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その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
第七部 第一話 その夢の国にある地獄を僕らは知りたくなかった
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そのハーレム状態を彼自身は知らない

 ただいま宿屋でくつろいでいます。マイネフランの宿屋の一室から、僕、透明人間|(仮)からご報告します。

 宿屋に泊るのはアルセ、リエラ、アカネ、パルティ、ミルクティ、ルクル、レーニャ、デヌ。

 デヌさんハーレムですね。僕居ても居ない状態ですから。

 デヌさんは気付いてないですが。

 ……あ、ルグスいるじゃん!?


 ごめんルグス、普通に忘れてたよ。

 一応男性だったねチミ。

 そんなルグスさんは部屋を浮遊しながら狭い狭いと不平不満を漏らしております。

 そりゃ不死王様ともなればどこぞの朽ちた王城に居たんだろうし、宿屋の一室は狭いだろうね。

 でもさ、これでも一応中級パーティー用の部屋なんだよ。最大10人まで収容できるのです。


 あ、ちなみに、レーニャは今箱型の瓶に入って顔と両手だけを出してます。

 縁に手を掛けにゃーにゃー鳴いているレーニャヤバい。無駄に可愛い。抱きしめたい。

 でも抱きしめたらにちゃぐちょんのカレー塗れになってしまう。


 レーニャが歩きまわって部屋がカレー塗れにならないようにとカインがついでに武器屋で買って来たらしい。持ち手がついているので一応デヌとルグスが共同で持ち運んだこの瓶は、今日からレーニャの移動用駕籠となり、同時に寝場所にもなるようだ。


「はぁ、なんか落ち付くぅ~」


 ベッドに寝転んだリエラが癒されている。

 防具は全て脱ぎ散らかしていて、枕を抱きしめるようにして顔の下半分を埋めている。

 うん、とりあえずカシャッと一枚行っときましょう。


 パルティさんはそんなリエラを笑いながらベッドに座って見ています。

 僕はそんな二人のベッドに挟まれた棚に背もたれて座り、アルセの椅子となってます。

 アルセさん、座るのは良いけどクッキーボロボロこぼさないでね?


「宿屋に泊るのは結構あったけど、パーティー単位の部屋は初めてだなぁ」


「ミルクティさんは個人で行動してるの?」


「はい。今までは二丁拳銃が高級品なので、盗られないためにも仲間は作ってませんでした」


「そもそもがソレよね。なんでまた魔銃なのよ。この世界なら魔法使えるし、剣やら弓やら選び放題でしょ?」


 アカネさんとミルクティさんはベッドに腰掛け会話中。

 この二人は仲のいい友人になりそうだなぁ。


「だって銃が使えるんですよ!? 私ゾンビ撃破ゲーム得意なんですよ。やっぱフルオートでババババババって打ち込むのがいいですよね。さすがにこの魔銃じゃそこまでできないですけど、折角銃があるならコレ使わなきゃ」


「でも高かったでしょ?」


「そこはその……ちょっと裏技使いました」


「裏技?」


「はい。マップ検索で索敵して盗賊の拠点潰した時に銃と魔弾数十発を見付けたので、そこから盗賊潰しをして、幾つかと交渉して盗賊から魔弾を貰ったりとか」


 結構悪どいことしてますねミルクティさん……


「前世知識があるっていいですよねぇ、裏技使えばこんなに沢山の銃弾貰えるし」


 といっても彼女が持っているのは合計でも千発にも満たない。

 ちなみに、協力してくださった盗賊団はその後速攻で潰しておいたそうです。利用するだけ利用して換金するなんて、鬼畜だと思います。


 そんなことを思いながら、ふと、気付く。

 デヌさんが物凄く居心地悪そうにしております。

 そりゃそうか、彼は根っからの武人タイプ。強い奴と闘ってオラワクワクして来たぞーとか言ってる戦闘民族だ。女性に囲まれきゃぴきゃぴな状況は最も苦手とする場所だろう。

 どうするデヌさん、今、君はハーレムを味わっているんだよ?


「少し、出て来る」


 あ、逃げやがった!?

 居づらかったらしいデヌが部屋を後にする。

 はぁ、仕方無いなぁ。アルセ、御免だけどちょっと彼が追い込まれないように見て来るよ。

 ……なに? アルセも来るの?


 僕はアルセと二人、あ、いや、背後からストーカーさんが来てるから三人連れだってデヌの後を追った。

 デヌは宿屋から出ていくと、そのまま噴水のもとへ。

 ベンチの一つに腰掛けると、敗残者みたいに項垂れやがりました。


「はぁ、俺は何故……こんな所に居るのだ」


 まぁ、強くなろうと付いて来たのに、結果がカイン居ないし、新人冒険者たちの子守り、挙句に女性だらけの部屋で一晩過ごす事になる思春期男子にとっては夢の一日だ。

 軟弱と思っているのかな?


「む? あ、ああ。アルセとルクルか。何か用か?」


 取り繕うように、僕らに気付いたデヌは居住まいを正す。


「おー」


 元気に拳を突き上げるアルセ。

 なにしてるの?


「いやな、俺も、あのマリナだったか、あいつの安否のためにも向こうに残るべきだったのかと……な」


 絶対嘘だな。

 自重気味に告げるデヌさんに、思わず溜息を吐く。

 とことことアルセをデヌのもとへと近づける。

 なぁに? とアルセが僕を見て来るが、デヌの裾にアルセの手を掴ませ、引っ張ると、僕の意図を察してくれたらしい。

 アルセがデヌを引っ張り無理矢理に立たせる。


「ん? どうした?」


 戸惑うデヌを引き連れて、アルセが歩き出す。

 折角だこの町に来れて良かったと、デヌが思えるようにしてあげよう。

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