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その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
第三話 その集まり過ぎたモノたちを彼らは知りたくなかった
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その魔物の挨拶を貴族たちは知りたくなかった

「お久しぶりでございます国王陛下」


 軽く挨拶をしたアンサー王子、次いでパーシハルが続く。

 そして戸惑い浮かべる王様のもとへ、マリナが現れると、ぐいっとリードを引っ張り第三王子を前に突き出す。

 アイマスクのせいで自分がどこにいるのか分かっていないランスロットさんは、そのまま突っ立ったままだ。

 なのでマリナはリードを引っ張りケツを蹴る。


 何度かされたことなのだろう。戸惑いすら浮かべず四つん這いになったランスロットが頭を下げた。

 その尻に片足を置き、両手でスカートの裾を摘んだマリナが国王陛下にお辞儀を行う。

 ちょっとマリナさん、それどこの挨拶!? 王族に喧嘩売ってるようにしか見えませんよ!?


「あー、その、戸惑うかもしれませんが我等の不肖の弟、第三王子のランスロットと、その妻となりますマリナー・マリナという魔物、名前はマリナと申します」


「え? 魔物……げふんげふん。あー、そうか。本日は我が娘の結婚式に来てくれた礼を言う。ディマルト王は息災か?」


「ええ。ですが父上はそろそろ引退を決意されておりまして、次の王として私がコイントスを牽引することとなります。即位前ではありますがこれからの両国の繁栄を願い、ご挨拶をと想い、現国王に代わり次期国王であるこの、アンサー=ドゥア=コイントスが参りました」


 つまり、国王陛下は来ない代わりに自分が来た。というよりはコイントスはこれから俺が牛耳るから何かあれば交渉は父ではなくこのアンサーに伝えていただきたい。そういうことですかね?

 うん、完全にコイントス乗っ取ったねこれは。


「それと、余談ではあるのですが、皆様にも。こちらのマリナ、魔物でありますゆえ礼儀作法はそこまで教え切れておりません。迂闊に近づくと魔物式の挨拶としてドロップキックを受けることとなりますのでお気を付け下さい」


 ちょぉぉ!? なんてもんを連れてきてんのアンサー王子、下手したらそれ、コイントスの国際問題に……


「ちなみに、このマリナ、今回の御婚約者であるネッテ王女と勇者カインが作った冒険者パーティーアルセ姫護衛騎士団のパーティーメンバーでもあるのですよ」


 そして巻き込まれたマイネフラン王国。

 ネッテの所属していた団員という事実が、マリナが起こした問題にコイントスだけではなくマイネフランまで関わるよと暗に告げられてました。

 抜け目ないなぁアンサー王子。

 これ、ある意味脅しだよ。マリナに何かされて国際問題にした場合、コイントスだけではなくマイネフランをも相手取るよ。といっているに等しい。脅しとも言える。


 王族たちはざわつきながらもマリナを見る。

 ちょうどランス王子を四つん這いにしてジェームス王子だっけ? ネッテのお兄さんに挨拶をしているところでした。あの、ヒールの先がランスさんのお尻に刺さってませんか? 気のせいかな? 気のせいだよね?


「あらあら、さすがは魔物というべきでしょうか。なんと浅まし……野蛮なのでしょう。ランス王子が可哀想ですわ」


 見かねたというよりは、排除対象を見付けたといった顔で近寄るロックスメイアの巫女女王様。

 マリナの背後にやってくると、簡単に礼をしてマリナの注意を向ける。


「初めまして、人間と結婚した魔物さん。ロックスメイアの女王をしております。ツバメと申します」


「とーっ!」


 これはどうも! とばかりにランス王子の手綱を引っ張ったマリナがランスロットの尻にハイヒールを乗せて裾を摘んだお辞儀を行う。

 あれ、王族相手にするには失礼過ぎる挨拶じゃない? というかあんなの教えたの誰だよ!?

 ランス王子が気持ち悪い声を一言漏らした瞬間、ツバメさんの全身が総毛立ってひぃっと声が漏れていた。

 うん、気色悪い声でしたもんね。


「そ、そのような態度は挨拶とは言えませんは。仮にも王族になるのならしっかりとした……」


「とぉーっ」


 しっかりとした挨拶を。そう言おうとしたツバメさんに、了解! ばかりに跳んだマリナ。

 うわぁ、ランスロット踏み台にしやがった。

 そして両足揃えたドロップキック。

 翻るスカートの中を見たツバメさんは、呆然とした顔のままドロップキックを……


「失礼」


 とっさにパーシハル王子がツバメさんを引き寄せる。

 遅れてマリナのドロップキックが赤絨毯に激突。べゴンと床を割り砕き赤絨毯が歪にへこんだ。

 多分床面の一部が割り砕かれて盛り上がったのだろう。赤絨毯に隠された床は大惨事になっているだろうことが容易に想像できる。


 青い顔をする王族たちの視線の中、あれ? とマリナが不思議そうに立ち上がる。

 予想以上の威力に土気色になったツバメさん。

 魔物に不用意に近づくからそうなるんです。気を付けてくださいよ本当に。


「お怪我はありませんかなツバメ王」


「え、ええ。パーシハル王子でしたか、ありがとうございます」


「いえ。当然のことをしたまでですよ。ですが、マリナは人の言葉を理解するといっても魔物なのです、不用意な挑発は止めていただけませんか。まだ彼女は人を勉強し始めたばかりですから」


「魔物が、人の言葉を理解するのですか?」


「そのようです。特に、あのアルセ姫護衛騎士団に所属している魔物は人間味が高くなりやすいようです」


 そんなイケメンマスクで相手誘惑するような表情しながらツバメさんに告げるな不倫野郎。

 確かに若く見えるツバメさん綺麗だけど、あんた普通に奥さん居たでしょうが!

 というか、アルセ達の事をドヤ顔で話すな!

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