AE(アナザーエピソード)・そいつらがどこから集まったのかを彼らは知らない
一方。リエラ達が突然消え去ったことでパニック状態になっていたパルティたちは、アカネと冷静なデヌにより、一度洞窟から外に出てきていた。
丁度この洞窟の説明要員が入れ替わりをするために留守にしていたせいで普通に入ってしまったようだが、洞窟から出た頃には小さな女の子が洞窟前に一人立っていた。
手には木製のプレートを持っていて、地面に突き刺したそれを支えにして突っ立っている。
「はわわ。あ、あの、ごくろうさまです」
「えっと、あなたは?」
「あ、はい。本日この洞窟の説明役をしていますパティアです。ギルド管轄なので、えっと、なんだっけ?」
プレートの裏に視線を向けるパティア。
その瞬間、何処からともなくパティアたーん。という声援が聞こえた。
「え、えーっと、ここで、私は洞窟内の説明と、地図の販売、アイテムも多少ですが取り扱ってます。ギルド製のため、値段は通常のお店より割高になっていますが、必要なアイテムは一通りありますのでよければ松明など、買って行かれませんか?」
「いえ、そういうのはいいわ。持ってるから。それより、入口付近の落とし穴に仲間が落ちたんだけど、どの階層に繋がってるか分かる?」
「え? は、逸れちゃったんですか!?」
アカネの言葉に慌て出すパティア。どうしようどうしようと見ている方が不安になる程の慌てようで売りモノの地図を広げて調べ出す。
その動きのおかげかパルティとミルクティが混乱から回復した。
アンディもその地図を見ながら罠がどこに繋がっているのかを調べる。
ただ、ルグスだけは未だに混乱しているようで、姫、姫っと暴れ回っている。
レーニャが裾をぽんぽんと叩きながらお主落ち付け。みたいなことをやってるのがちょっと可愛らしいと思うアカネだった。
「地下五階ですね。ボス部屋へのショートカット用落とし穴のようでやす」
「ってことはそこに落下すりゃボス部屋に行ける訳か。じゃあリエラのことだから私達との合流目指すよりそっちに行きそうね。もう少ししたら戻ってくるかしら?」
「ええ!? いくらなんでもそんな簡単にボス倒せちゃうんですか!? ここのボス、メタルディノスですよ? すっごく硬くて凶暴な魔物なんですよ?」
パティアちゃんが物凄い慌てている。
そのおかげで逆に冷静になれたパルティは地図を借りて見る。
結構入り組んでいる地下は階層ごとに出現する魔物の種類が変わるようだ。
一階はバット系。地下一階がスパイダーとスネークの毒物系。地下二階はキノコ系。
地下三階はなぜかフライングヒューマン系というよくわからない場所だ。
地下四階から下には影人間たちが出るようで、密林のジャングルみたいになっているらしい。
地下五階はゴーレム系が多いようだ。
「なんだかこうして全体図を見ると何とも言えない洞窟ですね」
「本当に、節操無しに適当な魔物集めましたって感じがするわ。何でこんな事に?」
「ふむ。おそらく昔ダンジョンマスターがいた洞窟なのだろう」
不意な言葉に振り向くと、ルグスが正気に戻っていた。
目の前に居たパティアに落ち着いてくださいと涙目で告げられたおかげで正気を取り戻したらしい。やはりこいつもロリコン系だな。死ねばいい。そう思うアカネだった。
「どういうこと? ダンジョンマスター?」
「ほぅ、アカネは知らんのか? お前辺りなら知っているかと思ったがな」
「あら。私だってこの世界の神じゃないんだもの、知らないことは多いわ」
「我が生きていた頃はダンジョンを自分の好みに作るダンジョンマスターというのが流行っていてな。特にそういう能力を目指すニンゲンどもが結構この世界に流入されたのだ。奴らは神に言われるままにダンジョンを作った。神としても幾つか世界にダンジョンがあった方がよかったらしいので結構な数を作らせていたな。現存する古代ダンジョンはそんな奴等の名残が多いのだよ。かくいう我も……そういえば我が作ったダンジョンはどこだったかな?」
過去の記憶捜索に旅立ったルグスを放置して、アカネは使用済みの地図を買う。
既に包装を破っているので売りモノとして使えなくなっていたようで、気付いたパティアが物凄くしょげていたのだ。自分たちを助ける目的で地図を一つ売れなくしてしまったのだからと、アカネがわざわざ買い取ったようだ。
ソレを見たパルティとデヌが明日は雨かなと思ったのは二人の内緒である。
「とりあえず、もう少し待って出て来なかったら後を追いま……あ」
これからどうするかを話し合うより先に、洞窟から駆けもどってくるアルセ。
楽しげに洞窟から現れると、パルティたちを見付けてくるくるっと踊りながら近づいて来る。
「お、おお、姫、姫ご無事でぇ!!」
そして一緒になって喜びの踊りを踊り始めるルグス。
随分とアルセ色に染まったなァと呆れるアカネだった。
遅れて、リエラとリアッティ、そして見知らぬ男女が現れる。
最後にルクルが現れ、パーティー全員の無事が確認された。
「まぁ、そこまで心配はしてなかったけど。あいついたみたいだし」
照れ隠しではないが、そう呟くアカネは、ふと気付く。
気付いた時には既に遅かったが、アルセの傍にハッピを着たロリコーンの群れが集まり一緒にオタ踊りを始めていたのには開いた口が塞がらなかった。
いったい、いつ現れたのか、彼らがどこにいたのかを、アカネが知ることは今後一切なかった。




