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その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
第三話 その集まり過ぎたモノたちを彼らは知りたくなかった
606/1818

その民間側食事会を貴族たちは知りたくなかった

「聖女様、彼らに混じり曲をお願いできませんか?」


「ふぇ!?」


 出し物が終わると食事会だ。

 王族には個別の皿がメイドたちにより運ばれる。

 マイネフランの郷土料理がメインらしいのだが、数国は怪訝な顔を浮かべている。

 どうやらこういう料理は食べたことがないらしい。


 出ている食事はスープだ。

 ソラマメのスープらしい。

 クレインハルト伯爵というおっさんが困った顔をする。


「マイネフランは家畜の餌を食べさせるのか?」


「ほう、そちらの国ではソラマメは家畜の餌ですか」


「うむ。そちらは違うのですか?」


「ええ。ソラマメというものが取れない気候なので。ふむ。味は悪くないと思いますが?」


「ふむ。所変われば主食も違うか。まさか家畜の餌を食べることになろうとは……む。これはなかなか」


 そんなどうでもいい会話を聞きながら、暇していたリエラに兵士が声を掛けて来たのだ。

 おお、あなたは全ての国と名前を言い当てたお方!


「これより会食が始まるのですが、民衆から是非聖女様の曲を、前回演奏された曲でいいので聞きたいそうです」


「そ、そうなんですか。でも二つだけですけど大丈夫ですか?」


「ええ。会食の最後の方でお願いしたいのです」


 リエラが僕をちらりと見る。

 アルセを使って頷いておく。


「それはいいですけど、その、終わり頃っていつぐらいですか?」


「国王陛下が食事を終えられた頃が良いでしょう。国王陛下はゆっくりと食されますので、他の王族の方々の方が先に食事を終えられると思われます。おそらく、あなた様の曲では手が付かないでしょうし。涙で濡れると思えば……」


 まぁ、食事どころではないか。

 あ、でも食事の最後ってデザートに……ちょぉお!? 待って、メイドさん、それ違う! メインディッシュにする食事じゃないよ!

 スープ、前菜を終えた王族に持ってこられたのはルクルさん特製カレー。

 なにしてんのルクルさん。得意げにカレー喰えとか言ってる場合じゃないよ。

 そこのコンシェルジュみたいな奴! 得意げにコルッカのクルー・ク・ルーから取れるカレーライスですとか言ってる場合か!?


 民間の人たちは会食には参加出来ないので噴水前で行われている豚の丸焼きやらでお腹を膨らませている。オークが豚足喰ってたり串焼き喰ってるの見たけど、アレは共食いじゃないのかな?

 屋台も沢山出ていて、せっかくだからと別の国の商人が珍しい食品を売ったり、妖精とドリアデスが共同で白いジャム売ってたりしている。


 その中でおーっと声が聞こえる。

 どうやらパイラさんが食事をしているらし……違う。もう一人の女とフードバトルし始めてる!?

 相手はなんとプリカだ。

 気付いたエンリカ達が近くに行って呆れた顔をしています。


 店主さんの顔が青いのは作るのが消費に間に合わなくなっているのだろう。

 あの店、潰れんじゃないかな?

 プリカなんてもう、どんな食事が出ても手掴み始めちゃってるし。

 パイラもプリカを見て手掴みし始めたし。消費スピードが格段に上がったぞ!?

 店主の泣きそうな顔に気付いたのだろう、ワンバーカイザーが走って彼らのもとへ向う。

 どうやら自分の身を呈して食事を作る時間を稼ごうというつもりらしい。


「わ、ワンバーちゃん!? わ、私、食べていいの? 食べちゃって、いいの? ごめんなさいごめんなさいごめんなさいっ」


 泣き叫びながらワンバーカイザーを喰らい始めるプリカ。

 必死にのじゃ姫が叫びド変態が助けに入りとなんか凄い一角になっている。

 うん、他人のふりしとこう。


 辰真が単車を部下のツッパリたちに自慢するように乗ったり降りたりして得意げにしている。

 よっぽどアレが欲しかったみたいだ。

 民衆の一部も周囲に群がりありゃすげぇとか。俺も作るのに参加したんだぜ? とか言っている。


 別の場所では武器屋のおっさんが写真みたいなのを売っていた。

 アレンが人だかりに混じっているのを見るに、アルセ達の画像だと思われる。

 凄い人気だ。


 そして、そんな民衆たちの喧しい姿を見ながら、呆然としている貴族たち。

 他国の王族貴族も初めて民の祭りを見たのだろう。

 驚いた顔をしたり、露骨に顔をしかめたりしている。

 おそらく浅ましいとか思ってるんだろうね。

 下町ってのは大体こんなもんだよ?


「そろそろ、ご用意願います」


 気が付けば、貴族の食事は既にデザートに入っていた。

 リエラと二人で再び台座へと向かう。

 グランドピアノを取り出し、椅子にリエラを座らせた。


「聖女? また何か引くのか?」


「司会の男からは何も言って来ないが? 民間の出し物ではないのか?」


 戸惑った王族の声を放置して、リエラの横に座った僕は、前回の演奏会で弾いた順番で曲を紡いでいく。まぁネッテとカインの結婚式だし、二度目だからリエラへの負担も少ない。

 楽しんで弾きますか。

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