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その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
第三話 その集まり過ぎたモノたちを彼らは知りたくなかった
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その勇者の出現を僕たちは知りたくなかった

 こうして見ると、王国って幾つもあるんだなぁ。と感心してしまう。

 見知らぬ国の王様王女王子、后様と沢山の男女が次々とやってくる。

 王族や貴族に見えない服装なのは側仕えって奴かな? マイネフランでは見たことのない官職みたいだけど。ここはメイドと執事が全部行ってるみたいだし。


 あいさつ回りするのは良いけど、これ、一人一人覚えるのか無理でしょう?

 皆が皆入口にいるあの兵士さんじゃないんだよ。兵士さんマジリスペクト。

 貴族な方々もネッテとカインの知り合いだけでもかなりな数に昇る訳だが、これを期に他の貴族や王族との関係を持とうと関係の無い見知らぬ貴族までやってきたとなれば、もはや名称を覚えるとか無理です。


 ちなみに、魔物図鑑を取り出してみたら凄い勢いで人物図鑑になっていってます。

 多分登録した魔物の数より人の数が多いんじゃないかなってくらいに、いや、クレインハルト伯爵とかどこの誰だよ? ってくらい大量の人物で埋まってる。もはや図鑑にすらできない。

 分厚過ぎる魔物図鑑がそろそろ一杯になりそうです。後でコリータさんに新しい図鑑貰って来よう。


 しばらくは色々な方があいさつ回りを始めていた。

 ランス王子も、今は縄を解いてアイマスクを取って、マリナの肩を抱きながら他の貴族と会話中。

 あいつ普通にマリナにべったりだけど、マリナさんが全然嫌がっていません。

 何がったの? ねぇ、何があったの? マリナさん、本当に大丈夫なの?


「マリナ」


「とー」


 代表するようにネッテとカインが二人のもとへやってきた。

 カイン達に話しかけたい貴族や王族がまだ結構いるみたいだけど、相手するのが面倒になったようでネッテがマリナに話しかけることで他の奴らが入りづらくなったようだ。


 って、おおう。目を離したすきにリエラに群がる男どもが!?

 ええい散れ散れ! 寄らば斬るぞっ!

 僕はアルセを操りリエラの裾を引っ張ると、戸惑うリエラを男どもの群れから救出する。

 楽師の聖女という二つ名と、一応男爵だか準男爵なリエラの家柄を見て嫁にしようとする貴族共が言い寄ってきていたのだ。冗談じゃない。有象無象にリエラは渡さん。渡さんぞぉっ。


 と、言う訳で、マリナのもとへやって来ました。

 リエラが抜けたことで矢面に立たされることを感じ取ったアカネがパルティ達を引き連れて後から追い付いて来た。


「大丈夫なの? ランス王子との婚約」


「とー」


「おー?」


「とやーっ」


 アルセが疑問符浮かべて小首を傾げると、何か楽しげに告げるマリナさん。

 どうやらランス王子を蹴るのが気に入ったらしい。

 いくらドロップキックしても喜んでくれるからこの人楽しい。みたいなことを言ってます。

 ええ、そりゃ喜ぶでしょうね、ランスさん、変態になっちゃったから。


「ネッテ王女。申し訳ございません。私の力及ばず」


 いや、アンサー王子、いきなりやって来て頭下げられても困ります。


「マリナに王族知識を身につけさせるため、教師としてマリアネットに頼んだのですが、彼女の性根の歪み具合を間違えていました。もう、私にはマリナさんを救う術を持ちません」


 あんたら一体マリナに何した!?


「ど、どういう事かしら?」


「実は、マリナ、男性を痛めつけると喜ぶという誤認をしてしまいまして、既に我々の言葉を聞いてくれません。下手したらドロップキックが襲いかかる始末で、父もそれで腰を痛めまして」


 おおい、マリナさん、あんた老骨に鞭打ったのか!?


「マリアネットが付きっきりでマリナの指導をしているせいで、彼女が正しいと思い始めたマリナは他の意見を聞かなくなりましてですね」


 困った困ったと頬を掻くアンサー王子。聞きたくなかった。マリナさんが変わってしまったなんて、僕は知りたく無かったよ。


「おーおー。お歴々が集まっちゃってまぁ」


 不意に、嫌な声が聞こえた。

 当り構わず大声でのたまいながら部屋に入ってきたのは、三人の男女。

 一人は割れたケツアゴ。揉みあげの長い男は同じく長いまつげをパチクリとしてマイネフラン国王を見る。


「き、貴様等は!?」


「ご機嫌麗しゅう、父上」


 ケツアゴさんがマイネフラン国王のもとへと歩き出すと、その背後を横柄な態度の男。

 あの、クラッソ洞窟で一緒に冒険した男だった。

 そして最後に歩きながらバカ長いチュロスを食べ続ける女の子。


 ざわついていた王侯貴族が一斉に鎮まる。

 ああ、あいつまで来たのか。そんな表情が幾つかの顔から見えた。

 ケツアゴさんは王様の前に辿りつくと、うふっとばかりにウインク一つ。

 まさかこの人アレな人か?


「本日はお招きいただきありがとうございます父上。妹が結婚するそうで」


「ふん。貴様を呼んだ覚えはないぞホーキンス」


「残念ですが、来てますよ。ほら」


 取り出されたのは一枚の羊皮紙。

 あれは……この前冒険者ギルドで書いたネッテの手紙!?

 国王の目がネッテに向う。娘よ、何故こいつを呼んだ! そんな顔を向けた先にいたネッテは、予想外の顔をしていた。


 ある一点を見て驚愕に目を見開き、力なく倒れそうになったところをカインに抱きとめられる。

 そして、カインもまた、敵意、否、殺意の瞳でそいつを見つめていた。

 ケツアゴさんと共に現れた横柄な態度の男、ヘンリー。


「勇者……ヘンリー。何故ここにいる?」


 押し殺したカインの声が、静寂の中静かに響いた。

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