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その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
第二部 第一話 それが偶然の一致だと彼らは知らない
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そのミイラの名前を誰も知らない

「ガフッ。我はモウ、ダメだ……」


 助け出されリエラの弾丸を受けたミイラは復活した。

 回復の魔法弾で回復したんだ。

 でもさ、なぜかミイラのまま回復してます。


 回復魔法受けたんだし、元の人間か魔族に戻ったりしないの?

 むしろアンデッドなら回復魔法で昇天してもおかしくないよね?

 それとも生まれた時からその姿?

 僕、異世界転移でよかった。転生でミイラとか、絶対嫌だよ。彼には悪いけど。


「あ、あの……ミイラさんは人間ですか?」


「我か? 我は……はて? 我は誰だったカ?」


 と、不思議そうな顔で質問したリエラに質問を返す。

 耄碌しちゃってるよミイラさん!?

 自分の名前や種族すらわからんとか。


 で、いろいろ聞いてみた結果、彼はもともとこの近くにある遺跡で眠っていたらしい。

 そして気が付くといきなり棺が開かれ重量物が降ってきた。

 覚醒した瞬間身体を砕かれ瀕死の重傷を負わされたようだ。


 うん、間違いなくカインの一撃だね。

 折角封印が解かれたみたいな感じで目覚めたのに即行殺されるとかやるせない。

 まぁぎりぎり死ぬ前に復活したけど。


「我は我がいた墓を暴く者に呪いを掛けるコトができる。しかし……墓はどこだ?」


 うん、わからないね。この近くだから森の中だろうことは分かるけど。

 そして、カインたちは相談を始める。

 彼を墓とやらに戻しに行くのも良いのだが、元々川に向って帰って来るだけのつもりだったので食料などは心もとなくこの周辺で未発見の墓とやらを探すのは長期戦になりかねない。

 まずは街に戻って準備を整えなければどうにもならない状況だった。


「とりあえず、俺達は一度街に帰るんだけど、あんたはどうする?」


「さすがに独りで探すのも大変でしょう?」


「そうダナ……しばらく同道させて貰いタイ」


「今更一人魔物が増えても問題ないですし、いいと思います」


 結局人間か魔物かの結論出てないんだけど、リエラは魔物と認識したようだ。

 というか、魔物であればミイラでも普通に接っせるんだね。

 僕にはちょっと、無理かな……恐いし。


「それはいいんだけどよ、これ、どうする?」


 カインのいうコレとはこのミイラが入っていた棺である。

 黄金製の重厚な造りで、人型の置き場に困る類の巨大人型棺である。

 当然、大の大人二人程度で持ちあがるようなものではなく、それを持って狼モドキが存在する平原を越えるなどカイン達に出来る訳も無かった。


「仔細ない。我が持つ」


 と言うが速いかミイラはひょいと片手で棺を担ぎあげる。

 まるで軽石で造られた重さのないモノだとでも言うように、本当に軽く肩に引っ提げてしまった。

 ……うん、これは人間じゃなくて魔物だ。


「すっげ……」


「ぶひっ」


「しかし……我はなぜこの柩で眠っていたのか……うぅむ。思い出せんな」


「頭ん中まで乾燥しちまってんじゃないのか?」


「そうだろうか?」


 カインの言葉に軽く頭を振るミイラ。

 あわわ。カラカラ何かの転がる音がしてるよっ!?

 いや待て、脳が干からびているなら思考回路があるのがおかしい。

 ということはまだ脳みそ活動してるってことでいいのかな?


「ふむ。名前を思い出せんが、まぁいいか。適当に呼んでくれ」


「呼んでくれっつわれても……ミイラ男?」


「カインはダメね。ミイラの略でミィとか?」


「なんか女の子っぽくないですか? ミラオさんとか?」


 うん、三人のネーミングセンスは最悪だ。

 ミイラもそれに気付いたのだろう。

 必死に頭を回転させる。


「クーフ。うむ、クーフと名乗ろう。生前はそのような名で呼ばれていたような呼ばれていなかったような気がする。何か今の自分の姿に相応しい名前であるのは確かなはずだ」


 という訳で、結局自分で自分に名前を付けることになったミイラ改めクーフ。

 ミイラと言えばピラミッド、ピラミッドといえばクフ王ってこと?

 こっちの世界にもその名前の人いるんだ?


「とこロで、先程から我の周りをうろつクこやつは何だ?」


 クーフが視線を向けたのは、先程からくるくる回転しながらクーフの周りを回るアルセだった。

 アルセ……まだやらかし足りないのか……

 視線が集まると回るのを止めてニコリと微笑むアルセ。


 それを見た面々は結局何も言えなかった。

 誰からともなく溜息が洩れる。

 が、気合いを入れ直すようにカインが自分の頬を叩いた。


「しゃっ。行こうか。これから平原の狼どもを抜けるぞ。皆気を引き締め直してくれよ」


「クーフさん、この子はアルセ。私達の仲間です」


「そうなのか? ……魔物に見えるのだが?」


「魔物よ? こっちのバズ・オークもね」


「ん? オークは魔人ダロウ? 意志を持つ存在は魔人で意志を持たぬ者が魔物……ではないのか?」


「「「え?」」」


「え?」


 カインたちの戸惑いに、クーフは自分の知識が間違っていたのかと戸惑いを返す。

 しばらく、彼らの動きは止まったのだった。

 クーフ(仮)

  種族:古代人 クラス:ソクシンブツ

 ・ファラオっぽい柩を装備。寝袋兼アイテム倉庫兼攻撃用鈍器。

  ○○○○○の森北西部にある○○○○○○○王国跡にある墳墓に生息しているらしい。


  スキル:■■■■の呪い

      柩型アイテムボックス

  種族スキル:アンデッド属性

        暗黒属性無効

        神聖属性脆弱


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