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その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
第二話 その準備する者たちを彼らはまだ知らない
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そのもう一つの洞窟を僕らは知らなかった

「え? もう一つの洞窟ですか?」


 ギルドにやってきた僕らを出迎えたのは、同じくギルドにいたリアッティとアンディ。

 お前ら追われてるんじゃないの?

 そう思ったんだけど、こいつら普通にギルドの一角でくつろいでやがんの。


 バグ弾打ち込んでやってもいいんだけど、普通に話しかけて来るからどうにも調子を崩すんだよね。

 とりあえずは様子見かなぁ。

 もう少し見定めてダメそうならバグってもらおう。


「あたし達も噂で聞いただけなんだけどね、どうもコアな冒険者にしか伝わって無い儲かる洞窟があるらしいのよね。しかも聖樹の森の浅瀬、北東部らしいのよ」


「そんな場所にですか……確かにネズミンランドじゃあんまり儲けも無かったし、そっちの洞窟行ってみます? 用意もあと数日といった感じですし」


 ネズミンランドに入ってから数日。結婚式も間近にせまり、参加する王族なども遠方のお歴々が既に到着したりで慌ただしさを増していた。

 もともと救国の英雄であるアルセ護衛騎士団のリーダーとサブリーダーという事もあり、王族だけの宮廷晩餐会みたいな行いではなく、国の中央で授与式の時みたいに盛大にすることになったそうだ。

 その分いろいろと悪行を働く者が出ないとも限らないので、闇ギルドに念入りな摘発を入れたり、盗賊団一掃に尽力したりと、騎士団の動きも慌ただしい。


 それに伴い近場からツッパリとレディース、セルヴァティア国民の一部が隣国のよしみということで手伝いに来てくれていた。

 なので、国内はポケットに手を突っ込んで周りを威嚇しながら歩くツッパリと騎士団が肩を並べて見回っていたり、そこかしこでう○こ座りするレディースとソレを真似する子供たちが談笑していたりと混沌とした状況になっている。


 気の早い奴らは既に露店を開いており、中央の噴水広場ではトルコアイスみたいなねばっとした茶色い何かを売ってる店や、フランクフルトっぽいなにかを売ってる屋台がでている。

 どうやらこの世界で食事無双するのはちょっと難しそうだ。多分神様からして日本かぶれみたいだから向こうの食事は大体この世界で揃ってるんだろうね。あるいは近い食材があるんだろう。ワンバーガーとかカレーニャーみたいな食材がね。


 食道楽には素敵な世界かもしれない。

 うーん。僕も美味しい店とか探した方がいいのかな?

 金を払わぬ食道楽。透明人間の食べ歩き・マイネフラン編。みたいなの?

 うん、アカネさんに殴られそうだからやめとこう。


「では、この仕事をお願いしますねパティアさん」


「は、はい。クラッソ洞窟入り口ですよね」


 コリータさんが珍しくカウンターに立っている。

 冒険者らしくない街娘ルックの女の子ににこやかに微笑む姿が似合わない。


「と、いうわけで、そのクラッソ洞窟って言うところに、一緒に行かない?」


「一緒に……ですか」


 心底嫌そうにリアッティに返すリエラ。

 今、ついさっき話題に出た洞窟名吐いたねリアッティさん。

 クラッソ洞窟かぁ。


「罠も結構あるみたいだけど、地図は手に入れてあるわ。後は人数なのよね。二人だとちょっと攻略難しいみたいで。多分五人くらいはいた方がいいみたいなのよ、あの洞窟」


「財宝については山分け……といいたいとこっスが、こっちは頼んでる身っすから、6:4でどうっスか? こちらが4でいいでやす」


「どうします?」


 アンディの言葉にミルクティがアカネに尋ねる。

 現金だねミルクティさん。僕も財宝失ったからなぁ。自由に使えるお金欲しいんだよね。よし、せっかくだから行こうじゃないかリエラさん!


 僕はアルセの腕を掴んでたかだかと上げる。

 おーっ。と楽しげに声を出すアルセ。あれ? もしかして手を上げるの気に入った?

 多分僕に勝手に手を上げられるのがお気に召したご様子。

 アルセの感性はよくわかりません。


「あら、アルセが随分と乗り気ね」


「ふむ。主が行くというのならば我に否はないぞ」


 多数決の結果、洞窟へ向う事になりました。


「で、クラッソ洞窟って敵はどんなのが出て来るわけ?」


「えーっと、一階はバット系が多いわね。ポイズンバットとかパラライバットとか」


 蝙蝠が多い場所か。


「あと気を付けたいのがブラックマンね」


 なんだそれ? 黒い人?


「攻撃は拳しか使って来ないんだけど、洞窟内が暗いから気が付いたら背後から攻撃受けたりするのよね。奇襲を受けたところにパラライバットの急襲とかだと歴戦パーティーも全滅とかありうるわよ」


 気を抜いたらピンチな場所かぁ。

 でも儲かるんだよね。ちょっと楽しみです。

 よし、行くか。


「それで、どうすんだい? マイネフランに来たのは良いけど結婚式までまだ日があるぜ?」


「そうだな。暇だしクラッソの方でも見に行くか。資金獲得しとくのもアリだろ」


「悪いが仕事があるので無理だぞ?」


「貴様などどうでもいい。ほれ、行くぞクソガキ。魔物ならお前に喰らわせてやる」


「……なら行く」


 ……ん?

 不意に、ギルドを出るとき、声が聞こえた。

 どうも冒険者が同じ洞窟向うみたいだけど、なんか嫌な感じの男だなぁ。でもその横付いて来る女の子が可愛い。アルセと同年代くらいだろうか?

 ふいに顔を上げた少女と目が合った。そんな気がしただけで、彼女は食事を再開する。

 まぁ、存在しない僕に気付く訳も無いかバグソナーさんじゃあるまいし。

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