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その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
第三話 その集まり過ぎたモノたちを彼らは知りたくなかった
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その間違いを僕らしか知らない

「ふふ。今夜は堪能させていただきましたわ」


「明日からは社交界となっておりますが、ご参加されますか?」


「有難い申し出ですが、森の管理もありますの。エイントワール閣下、もしもよろしければ、オリーの森へお越しになって。我が眷族共々歓迎いたしますわ」


 スクーグズヌフラさんはそう言って王様の首筋にキスをする。

 厳つい顔だったのにでれっでれにとろけてます。完全に行くなあれは。

 王国が一つ滅ぶ未来が確定したようだ。

 とりあえず、ナムナム。


「今夜は楽しかったわアルセ姫」


「お」


 アルラウネはアルセと談笑中。そのまま二人も、一緒に退出しようとするスクーグズヌフラに着いて行く。多分そのまま街の外まで見送るんだろうなぁ。

 ついて行くか。


「それじゃあネッテさん。私達も早めにお暇させていただきますね?」


「ええ。ありがとうリエラ。皆も。明日は民間の祭りに出ていてくれればいいわ。ゆっくりしていってね」


「はい。さ、行こうアルセ。ドレス着替えなきゃ」


 ……はい?

 リエラはネッテとカインに暇を告げて、アカネ達と一緒にアルセの手を引き去っていく。

 服を着替えた場所に行くようだ。でも待って。あれ? アルラウネと一緒に向こうに行ったのはアルセだよね?

 アルセはこっちに行ったのにリエラ達もアルセを連れていっている、と。

 ……違う、アレ、アルセイデスだ。


 懐かしい双葉のアルセイデスを引き連れ部屋へと戻っていくリエラ。

 教えようかと思ったけどアルセ一人にするのも何か怖い。

 し、仕方無い、今はアルセと一緒に行こう。後で森に返せば大丈夫だよね?


 一抹の不安を覚えつつ僕はアルセのもとへと向かう。

 まぁ、そのうち気付くだろ。しかし、何で皆他のアルセイデスやドリアデスとアルセを間違えるんだろう。

 花見れば即行分かりそうなもんなんだけどなぁ。


 アルセ達に追い付くと、彼女の後を付いて行く。

 しっかし、凄いスタイルだなぁスクーグズヌフラさん。

 とりあえず写真撮っとこう。


「ルー……っ」


 ひぃっ!? 地の底から這い寄ってくるような嫉妬じみた声がっ!?

 怖い怖い怖い。スト―キング止めてくださいルクルさんっ。

 一瞬実体のない地縛霊でも出てきたかと思ったわっ。


 城から出ると、物凄いお祭り騒ぎで耳が痛い。

 まさしくどんちゃん騒ぎという奴だ。太鼓とかがなくて良かった。さらに姦しくなっていただろう。

 北門へと向かう途中、なんか見覚えのある二人が直ぐ横を通って城へと入って行った。

 あのケツアゴ、どっかで見た気がするんだけどなぁ。

 いや、でもあいつは今牢屋だし、他人の空似?


 もう一人がアルセ達をじぃっと見てたけどケツアゴに促されあいつはこっちだ。みたいなこと言われて城に入って行っちゃいました。

 うーん。まぁ、いっか。そこまで問題にはならないだろう。


 北門でアルラウネ達との別れを惜しむ。

 スクーグズヌフラとドリアデスたちは東門らしいので、ついでにここでお別れです。

 皆でまた会いましょうとか、主にアルラウネとスクーグズヌフラが言い合って別れて行った。

 別れを惜しむ姿はまるで引き裂かれる姉妹のようでちょっと泣きました。


 聖樹の森へと帰って行くアルラウネ達に最後まで手を振るアルセ。

 そして、その場にはアルセだけが残される。

 見えなくなった後もしばらく腕を振り続けていたアルセは、少し寂しそうな顔で腕を止め、ゆっくりと下げて行く。

 なんだか涙を流さず泣いてるみたいだったので、頭にぽんと手を置いて、優しく撫でる。

 気付いたアルセが見上げて来る。


 あ、居たんだ。みたいな驚いた顔をしていたけど、直ぐに微笑みを浮かべた。

 うん、本当百点満点の笑顔だよアルセ。

 そんなアルセは両手を僕に向けて来る。


「おーっ」


 まるで抱っこ。とせがまれた気がして、僕はアルセを抱えあげた。

 ん? あれ? 違うの?

 不満そうにぺしぺし叩いて来たアルセ。

 一度降ろすとさらに不満そうにぷくーっと膨れる。


 なになに、どうしたの?

 しゃがんで何がしたいんだ? と意思確認しようとすると、なぜか背後に回ったアルセが背中によじ登って来る。

 ああ、抱っこじゃなくておんぶね。

 でもそれも違ったらしい。お尻抱えたら後頭部をがじがじ噛まれました。

 どこで覚えたのアルセ。


 しばらくアルセのやりたいようにやらせてみると、どうやら肩車が正解だったみたいだ。

 アルセが頭に手を置いてしゅっぱーつ。とばかりに右腕突き上げ「おーっ!!」と叫ぶ。

 はいはい。出発しましょうかお嬢様。

 僕は苦笑しながら、我がまま少女のお気に召すまま、ゆっくりと歩き出すのだった。

 寂しい別れの場所を離れ、喧騒に塗れた祭り会場へ。


 うーん。なんだか娘と夜店に来たお父さんみたいな気がするな。リンゴ飴とかないかなぁ。

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