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その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
第七部 第一話 その夢の国にある地獄を僕らは知りたくなかった
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その階層に皆が向わない理由を皆は知らない

「ふぅ、結構面倒ですね」


 槍を一振りしながらパルティが一息ついた。

 現在地下3階に来ております。

 出現魔物はポイズンラット、鉄鼠、ネズミミン。


 ポイズンラットは体内に毒を持った鼠だった。噛みつかれると毒になるんだけど、これはゲームとかでよくある、しばらく放置してるとHP1目指してダメージを受けていく毒だった。

 まぁ、僕らの場合は状態異常回復魔法弾があるから問題無いけどね。


 ネズミミンはやっぱりネズミンの上位存在でした。モフモフ体系だけど歯がするどく尖り、体当たりと噛みつきを使って来るネズミンの倍の大きさのふわもこ鼠だ。

 これはアルセが楽しげに不折れの白ネギで突っついてたら倒しちゃいました。

 あれ? って顔してたけどアルセ、君が持ってるの、一応武器だからね。一回つっつくごとにダメージ入ってるからね、多分普通に毒喰らうより多大なダメージが。しかもHP1で止まったりはしないからね。

 そんなネズミミンのドロップアイテム、ネズ耳プリムはメイドさんがよく頭に乗せてる奴でした。あれにネズミの耳がくっついてます。うん、パルティさん、これ、頭に乗せませんか?


 それで、鉄鼠なんだけど、正直僕の予想、外れてた。

 妖怪に鉄鼠てっそというのがいるんだ。凶暴な鼠の妖怪で、人間を襲う奴。

 ソレだと思ってたらさ、なんと、鉄鼠だったんだ。

 詳しく言うと、鉄で出来たネズミでした。


 たぶんスタチューの上位存在か亜種に類する存在だと思う。

 身体が鉄で出来てるせいか可動部が擦れて凄い音がなるので近づいて来るのは良く分かるんだけど、身体が鉄なので攻撃を通すのが苦労する。

 アルセソードがなかったら確かにこれを倒せるかどうかわからないと思う。


 普通の冒険者泣かせの魔物だね。武器が効かないばかりか下手したら欠けて使い物にならなくさせられそう。

 そりゃあこれ以上下の階へ向おうとは思わないよね。

 でも、僕らは違う。

 とある事情でアルセウエポンを持つ僕らにとっては、例え鉄製鼠であろうと撫で斬りでした。

 リエラとパルティが大活躍だったよ。

 といっても普通に攻撃するだけだったけど。他の敵と闘うより動きが遅いから二人専用のボーナスステージだったかな?


 リエラはアルセソード改。パルティはリエラのお古になるけどアルセソードを使って鉄鼠を倒してました。

 他の面々は銃弾やら魔法なので、アカネさんが温存させて二人の経験値にしてたみたいです。

 あ、ついでにアルセも不折れの白ネギで頑張ったんだよ。途中で飽きて突っついて遊んでたけど。


「あ、どうやらあそこが地下四階への階段みたいですね」


 リエラが気付いて寄って行く。

 何故だろう。その下を見た瞬間、誰ともなくゾクリとした何かが背中を這ったらしい。

 呆然とする皆を放置して、一人リエラが階段を調べている。


 多分、これは本能が発する危機だ。

 この先に入ってはならない。虫の知らせというモノがあるのを初めて知りました。

 多分、この先にはまだ、いや、きっと一生向ってはならないのだと、全員が感じていた。

 リエラ以外。


「あれ? どうしました皆さん? 折角ですし四階層、ちょっと覗いて行きません?」


 多分だけど、リエラは鈍いんだ。

 数々のストレスに晒されたせいで、このくらいのプレッシャーはいつもと同じだと、危険を危険だと理解できなくなってるんだと思う。

 どうしてかな。涙が溢れて止まらないよリエラ。

 僕はなんとか足を動かし、口を開けて僕らを誘おうとしている地下四階の階段からリエラを遠ざける。


「え? あの。な、なんですか?」


 リエラの腕を引っ張って階段から遠ざけた僕に気付き、アカネが指示を出す。


「全員、転進! 今日はここまで。戻りましょう!」


「え? え? 折角階段まで来たのに!?」


 リエラ以外、誰も何も言わずともアカネに従い歩き出す。

 背中に感じる言いしれぬ不安には、誰も振り向こうとすらしなかった。

 多分だけど、皆分かってるんだ。あの先に向ったらどうなるのか。


 理解は出来なくとも警鐘を鳴らしている、全身があの先が地獄に繋がっていると理解している。

 おそらく、たぶん、あの先にはアレがいるんだと思う。

 黒死の運び手から、地獄を手に入れた存在が。黒死の運び手の担い手フリアールという名の悪夢が。


「あーそのちょっと皆服を集めてくれる? さっきみたいにどこ行ったか分からなくなるみたいなことになっても困るし。ちゃんと、特にブラ、回収してね」


 不意に、アカネが階段を振り向き、皆に告げた。

 なんだ? と思っていると、急にアカネがすぽぽぽんっと服を脱ぎ散らかす。

 魔法を使ったようだ。

 全身の周囲におびただしい数の連弾が生まれる。

 泥のようなモノからして、おそらく地魔法の魔弾だろう。

 慌てて服を拾いだすリエラとパルティ。ミルクティがまたも鼻血塗れのデヌの首を捻る。


 次の瞬間、物凄い音を立てて魔弾が四階層の階段へと打ち込まれる。

 土煙がもうもうと立ち上がり、第四階層への階段が完全に陥没する。

 どうやら、間違ってリエラみたいなのが入っていかないように通行不能にしたようだ。

 アカネさんグッジョブ。確かに下手に入って生還者が出た場合、未知の病気が蔓延しかねないからね。状態異常回復魔法で回復すればいいけど、虫の知らせっぽい危機感からして可能性は低いと思う。


「これでこの先へ向おうって奴はいないでしょ」


 こうして未曾有の事態が誰も知らない間に防がれたことを、国民は、誰も知らないのであった。

 全裸で仁王立ちしてふんすっ。と告げるアカネさんが男らしいです。写真、撮っていいですか?

 ポイズンラット

  種族:魔鼠 クラス:チューチュー

 ・体内に毒を持つ鼠。噛みつかれると毒を受ける。

 ドロップアイテム・毒鼠毒・毒消草


 鉄鼠

  種族:魔鼠 クラス:鉄鼠

 ・身体が鉄でできた鼠。

  ゴーレムやリビングスタチュー、ガーゴイルの亜種とも言われているがネズミ型なのでネズミ系魔物として区別されている。

 ドロップアイテム・鉄片・鉄のインゴット・鉄爪


 ネズミミン

  種族:ネズミン クラス:ネズミン

 ・ネズミンの上位存在。体当たりと噛みつきを覚えた攻撃性の高いネズミン。

  でもやっぱり攻撃力は余りない。

 ドロップアイテム・ねずみんしっぽ・ネズミンの皮衣・ネズ耳プリム

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