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その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
第三話 その集まり過ぎたモノたちを彼らは知りたくなかった
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その大妖精の悪戯を皆は知らない

 ふむ。おおむね受け入れられたみたいだ。

 ネッテが辿りついたので音楽を止める。

 ハッと気付いた宮廷楽師が次の音楽を奏で始めた。


 リエラも音楽が止まると共に緊張が解けたようで、ハッと我を取り戻す。

 待て、今さっきまで自動でトランスモード入ってました? 明鏡止水状態だったらしいリエラは感情の波が全くなかったようで、皆が万雷の喝采を行っている理由が分からず目を白黒させていた。


 そんなに感動的だったっけ? と困った顔を向けて来るリエラ。

 いや、僕もそこまで凄かったかと言われると困ります。

 とりあえずやれることをやっただけだし。


 ひとまずピアノをしまってお辞儀をしたリエラと共に去る。

 ネッテを伴い一段一段上がって行くカイン。

 涙と鼻水に塗れた司祭のもとへ辿りつくと、聖典で鼻をかんだ司祭が涙声を張り上げる。


「ほんでづおばづばびぼびばばばぶぼばばばばばばぼぼぶばばばびずびぃぼばばばどぶば……」


 ……涙と鼻水で何を言っているのか全く分かりません。

 しばらく意味不明の新語が飛び出し、カインとネッテが困った顔をしていた。

 本人は全てちゃんと言いきったつもりなのだろう。

 ずびずばと叫びながら聖典を掲げる司祭。

 聖典から聖水が飛び散り司祭の顔に粘液質の液体がかかる。


 しかし気にしない司祭。その顔は先程の曲のせいで幸せの絶頂である。

 何アレ怖い。

 そして再び鼻水塗れの聖典に顔を突っ込みずびぃぃっと鼻をかむ司祭。

 もう、なんかヤバい。誰かあの人を止めてやってくれ。


 困った顔ながらも何をやるかは分かっているネッテが促し、指輪交換が行われる。

 互いの指輪が交換されると、次は誓いの言葉らしい。

 また謎の言語が鼻水司祭から飛び交う。


「「誓います」」


 この辺りは日本のウエディングとそう変わらないのかな? 微妙に違うけど。

 次は誓いのキスかな? と思った僕の目の前で、ネッテを抱き上げるカイン。

 御姫様抱っこを行いくるりと回ると、周囲の耳目を集めるように周囲に視線を走らせる。

 まるでこの女は俺の女になったぞ。と見せつけるようにして。ネッテの唇を奪い去った。


 その瞬間、光の粒子が溢れだした。

 まるでバズとエンリカの祝福の再現みた……って、ロッテアさぁん!!?

 ふと気付けば、ハイピクシーであるロッテア指示のもと、妖精隊が魔法を使っていらっしゃる。

 アルセと僕が気付くと、ロッテアがこちらに意地の悪い笑みで手を振ってきた。

 今回は悪戯じゃなく祝福だよってことらしい。


 ざわつく民衆。

 初めて見たオーブみたいな精霊たちの祝福に、王族たちも驚かずには居られない。

 何しろ、ニンゲン族にとってはこんな精霊の祝福は初めて見るものなのだから。


 ところで、結婚式でこんな誓いのキスするのが主流なの? リエラとか恥ずかし過ぎて恥死しかねないぞ。

 そのままネッテを抱きかかえて階段を下りるカイン。

 マイネフラン国王とジェームス王子の待つ特設玉座のもとへ向うと、彼らの直ぐ横にネッテを降ろし、椅子に座る。


 側仕えやら神官が即座にやって来て祭壇を片付け始めた。

 すると、台座というかステージが片付けた先に現れ、司会役のお兄さんが声を張り上げる。

 どうやらこれから民衆の出し物があるらしい。


 一般の人からは収穫祭に踊る踊りらしい。祝福の踊りとしては最上級らしいので、これをネッテに捧げるそうだ。

 次に壇上に上がったのはオークの集団。オーク村の人たちが村人と混じって別の踊りを踊り出す。

 こちらも収穫祭だが、村バージョンらしい。バズやエンリカも普通に参加していた。

 エンリカがエルフだからめっちゃくちゃ目立ってたけどね。


 そして妖精とエルフから精霊に捧げる祈願祭の踊り。なんとプリカが参戦していた。

 しかもあの子、何故か髪の色が真っ白になってるし。一体何があったの?

 ついでにエンリカさんはこっちの踊りにも参加してます。

 エルフと一緒に踊るバズやバズの子が物凄く目立っていて話題になっていた。


 続いて踊りを披露するのはセルヴァティア王国。古代人たち独特の踊りに加え、ツッパリとレディースが混じっているのがなんかもう、凄い踊りだった。

 今すぐにでも場外乱闘が始まりそうで怖かったともいう。


 そして、壇上に現れる神父さん。って、ロリデッス神父!?

 司会の男はプログラムに無かったのだろう。神父!? と驚きの声を上げている。

 私めからも祝福の踊りを捧げたい。よろしいですか? そう告げる神父さんに、国王は頷く。

 祝福したいというのだから断る意味はないだろう。

 国王から許可が出た。その刹那……


神は我が手にロリコーン・奇跡を賜るフェスティバル


 次の瞬間、平たいだけのステージがせり上がる。

 ステージへと集まるのはピンク色のハッピを着たロリコーンの軍団。

 どっから現れたお前ら!?

 観客席に一部向った彼らは少女を一人抱えあげるとステージへと連れて行く。


「「「「「「「「「「パティアたーん!!」」」」」」」」」」」


「な、なんでまた私なんですかー!?」


 そしてロリコーン共とパティアちゃん? による踊りが始まった。

 なんぞこれ?

 途中でうずうずしていたアルセが参戦し、アルセの姿を見付けたネフティアとのじゃ姫までステージに上がってきた。

 涙を流す神父さんに釣られるように、王族たちからも涙を流しうんうんと頷きだすおっさんたちが出始める。

 まるで娘の演芸会見に来た父親のような顔だった。

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