その侵略兵が遭遇した悪夢を僕たちが知ることはなかった
「な。なにが……」
「よぉ。ヘンリー様よ。紹介するぜ。俺のパーティーメンバー、不死者王のルグスだ。んで? プレゼントってのはあれか? ちょっと遅れ気味の食事会の手伝いでもしてくれる手下をくれたのか」
ニタリと不敵に微笑むカイン。
絶望的な光景を一瞬で無効化したルグスを見て自分のパーティーの強さを思い出したようだ。
外道勇者の出現でちょっと恐れを抱いていたけれど、今は自分も勇者の一人なのだと思いだし、対等に並んでみせる。
「カイン……随分と粋がるじゃねぇか……仲間に助けられた程度で驕るなよ?」
「驕るつもりはねぇ。んで? これで終わりならそろそろ王族の方も揃ったようだし、外へ向いたいんだが。どうするヘンリー様?」
「ふ、ふふ。ククク……ははははははっ!」
頭に手をやり盛大に笑ったヘンリーはこの程度で阻止できたと思うなよ。とばかりにニヤリとカインに笑みを向ける。
「ホーキンス。魔導弾を打て! 合図だ!」
「マジでやんのか。さすがに俺、これ以上は全国指名手配程度じゃ済まない気がするぞ」
溜息を吐きながらもヘンリーの言葉に従うホーキンス。この人も外道だなぁ。
信号弾のようなモノが打ち上げられる。
王族は次々に巻き起る予想外の出来事に呆然としたまま見送ってしまっていた。
催し物としては悪趣味ではあるが、そこまでの被害が出ていないので止めるのもどうかと思ってしまっているのかもしれない。
ヘンリーはこの結婚式を潰すつもりで、他の王族全てを敵に回そうが気にしないって様子だけど、無茶苦茶だなこの勇者。俺様はやりたいことを好きな時にやる。邪魔する奴は神だろうとムッ殺す。そんな思考回路が透けて見えます。
「何をしたヘンリー?」
「ふっ、一応俺も勇者でね。俺が声を掛けりゃあ兵士を喜んで差し出し一国に差し向ける国々がいる訳だ。んでな、せっかくだからお前らのプレゼントとして一国滅ぼして見せようって思ってな。マイネフラン王国っつー腐れた国をなぁ」
マイネフランにある四方向の門が騒がしくなる。
何が起こった?
爆発音やら魔法が使われてるのがここからも見えた。
「クク、さぁ、あの防衛部隊共が消えた瞬間、あの大軍が国に流れ込むぜ!」
見れば、門の周りに千を越える人だかり。
おそらく全門前に待機させていたのだろう。
ヘンリーが悪魔のような笑みを浮かべてカインにニヤリと微笑んで見せた。
「さぁ、国の危機だぜ勇者様。国を救うために死ぬ覚悟はできたかな?」
「テメェ……」
「ヘンリー。ホーキンス。本当に、その選択をするのか。儂はもう、お前達を生かす気はないぞ。例え我が子といえども、いいのだなホーキンス」
「太く短く。人生楽しんだもの勝ちだからねぇ。僕はヘンリーに着いて行くよ父さん」
「そうか。ならば……兵士たちよ、この謀反人共を捕えよ!!」
マイネフラン国王の怒声で兵士達が動きだす。
しかし、ホーキンスもヘンリーも気にすることなくテラスから外を見ていた。
「それは良いんだけどよぉ王様。アレ、どう収拾付けるのさ? 俺らを捕縛したところで国が滅べば問題ねェだろ」
「全く。分かっておらんな。この国に今、誰がいるのかを。そろそろ、来るぞ、拳王が」
ニヤリと、王様が笑って見せた。
ああ、この人、エンリカさんを自分の功績みたいに使いやがった。
いや、たぶんバズたちなら率先して潰しに行くだろうけど。
「はっ? 拳王? なんだそ……」
「で、伝令! 伝令っ!! 東西南北全ての門に所属不明の軍隊が、今守備隊が……」
血相変えてやってきた兵士が告げる。
が、すぐ後ろからやってきた兵士がそいつの口に手をかざして言葉を止めた。
「伝令、東西南北全ての門に出現した軍隊がいましたので辰真先生が迎撃に向かいました! なお、物見兵より報告。間もなくセルヴァティア王国方面よりバズ将軍率いるオーク軍、アルセ姫ツッパリ連合、セルヴァティア国民、加えてスマッシュクラッシャーの群れが接近!」
なぜにスマッシュクラッシャー?
「で、伝令! 聖樹の森より謎の葉っぱ人間の群れが現れ謎の軍隊を駆逐しています。ティアラザウスルスやアローシザーズまで揃ってこの国に! 魔物達が兵士に招待状を見せて来ているのですが、どうしたらいいですか!!?」
「で、伝令、伝令っ。エルフの村よりエルフたちが参りました。謎の軍隊駆逐に協力を申し出てくれたのですが、ワンバーちゃんに会わせろと暴れはじめました! 謎の軍隊に大被害が出ています。このままでは死者多数にっ!」
「こちらも伝令! オーク村側より葛餅様、戦女神様が参戦してくださったのですが、未確認の魔物達が、見てください、空をクマが舞ってますっ!! 皆、招待状を兵士に出して来るのですが、魔物達を通してもよろしいのですか!!?」
なんか、凄いことになってませんか?
丁度アルセさんが呼んだらしい奴らが謎の軍隊と鉢合わせしたようです。
折角勇者に呼応してこの国を滅ぼそうとしたんだろうに、待っていたのは国の外から現れた魔物の群れと防衛用の国の兵士に挟撃されるという現実。悪夢だろうなァ。ま、外道勇者に付いて来たことの不運を呪ってくれぃ。ナムナム。




