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その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
第七部 第一話 その夢の国にある地獄を僕らは知りたくなかった
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AE(アナザーエピソード)・その勇者を迎撃する王城の兵士達を僕は知らない

 カインはリエラ達と別れ、一人王城へと向かっていた。

 正直な話少し前にネッテ達が向ったばかりなので直ぐに合流できるだろう。そんな軽い気持ちだったのだが……甘かった。


 王城前の兵士達がカインを発見する。

 よーすっとばかりに片手を上げて普通に通ろうとしたカインを、両側から剣が遮る。

 城門前にある掛け橋前に居た二人の兵士が、剣をクロスするようにカインの行く手を阻んだのである。


「何の真似だ?」


「カイン・クライエン殿ですな?」


「分かってるならなぜ通さねぇ? 仮にも勇者だぜ? しかも第三王女の婚約者になってるはずだ。普通はむしろ、歓迎してくれるもんじゃねぇのか?」


「ええ、歓迎します・・・・・よ。ただ、あなたが来たならばお言葉を伝えよと連絡を受けております」


「連絡?」


 カインが強引に移動しないと理解した兵士達は一度剣をしまい、自らの身体で道を遮りながら告げる。


「己が手を出した者がどういうものか、本気で分かっているのなら受け入れよ。貴様は我らがアイドルに手を出した。よって、ネッテ王女のもとへ辿りつきたくば、彼女を愛し慈しむ兵士たちを薙ぎ倒せ」


 そんな事を告げ、すらりと剣を構える兵士達。

 得心いった。とカインは好戦的な笑みを浮かべる。

 要するに、彼らが求めるのはネッテのもとへ辿りつくカインの妨害。

 ソレを乗り越え辿りついてみせろ。そう言われたのである。


 ならば遠慮など必要無い。

 カイン一人でマイネフラン城を攻略すればいいのだ。

 手加減は出来ないが、向こうも殺す気で来るのだ。行くしかないだろう。

 何よりも、ネッテがそこで待っている。


「いいのかお前ら……ネッテが関わるなら、俺は無敵だぜ?」


「小癪なッ!」


「ネッテお嬢様が関わるならば我等とて死兵となって貴様を討つ! 王族には手を出せんが民間から出てきた偽勇者一匹、ネッテお嬢様にもう一度会えると思うなよッ!!」


 打ち掛かってきた兵士二人に、徒手空拳で対応したカインは相手の懐に飛び込み左の兵士の腕を捻る。痛みで剣を落とす兵士を思い切り右の兵士に投げつけた。

 驚く右の兵士は慌てて仲間を傷付けてはいけないと剣を捨て、仲間の身体を受け止める。

 二人の兵士が倒れるより先に走りだしたカインは一直線に掛け橋へと向かう。

 跳ね橋らしく徐々に上がり始めた橋に飛び付き45度を越えた時点で城門側の橋の上に身体を持ち上げると転がるようにして城門へと入り込む。


 退路は断たれた。

 開かれた城門から入り込んだカインを待っていたのは数十名からなる兵士団。

 エントランスを埋め尽くす勢いの彼らは、カインを見付けた瞬間剣を引き抜く。


「来たぞカイン・クライエンだ! 全員、全力を持って捕縛せよ! 命の有無は問わん。全力だ。全力を尽くせ!」


「ふざけやがれっ!」


 さすがに剣を抜かずにこの兵士達は相手できない。

 ロングソードを引き抜き構える。

 さすがにアルセソードなど切れ味のいい剣を使うのは躊躇われたのだ。


「弓隊前へ! 槍隊衾用意! 騎馬隊構え! 歩兵突貫用意!」


「ちょ、城内で軍団戦でもする気か!?」


「放て!」


 無数の弓が躊躇いなく撃ち出される。

 ネッテは愛されてるなぁ。そんな事を思いながら、カインは剣を握りしめた。


「ステータスブースト!」


 飛んできた矢を肉体を強化してやり過ごす。

 避けきれそうにない軌道の矢は剣で斬り落とす。

 兵士の方からマジか!? とかすげぇ!? とか賞賛も聞こえたが、軍団長が黙らせる。


「騎馬突撃!」


 城内だというのに躊躇い無く駆け出す騎馬部隊。馬の足大丈夫か!? 思いながらもカインはタイミングを見計らって飛び上がる。

 全身を丸めるように回転させ、騎馬が通る寸前その頭上を飛び抜ける。

 近くの兵二体が剣を振ってきたが、ロングソードでこれを迎撃する。

 カンキンと金属音が数度響き、ぎりぎり地面に着地したカインに、歩兵部隊が突貫してくる。


「ンなろっ!」


 騎馬のように小回りが利かないならやり過ごす事は出来たが、歩兵たちは血走った目で首を取れとばかりにカインに殺到する。


「ええい、音速突破!」


 刹那、カインが皆の視界から消えた。

 次の瞬間バタバタと兵士達が倒れていく。


「チィィッ、不甲斐ない! 俺が相手だカイン・クライエン! ネッテお嬢様は渡さんぞ!」


 軍団長が突撃して来る。

 時折矢が降り注ぎ、騎馬が駆け抜け歩兵が殺到し、さらに軍団長が斬りかかる。

 さすがのカインもこれは手加減どうこう考えてる場合じゃなかった。


「ステータスハイブースト! 亜光速突破! 千進突牙斬!」


 回りを排除しつつ軍団長と切り結ぶ。

 この軍団長、無駄に強い。


「やらせはせん! 貴様などにネッテお嬢様はァ!! やらせはせん! やらせはせんぞぉッ!!」


「うるせぇッ! ネッテは俺が幸せにしてやる、テメェら覚悟しろ! ネッテが関わったことで俺が諦めると思うなよ! 万迅連牙斬!」


「ぐわああああああっ!!?」


 軍団長の全身から血が噴き出し、彼は力を失い倒れ込む。

 けれど、その腕は震えながらもまだ動いていた。


「やらせはせん……やらせは……」


「やべぇ……こいつらマジで俺を潰す気だ」


 早急にネッテに会わなければマジで潰されかねない。カインは遊び感覚だった意識を引き締める。


「待ってろよ、ネッテ……」


 わらわらと現れる兵士達のその先、待っているだろうネッテを想い、気合いを入れ直すカインだった。

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