ下町でパーティー中らしい。


「あ、アルセどこ行ってたの!」


「着替えを終えたら居なくなっていたので驚きました。勝手にどこかに行かないでください。魔物達の言葉も分からないので困ったんですよ」


 ……どういうこと? って、そういえば一緒に連れ去られたアルセイデスが居ないね?

 魔物の言葉を理解出来る存在がここには居ないので、とりあえずアニアかエルフ、ロリコーン侯爵を探す事にした。

 アルセが指し示す手に従ってルクルと共に移動すると、リエラ達もぞろぞろと付いて来る。


 初めに発見した知り合いは、パイラだ。

 豚の丸焼きを半分くらい平らげているところを見つけました。

 本人は僕らに気付いて視線を向けて来たけれど、食べる方を優先したらしい。

 そのままあむあむむぐむぐと豚の丸焼きを骨も残さず消して行く。


 普通ならここにプリカが居そうなモノだけど、居ないね。

 エンリカに連れ去られたから別の場所かな?

 ここにいるのは貴族の最高権力者ダンデライオン元当主を名乗るゴードンさんとその冒険者パーティーだ。

 パイラの喰いっぷりに声援飛ばしている。


 アルセがぺしぺし叩いて来たので降ろしてみると、パイラのもとへ駆け寄っていって、懐から1ゴスを取り出す。

 豚の丸焼き食べながら受け取ったパイラさんは、突如ぐわっと口を開き、残っていた豚の顔を丸ごと口の中へと押し込む。

 なんか見ちゃいけない凄い捕食が行われた気がする……


 ごくりと飲み込むと、艶めかしくペロリと唇を舐める。

 周囲から歓声が響いた。

 まぁ、丸ごと一頭食べたみたいだからね。

 というか、今の豚でいいんだよね? オークじゃないよね?


 ゴスを食べながらアルセに付いて来たパイラを仲間に加え、僕らは再び下町を練り歩く。

 アルセがまた肩車を強請って来たのでちゃんと肩車しました。ルクルが羨ましそうにるーっと声を出してたけど、さすがにルクルさんを肩車できる力はないよ。重……げふんげふん。身長がね、バランス悪くなるから。


 次に見つけたのはレーニャです。

 どこ行ってたのかと思ったらこんなところに居たよ。くーくーと丸まって眠っているレーニャには、無数の女性が集まっている。

 冒険者だけでなく貴族も皆触りたそうにしているけれど、カレー猫なので触るに触れないようだ。


 しかも、眠っているはずのレーニャからは時折「ちゅー」と鳴き声が聞こえる。

 凄く気になるようだが、手を出す事が出来ずにうずうずしている。

 その中に戦乙女の花園のメンバーと一緒にいるアカネを見付けた。

 呆れた顔の彼女はこちらに気付いて視線を向けて来る。

 今日だけは向こうのメンバーと一緒に居たいようだ。しばらく別行動よ。と視線が言っていた。

 別に僕は問題無いので放置です。

 

「ふふ、なんかこうしてお祭り見るのいいですよね」


 貴族のお堅い社交界から解き放たれたリエラが隣にやってきてはにかむ。

 素敵ですリエラさん。


「あ、リエラさーん。こっちこっち!」


 そんなリエラに、声が掛かる。

 誰だろう? と二人でそちらを見れば、射的の弓バージョンの屋台横に座っていたパルティが手を振っていた。


「あら、あそこにいるの、葛餅じゃない?」


 リエラが気付いて駆け寄る。

 僕らも一緒にそちらに向かうのだが、ビキリと思わず固まってしまった。

 何しろ、葛餅を、粘体鉱石野郎を愛おしげに抱えて撫でているお姉様が一緒に居たのだから。


「ネッテさんたちの結婚を聞いて葛餅さんとその友達が来てくれたんだって」


 合流したリエラが皆と話し込む中、僕は心の中にボッと灯った嫉妬という名の悪意が激しく燃えだすのを押さえるのに必死だった。

 何故だ? 何故鉱石風情があんな綺麗なおっとり系お姉様に愛されているんだ?


「おーっ?」


 早く行こうよ。とぺしぺし頭を叩いて来るアルセ。

 我に返った僕はゆっくりとスライムモドキへと近寄っていく。

 すると、スライムモドキが文字が書かれた板を取り出し持ち手を掲げてこちらに見せる。


 ―― お久しぶり! ――


 バカな!? 会話が可能になっただと!?

 アンブロシアを食べてないのになぜ! なんなんだこのチート生物は。

 ちくしょう。酷い。僕は存在すら認識されてないのに、人ですらない無性生物が女性にモテるなんてっ。

 葛餅と再会したいアルセが僕から降りる。

 アルセが無事に降りたのを確認して、四つん這いに葛折れた僕は血涙流して悔しがるのだった。

 葛餅、許すまじ……


「くまっ!」


 人とのコミュニケーションが取れる存在が居ると気付いたスカイベアーが突然声をだす。

 先程まで撫でられていた葛餅が女性の拘束から抜け出し地面に降りると、スカイベアーの前にやってくる。

 プレートを取り出し、どうした? と聞いていた。

 本当にコミュニケーション出来てるし。優秀すぎるよ、この饅頭。

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