AE(アナザーエピソード)・その偽スライムのスライムによるスライムのための冒険を僕は知らない2
スライムをどうするか。
葛餅は考えた。考えた結果、ふと思い至る。
未だに草を食むスライムに触手を絡ませ強制的に動きだす。
まだ食っていたい。形を変えてごねるスライムを無理矢理連れ出す葛餅。
どこへ行くのかと皆が後を付いて行く。
校舎を後にして外へ。
魔物が街中に出るの大丈夫なのかとセキトリだけがおろおろとするが、気にせず葛餅は這いずって行く。
本来であればもっと早く人が駆ける以上の速度でフィールドへと向えるのだが、このスライムは逃げ出そうとするのでこれをなんとか止めるので精一杯らしい。自然早歩きするカルア達の方が速度が速くなる。
ずるずると引きずられるスライムは、葛餅と混ざってしまわないか心配になってくるセキトリだった。
フィールドへとやってくると、葛餅はようやくスライムを解放する。
この周辺は丁度ガルーたちが生活する平原地帯だ。
出現魔物はガルー、ティディスベア、ハエーハエ、ベリルメロン。
滅多に出ないベリルメロンは宝石で出来たメロン型魔物である。両手両足があるため移動するのだが、その動きはすこぶる遅い。
このため生まれ出た次の瞬間には野生の動物やら魔物に食われてしまうのだ。
見つけられたら大ラッキー。しかしこのベリルメロンを主食としている大型の魔物メロングリズリーとの遭遇率が跳ね上がるうえに、下手したら街にトレイン行為を行うことにもなりかねないため、市場へはまず出回らず、ベリルメロンはその場で冒険者たちに食われることが多い。
皮の部分がベリルという宝石なので、加工次第では売れるのだが、これの匂いがメロングリズリーを呼び寄せるため、大抵その場に埋めるのが冒険者たちの暗黙の了解となっていた。
残念ながら今回のフィールドにベリルメロンは影すら見当たらない。
遠くの方でガルーが数体ぴょんぴょんと飛び跳ね、あるいは草を食んでいる姿は見える。
お腹の袋に手を入れて何かを探っているようなガルーもいるが、あの中には何も無いはずだ。
また、時折ティディスベアが森から飛び出て草原を走り、遥か遠くへと走り去っていくのが見える。
位置からしてあの山から下りてきたティディスベアが各地の情報収集に向っているのだろう。
葛餅はそんな事を思いながら目の前のグータラスライムを見る。
葛餅から解放された瞬間に自分の真下にある草を取り込み食べ始めていた。
「葛餅様ここで何かなさるので?」
追い付いて来たサリッサに触手で向う先を告げる。
その触手の先を見ていたサリッサだが、何があるのかは分からないらしい。
だが、ローアは違った。
「ああ、もしかしてスライム洞窟に向うの? あまりに弱々しい洞窟だから冒険者学校の対象洞窟にすら入れられていない天然洞窟」
「へ? そんなのあるのか!?」
「お黙りなさいスットコドッコイ。セキトリならセキトリらしくそこの木に張り手でも打ってなさい!」
ちびっちゃいローアは身分が低いと思われるモブ面のセキトリが気に入らなかったらしく手酷く告げると動き出した葛餅に付いて行く。
カルアとセキトリが何も言えない顔で向き合うと、同時に溜息を吐いた。
再びスライムを拉致するように触手で連れて移動する葛餅、途中ハエーハエが襲ってきたが、これは超反応を見せた葛餅が叩き潰して撃破する。
襲って来る魔物の中にはトラ型の魔物やイノシシ型、ウサギ型などがいたが、これはただの動物だたので苦労することなくサリッサとカルアが倒していた。
トラ型相手には苦戦していたが、葛餅がフォローしただけで苦労なく倒せたのが印象に残る。
サリッサもカルアもさすが葛餅と改めて彼の実力を認めた瞬間だった。
スライム洞窟前へとやってくる。
この洞窟に出現するのは全てスライムらしい。
ただし、種類は豊富だ。
本来あり得ないスライムすらもこの内部には棲息している。
零下でのみ発生するフリージーや溶岩地帯にのみ出現するボルケイノスライムやブロブ。
物理攻撃が効かないブラックウーズやどうやって発生したのか全く意味不明のシュガープディング。一番危険なのが姿が見えないインビジブルスライムだろう。
ただし、このスライムは光魔法を行えば影が生まれるのでどこにいるかは大抵わかってしまう。
問題は、ここに居るメンバーに光魔法が使える存在がいるかどうかだが、その辺りは索敵に秀でた葛餅にとってはどうでもいいことだった。
皆を自分が守れば問題無い。
そんな思いと共にスライム洞窟へと入って行く葛餅とスライム。
ふと、カルアはそんなスライムをみながらセキトリに視線を向けた。
「そういえばそのスライム、名前はあるの?」
「え? ああ、マターラにしたよ。ダークマター食べたスライムの略で」
「安直というかなんというか、何故そこを名前として取ったのかは聞いても意味なさそうだね」
適当に付けた。そんな言葉が返って来そうだったのでカルアは聞かなかったことにした。




