その魔物達の集まりを民衆は知りたくない
「ピィ」
初めにやってきたのはハーピーの群れだった。
零れる胸が揺れまくる様子は、もう、眼福です。近くに居たお爺さんなんかはもう、神様拝むみたいにありがたやありがたやとか言ってるし、おっちゃん連中はガン見である。
子供たちは服着てないよー? と心配してるが、母親から見ちゃいけませんと視線を隠されている。
でも、そこいらじゅうの露店などに出没しているハーピー達全てから視線を隠す事はできていないようです。
代表して一匹のハーピーがアルセのもとへとやってくる。
なんか光る王冠みたいなの被ってるけど、この個体、僕が胸揉んだ奴だ。
そいつはやうやうしく足を折って座ると、アルセに頭を下げた。
「ピィピィピィ」
「お~~~~~」
謎の会話が発生しました。
訳すと、多分だけど、本日はお招きいただきありがとうございます姫様。苦しゅうない近こう寄れ。みたいな会話だと思われます。
アルセへの挨拶を終えたハーピーは他のハーピーへと指示を飛ばし、ハーピー達は楽しげに散開、無料屋台へと近づいて行く。
魔物用に幾つか無料の屋台が出てる。ただし、無料と言ってもお金の代わりに素材との交換になるようで、ハーピー達は羽を一つ毟って差し出して対価を貰っていた。
いや、ハーピーの羽とか、普通に焼き鳥より高いから。
……ってぇ!? 鳥が焼き鳥喰っとる!!?
「にょっき」
次にアルセに近づいて来たのはアンダカギオギオ族。
にょきにょき言ってたけど、挨拶はハーピーとそう変わらない。
ただ、カインが生贄になってた時のことを代表のアンダカギオギオさんは懐かしげに語っていた。
あれ、懐かしく語るようなことだったっけ?
アンダカギオギオの群れが去っていくと、ヘルピングペッカーの代表として一際デカい個体がやってくる。
ヘルピングペッカーまだこんなにいたんだな。
「お、お、お……」
「おー?」
「オメデトーッ」
やはり鳥なようで首が忙しなく動き周囲を確認しているヘルピングペッカー。声を出した時には丁度横に位置していたアカネに告げていた。
私じゃないわよ。っと思わず突っ込み入れていたけど、ヘルピングペッカーは気にせず去っていく。
しかし、ヘルピングペッカーにも上位個体いたんだなぁ。
「ヘアッ!」
次に現れたのは七人の戦士、レインボーレンジャー。
アルセの前でビシリとポーズを決める。
アルセさんはお気に入りのようで、リーダーの真似をしながらおーっとはしゃいでいます。
そんな戦隊ヒーローたちはカインとネッテに視線を向け、頭を下げる。
ヘアッと叫んだことから、多分ご結婚おめでとうとか言ってるんだろう。
なんでダンジョンモンスターがそんな知恵を持ってるのかは知らないけど。
……あれ? ポシェット内のアンブロシアが一つしか残ってない? おかしいな、ついこないだ勝手に百個ぐらいに増えてたはずなんだけど……まさか。
思わずアルセを見る。ポシェットが使えるのは僕とアルセだけだ。僕が知らないとなると犯人は……
一体、何をしちゃったんですかアルセさぁんっ!!
無邪気に笑う少女を見ながら、拡散したらしい知恵ある魔物たちに僕は一人青くなって震えるのだった。
「くまっ」
よぉ、来たぜ。みたいな顔で五匹の熊がティディスベアの群れ連れてやってきた。
「おーっ」
楽しげに手を振るアルセ。ゴールデンベアーが歩み出て今回の招待状のお礼を言い始める。
というか、出て来ちゃって大丈夫なの? 冒険者連中がゴールデンベアー見て物凄い目を輝かせてるよ。
金銀財宝が目の前歩いてる。みたいな凄い形相です。
「まっ?」
どうやらこれから僕らがどこに向かうか気になったようで、首を傾げるゴールデンベアー。アルセは律義に踊りに行くのみたいなことを告げてます。
踊りだしたから多分そうなんだと思う。
ゴールデンベアーはアルセの軽い踊りを見てまぁまぁ。とカラコロ笑っている。
「まっ」
「くまっ!?」
そして、城に行ってみたいというゴールデンベアーに驚く他の熊たち。
気付いたネッテが王族かその側近しか行けない事を告げて諦めさせようとしたのだが、残念、ゴールデンベアーは姫様でした。
「きゅーっ」
ベア軍団はネッテ達に任せ、次に現れたスマッシュクラッシャーの代表がアルセに挨拶を始めた。
どうやら今までの行動を反省するので自分たちの群れをアルセの傘下に入れてくれ。みたいな交渉を始めて来た。
アルセは分かっていないようなので友達感覚でいいよーみたいな了承しちゃってます。
こうしてスマッシュクラッシャーたちはアルセの傘下に加わった……って、どうするのアルセ、こいつらの今後どうするつもり?
結局、なんやかんやで貴族の祝いに姫であるアルセとゴールデンベアー、そしてなぜかハーピーの代表まで一緒に来ることになりました。この子もハーピークイーンで姫、というか女王なんだって。
前代未聞、魔物の姫たちまで参加する貴族の結婚披露宴が今、始まろうとしていた。




