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その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
第二話 その準備する者たちを彼らはまだ知らない
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その思い付きをまだ彼らは知らない

 ある程度の準備が終わったらしく、とある一室で僕らはゆっくりとしていた。

 リエラだけはガチガチになってますけどね。

 なにせ、王女様の部屋ですから。


 第三王女という名の肩書が今更ながら現実味を帯びてます。

 アメリスさん宅の接客室より広いんだよここ。

 豪奢過ぎるベッドはネッテ用らしい天蓋付きのすっごくふかふかしてそうなベッドです。ちょっとばふっと飛び込んでいいですか? って、アルセ、ホントにやっちゃダメっ!?


 楽しそうにベッドを堪能するアルセ。畜生、可愛いなぁ。あんな笑顔できゃっきゃ言われたら怒れないじゃないか。

 ソレを見守るルグスはまったく我が主は。みたいな苦笑い。

 そんなベッドの一幕を見ながら、高級ソファに座る僕らは向い合う。

 ネッテとカインが隣合っており、カインの腕がネッテの腰に自然に回ってます。何あのイケメン。爆死されたいわけ? 僕もリエラの腰に手を回していいの? あ、ごめんなさい調子乗りました。だからそのパイ投げみたいな持ち方のカレーをしまって下さいルクル様。


 ソファはテーブルを中心に二つ置かれており、人三人ぐらいが座っても充分余裕のある長椅子バージョンになっている。テーブルも黄金の台座にクリスタルを磨きまくってガラスみたいにしたテーブルだ。ここに見るからに高そうなティーカップが置かれており、リエラが震える手でソレを持とうとして震えを止めようと必死に自分を諌めている。


 もし、紅茶を零したら。カップ割っちゃったら、テーブルに指紋付けたりしたら。

 様々なプレッシャーが彼女を襲っている。

 男爵か準男爵くらいのほぼ庶民と変わらないリエラにとってはこのカップ一つでも首括らなければならないくらいの金額だ。

 こうなるのも分かる気はするんだけど……こんな場所でプレッシャー感じてたら王侯貴族集まるネッテの結婚式、終わるまでに死にかねないぞリエラ。


「もう、リエラ、そんなに緊張しなくてもいいわよ。多少零してもメイドが何とかしてくれるし」


 そのメイドさんたちからそこの愚民、お嬢様の部屋汚したら埋めますよ? といったプレッシャーが視線という名前の凶器で突き刺さって来てるんですけど。

 なんか、普通に彼女たちの横に文字が出てるみたいに見えるよ。


「とりあえずよぉ、なんかジェームス王子が凄い乗り気でさ、有名な二人だし街を上げて祝福しようって言ってんだよ。俺らがこっちに到着する前に話し決めてたみたいでさ。前の凱旋パレードみたいに官民合同の結婚披露宴になりそうなんだ」


 カインさん、それ、フラグ。なんかリエラに対するフラグですから。


「そういえば。ガルレオン家とダンデライオン家から是非にリエラの演奏会を入れてくれって指名依頼入って来てるわよ」


 フィオリエーラさぁん!? やっぱりあの人やってやがった。リエラを使って周辺国家に聖女の音楽を広める気だ。

 リエラさんが土気色になってるよ!?

 吐くなよ、吐いたらだめだからねリエラ。ここネッテの自室だから、ゲロっちゃったらもう、ヤバいからね! メイド軍団に埋められるぞ本気で。フリじゃないからね!!


「それとね、ダンス会であなたにも踊ってほしいってお父さんが……」


「ゴフッ!?」


 リエラさんが吐いた!? 血吐いたっ!?

 なんで国王直々にリエラのプレッシャー掛けて来てるの!? リエラを殺す気か!?

 即座にメイドたちがリエラに駆け寄ったせいで飛び散るはずの血は全てガラス瓶の中へ吐き出されていたけど、まるで血を吐くのが分かってたかのような手際の良さです。


「だ、大丈夫リエラ?」


「は、はい。なんか私だけデスモード入ってるような気がしますけど、他ならぬネッテさんとカインさんの結婚式ですから。命の恩人の二人の幸福、祝福させてください」


「ぐぅ、さすがですねリエラさん。お姉様、私も、私もお姉様のお役に立てることをしたいです!」


「ルルリカは大人しくしててくれた方が私は凄く嬉しいわよ」


「わかりました! 主人の帰りを待つ忠実な犬のように大人しく待ってますわお姉様!!」


 ルルリカさんは何を目指しているんだろう?

 ネッテのペット枠化し始めたルルリカをぼーっと眺めながら、僕は考える。

 確かに、リエラの言うとおり、お世話になった二人の祝福、僕も何かしたげたいなぁ。

 でも結婚式イベントで出来そうなことってなんだろう?


「そ、それにしても、街中総出ってことはお祭りみたいな感じになるんですかね?」


「ええ。いろいろと出し物とかあるらしいわ。国の踊りとか踊ってくれるってギルドから通達があったし、お祭りの時に民衆が踊る踊りを他国の王侯貴族の前で行うのって初めてなのよ、どうなるか今から心配だわ」


「今回の事に合わせて兵士の巡回が厳しくなってるらしいし、裏稼業の奴らの取り締まりも厳しくなってるらしい。その辺りは裏ギルドも乗り気らしくて……」


 カインが豆知識披露している間、僕はずーっと考えてました。そして気付いた。

 そう、これは祭りだ。結婚式という名の祭りなのだ。

 楽しまずして何が祭りか。そして、祭りといえばあれしかないだろう。さっそくアカネに連絡とって用意始めないと。できるかなぁ?

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