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その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
第二話 その準備する者たちを彼らはまだ知らない
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その宝がどこに行ったのかを彼らは知らない

「チッ、ヘンリーだ」


 ボス部屋に入る直前、自己紹介をすることになった。

 こちらが、リエラです。私はリアッティ。この子はアルセでこっちの娘がルクルです。

 とリエラとリアッティの紹介に、飽食さんが「……パイラ」と答えたので、最後に男へと全員の視線が向う。


 で、ヘンリーさんは煩わしそうに告げると、さっさとボス部屋の扉を開いたのでした。

 そしてアルセ先頭で即席パーティーがボスと対峙する。

 って、いつの間にアルセが先頭に?

 不折れのネギを手にして笑顔のアルセが感嘆の声を上げる。


 ボス部屋へと入ったパーティーが全員入り切ると、入口が自動で閉じた。

 どうやらボス部屋にはパーティー全員が入ると扉が閉じる仕組みがあるらしい。

 全ての洞窟で有効なんだねきっと。


 全員が武器を構えると、部屋の奥に煙が出現。

 ボスの出現らしい。

 煙の中で形作られるボス。

 蝙蝠いたし、巨大蝙蝠が相手かな?


 ……

 …………

 ……………………え?


 結論から言うと、蝙蝠じゃなかった。

 というか、なんでそう来るっ!?

 現れたのはメタリックに輝くボディの恐竜だった。


「出やがったなメタルディノス」


 二足歩行で両手が申し訳程度に突き出ている陸上型肉食竜。

 多分こんな感じだろう。って造られたロボット恐竜のような見た目をした存在が僕らの前に立っていた。


「GYAAAAAAAAAAAAAAッ!!」


 開始の合図とでも言うように大口開けて叫ぶ。

 空気がビリビリと震えた。

 耳に痛い。


「来るぞ! 俺の足引っ張んじゃねェぞ!!」


 剣を構えたヘンリーが叫ぶ。

 身をかがめて突撃を始めるメタルディノス。

 咄嗟に横へと飛ぶリエラとリアッティ。

 アルセは僕が抱えて飛び退く。

 ソレを追ってルクルも飛んで、メタルディノスの前に残ったのはパイラ。

 逃げる気配すら微塵も無く、ただただ何かを食べている。


「飽食っ!? なんでテメェが足引っ張ってんだ!? 殺すぞ!」


 突撃して来たメタルディノスがさらに身をかがめ頭突きを行うその刹那、パイラが飛んだ。

 身をかがめていたメタルディノスの頭に手を突きくるりと回転。

 メタルディノスの背に飛び退くと、その背中に、噛みつく。


 ギャリッと本来聞こえるはずの無い音が聞こえた。

 バギバギバギッとメタリックボディが引き千切られる音がする。

 豪快にメタルディノスの背中を引き千切ったパイラは、その皮膚を口へと入れて咀嚼を始める。

 メタルディノスの絶叫が周囲に響き渡った。


 な、なるほど、飽食。というか、悪喰だ。

 悲鳴を上げるメタルディノスが徐々にその姿を消して行く。

 リエラが余りの豪快な食事にぺたんと尻餅付いたまま僕の裾掴んで呆然としてます。

 いや、怖いよねコレ。僕も自分の姿見えてたら恐怖で震えてたよ。

 生きてる生物が目の前で捕食され徐々に消えていくさまはもはや悪夢です。骨だけ残ってくれればまだマシだったのに、パイラさん、骨すら全部喰いやがった。


 バグってるから直で狙われることはないと高括ってるからまだマシだけど、結構エグい食事風景見せられてます。

 って、そこ。リアッティ。あの子の食いっぷり素敵とか涎、涎漏れてるから。

 ほんと、この人の守備範囲広いな。


「チッ、マジか。ボスまで捕食対象かよ」


 呆れたヘンリーの言葉が終わるころには、最後の尻尾を食べきったパイラがけぷっとお腹をさすって満足そうにしていた。

 次の瞬間別の食事を食べ始めたけど。


「さて、邪魔なもんは消えたし財宝確認と行くか。おい、飽食が殺したんだからテメーらには一ゴスたりともやらねェぞ?」


「ええ!? ちょ、ちょっと待ってください、一つもですか!?」


「当然だろダボが。なんだ? テメェら付いて来るだけじゃなく浅ましく金寄越せってか? そうだなぁ、俺の肉奴隷にでもなるなら少しやってもいいぜぇ?」


「なんっ!?」


 リエラが口を詰まらせる。

 余りな言動に何も言えずに驚いているようです。

 そんなリエラにヘンリーの意識が行っている隙に、僕はルクルを連れて奥の部屋に突撃です。

 見つけた財宝を確認することなくポシェットに全てしまって行く。


「ククク、この俺様の奴隷になれるんだ。これ程名誉なこたぁねぇぞ? リエラだったか? テメェは胸ねぇからあんまいい具合じゃなさそうだが、まぁ俺なら気持ち良く大切に扱ってやるぜぇ? とりあえず壊れるまではなぁ。ひゃっはっは」


「絶対嫌ですっ!」


 ぬほほほほ、宝じゃ宝じゃぁ。

 その横ではポシェットに入った宝を別の場所から取り出し何これ? と首を捻るアルセさん。ゴスを一枚取り出しパイラにあげると、パイラはお金を口に入れて噛み砕く。

 なんて勿体無い食事だ!?


「はっは、残念だったな。奴隷にならねぇならテメェらにやる宝なんざねェんだよ。そこで指咥えて見てやが……あれぇぇっ!!?」


 そしてヘンリーが部屋を覗いた時。そこには空っぽの部屋があるだけだった。

 否、アルセに連れられたパイラがもう一枚ゴスを食べてます。

 あの金貨からして一万ゴスくらいの価値かな?


「ほ、飽食ぅぅぅっ!? テメェ喰ったか? 喰っちまったのかっ!? ここの財宝、喰ったのかテメェ!?」


「ゴス、うまし」


 ヘンリーは崩れ落ちた。

 四つん這いで呆然とするヘンリー。うん、なんだろう。スカッとしました。

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