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その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
第二部 第一話 それが偶然の一致だと彼らは知らない
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自分たちの注目度を彼は知らない

 まずは行きつけの宿屋に向って宿を取り、クーフの柩などかさばる荷物をおいた僕たちは、一番最初に荷物を少なくしようとギルドを目指す。

 街中を歩けばクーフの姿に二度見する民間人だったが、やはり有名に成り始めているのだろう。

 アルセやバズ・オークを見た彼らは明らかに、あ、いつものあいつらだ。といった顔で放置を決め込み始める。


 いい傾向なのだろうか? 

 まぁ、アルセ達魔物や魔族にとっては放置されるのだから良いことだろう。

 蔑んだ目で見られるカインたちには気の毒だけど。


 ちなみに、周囲の人々からはカインを悪魔寄りの勇者。ネッテを魔獣使いと噂している。

 リエラ? 二人に心酔する気の毒な荷物持ち新人ルーキーとか言われているよ。ヤッタネ!

 一部の人たちはバズ・オークを見てあの豚人間ちょっといいかも。とか噂してるけど……本気か?


 他人の好みって、すごいよね。

 ちなみに、僕らのパーティー内では一番人気アルセ。やはり笑顔の少女というのが人気の理由だ。

 次にカイン。やはりイケメンは爆死した方が良いと思う。

 次にリエラ。どうも二人について行く姿がカモネギの親子みたいで可愛いとのことだ。カモネギは魔物の一種だけど下から数えて十位以内の弱い魔物で、水辺に生息する背中の中央にネギが刺さったカモのような姿を持っているらしい。


 次代がネッテ。ネッテの場合魔獣使いという噂も相まって俺も叩かれたいとか、調教してほしいという願いを持つ男たちに支持されている。

 うん、ダメだろ。

 それでいいのか男達よ。


 そしてバズ・オーク。彼の人気は最近うなぎ登りである。奥様方になぜか人気なのだ。

 どうもアルセや他の面々を影ながら支えている姿が騎士を思わせるらしい。

 容姿のことを含めるため多少人気は少ないが、これからが期待だな。


 クーフやスライムもどきは初顔合わせなのでゼロに等しいけど……って、そこのお姉さん、クーフ相手にダンディとか目は確かですか?

 あ、当然ながら僕には誰もいいね! くれませんでした。


 そんな面々は憧れ半分陰口半分を受けながらギルドへと向います。

 ネッテがまたスライムもどきの登録しとかないととか言っていたけど、スライムもどきは完全に魔物だよ。原始生物だと思うよ。ペットにするの、むりじゃないかな。


 ちなみにクーフは知識を持っている上に人と普通に会話できるので亜人族扱いになるらしい。

 亜人族はこの国では見かけないけれど、別の国では普通に闊歩してるらしいので登録の必要はないのだとか。

 面倒が無いなら問題無いとクーフも登録はしたくなさそうだった。


 ギルドは相変わらずの賑わいを見せている。

 僕たちが入って来ると一瞬にして殆どの視線がこちらを見て来たが、リエラに抱えられたアルセの笑顔を見て一部の女性陣と厳つい男たちが破顔していた。

 アルセは本当に人気だよな。

 アルセイデスだけど人に慣れているのかマーブルアイヴィを使って来ない事もあって普通に可愛らしい女の子にしか見えないのだろう。


 一部女性冒険者にはもうアルセイデス狩れないとか嘆いていたのもいる。

 10万ゴスと可愛さの間で揺れ動く乙女心、僕には全く分かりません。

 終いには頭抱えて悲鳴じみた絶叫を迸しらせながらアルセに抱きついてごめんね。とか絶対にもう剣は向けないとか言っていた。

 いや、危険だから野生のアルセイデスに不用意に抱きついたりはしないようにね。


「随分と密集してイルな」


「ああ。冒険者ギルドなんて皆こんなもんだ」


「冒険者も年々増えるし、依頼も結構入れ替わり激しいからねぇ。あ、見てリエラ、次の賞金首貼られてる。後で見に行きましょ」


「はい。えっと、まずは魔物の部位証明があるから、買い取りですか? あれ? でも買い取りは外の業者に委託されてますよね?」


「いいえ。新種発見報告があるから魔物討伐総合窓口よ。それに魔物の部位はここでいいの。後で向こうに並ぶから今日は長丁場になるわよ」


 ……ギルドっていろんな窓口あるんだなぁ。

 僕はギルド内部を改めて見回してみる。

 正面に第一、第二受付。側面にその他受付の看板。

 このカウンターに座っている女性たちが受付嬢と呼ばれるギルドの華である。


 人が多いのに依頼の受付と可否報告の受付が二つだけって。そりゃ込むよね?

 ついでにその他の受付が窓口一つだから依頼者だらけで行列出来てるし。

 で、だ。その他受付窓口の対面にひっそりと存在するのが魔物討伐総合窓口である。


 これは魔物討伐に関しての情報を売り買いできる場所である。

 といっても人づてに聞ける情報等が殆どではあるのだけれど。

 そういう情報は安く、信憑性の高い希少種などの弱点、生息地などの情報はとても高い。


 情報を買った人物はわざわざ金払ってまで手に入れた情報を他者に洩らしてしまうようなことはなく、むしろその情報を新人に吹っ掛ける事すらあるので普通に商売になってるらしい。

 日本では考えられないね。この世界の人たちは口が堅いんだなぁ。


 と、いっても他の窓口程に賑わってはおらず、特に今の時間はひっそりとしている。

 受付に座る女性の顔も心無しやつれて見える。

 ふーむ。こういう情報は貴重だから誰か聞こうとしてる奴一人くらい居るかと思ったんだけど見当たらない。皆良心的だなぁ。

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