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その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
第二話 その準備する者たちを彼らはまだ知らない
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その闇に蠢く者たちをまだ彼らは知らない

「成る程、面白いことを考え付いたわね」


 色褪せた白いボロフードを纏った一団が、暗がりに蝋燭の火を灯し、集まっていた。

 夜も更けた深夜の出来事。

 アルセがリエラに抱き付き可愛い寝息を立て始めた頃、僕はそっと宿屋をでて皆で集まったのだ。

 アルセ、最近寝るの覚えちゃったんだよね。本当に寝てるのかわからないけど。ホント、こうして見るとお姉さんと妹って感じだね。

 僕も一緒に寝ていいかな? 川の字とか憧れます。


 なんて思いつつ心のシャッター幾つか切って、僕はやってきた。

 とある廃屋の一室に集まったのは、アカネ、ミルクティ、チグサ、ケトル、ルグス、ついでにルクルといった面々である。

 このメンツの特徴は? 異世界知ってる組だ。

 ルクルさんは入らないけどほら、僕のいるところには大体いる人ですから。


 んで、僕はアカネにあの事を告げたんだ。

 そう、祭といえばその華は一つしかない。

 花火です。


 サプライズで花火を打ち上げてやりたいなって、思ったんですよ。

 といっても、花火師なんてこの世界に居る訳がなし。

 なので、アカネさんに魔法で再現無理かな? と相談したら、このメンツが揃えられたというわけです。


 なぜぼろ布被って妖しい一団化させられてるのかは不明だけど。

 どうせやるなら秘密結社っぽくやりましょ。というアカネさんの厨二精神のせいだといっておく。

 なんにせよ、これだけ人がいればそれなりに再現できそうな気がします。


「さて、皆に集まって貰ったのは他でもない。私達はカインとネッテの結婚式に際し、世界に革命を起こすつもりよ」


「革命とは穏やかではありませんね」


「ちょっと、犯罪行為には加担しないわよアカネさん。さすがにそういう悪だくみは止めた方が……」


「誰が犯罪者よこのスカポンタン! いいから聞きなさい。サプライズで花火を打ち上げたいと思うのよ! でもこの世界に花火師はいない。つまり、魔法で再現できるかどうか。異世界知識を持つ貴方達を集めた理由はその手法の相談よ」


「花火?」


 ケトルさんはこっち世界の人なので知らないらしい。首を捻っていらっしゃる。

 というか、ちょっと待て。今気付いた。このカレー臭、ルクルじゃなくてお前かレーニャ!?

 いつの間にここに来てたんだよ。というか、ルクルにひっついて来たのか。お前もある意味ストーカーだな。


「れー「ちゅー」にゃー」


 ……最近、なんかレーニャの鳴き声がおかしい気がします、ネズミンランド潜ってからだなぁ。

 まぁ、本人気にしてないから放置しとこう。


「花火とは、火薬を使って打ち上げる空の華。大きな音と火薬の光を楽しむ祭りの娯楽という奴だな」


 ルグスが珍しくまともなこと言ってる。死霊王な彼はおそらくこういう娯楽には一番向いてると思う。何しろ目標を決める必要無く空に魔法打ち上げるだけなのだから。

 ルグスを中心に魔法理論を作って魔法創作師でアカネが魔法を作り、皆で覚えて打ち上げる。

 いかがでしょうか?


「簡単に説明すると、こんな感じですね」


 用意して来たのだろう。羊皮紙に簡単に花火の絵を書いてイメージしやすくするアカネ。

 といっても、このメンツで花火を知らないのがケトルさんだけなので皆イメージすら必要無いらしい。

 なので、あとはどう表現するかの討論会が行われ始めた。

 うん、僕提案者だけど何もやること無いよね。あはは……


「とりあえず遅延魔法で幾つかの魔法弾を塊にして、真上で飛び散らすのが良いんじゃないかと思うのよ、どうかしら?」


「それだと私達何も出来ませんよ。今から覚えるにしても遅延はともかく飛び散らせる方法とかは……」


「あの、私は魔法が得意じゃないけど、意見いい?」


「チグサさん? どうぞ」


「折角の花火何だし、花火玉を参考にしたらどう?」


「花火玉を?」


 アカネの疑問に、チグサが羊皮紙を借りて書き始める。

 大きな丸い球の中に無数の小さな玉を込める。


「これは……」


「例えば、私とケトル王女とミルクティさんが一番内部の消えやすい部分を、ルグスさんが外周部で激しく飛び散るランダム性のある華の部分、魔力が一番高く遅延魔法の扱いに長けたアカネさんがこれらの遅延弾を固めて打ち上げる魔法を開発すれば、皆の魔力をたいして消費せず多く打ち上げられるかと思います」


「共同魔法か! いいわね。魔力の込め具合で中央から消えたり逆に中央を濃く魅せたり」


「ふむ。膜のように張られた外周部が弾けた時にランダムで放たれ途中で消えるようにすれば花火のようにする事も可能か」


「よし、なら後はどんな花火を打っていくかね。とりあえず一つ作って打ち上げて見ましょう。あとは……付加させる音ね」


「それだったら。爆発系魔法を内部に組み込んだらどう? それを合図に周辺に飛び散って消える、みたいな?」


「いいわね。その辺りは魔法創作師としての腕の見せ所だわ。ただ問題は……」


 ご安心くださいアカネさん。その問題、僕が解決して見せます。

 こうすれば、ほら、全裸撮影会やってるんだなって思えるだけで……

 ひぃっ!? 睨まないでアカネさんっ!?

 最後の問題はあんたが魔法使った瞬間全裸になる程度の羞恥心の問題でしょーっ。

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