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その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
第四話 その二人が結婚することを僕は知りたくもなかった
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その王子の思考回路を皆は知らない

「あ、暗殺未遂っ! 暗殺未遂だっ!!」


 マリナに掴みかかるランスロットを見て宰相が血相変えて叫ぶ。


「そ、そうです。暗殺未遂です。誰ですかあのマリナーマリナの飼い主は! 王族弑虐罪で即死刑ですわ!」


 テーテも好機と見たのか同じように叫んだ。

 さすがに国王もこれはヤバいと同じく叫ぶ。


「あのマリナーマリナ、ならびにクルー・ク・ルーの飼い主を拘束せよ!」


「あの……」


 だが、そんな国王達の叫びを割入るように、申し訳なさそうに手を上げるネッテ王女。


「二人とも、私の使い魔ですが、何か?」


 皆の注目を浴びた瞬間、覚悟を決めたようで、申し訳なさそうな顔が一瞬で鳴りを顰め、王女然とした顔つきになる。

 その言葉にテーテが噛みついた。


「な、何を悠長な!? わ、分かっているのですか? 貴女の使い魔がランスロット王子を! 殺人未遂ですわ!」


「殺人未遂……ですか?」


 その瞬間、何故だろう、国王と宰相は言いしれぬ悪寒を感じて生唾を飲み込んだ。

 彼らはマリナたちの主がネッテ王女だとは気付いてなかったのだろう。

 そして、彼女が主であることは、彼らにとって最悪でもあった。


「つまり、国王陛下は私を王子暗殺未遂を行った罪で起訴される。そういう事でよろしいのですね? ソレを行う意味は、理解できてますよね?」


「あ、いや、その。ネッテ王女?」


 そう、彼女は王女なのである。

 しかも他国の。この国が帰属したがっているマイネフランの王女なのである。

 それを罪人として起訴する。つまり、マイネフランに喧嘩を売るに等しい。


「|いっぺん(戦争)、死んでみるしましょうか?」


 どっかで聞いたような台詞ですが意味がなんか違って聞こえます。

 青筋浮かべながらにこやかに告げるネッテ王女様に、国王陛下は危機を察した。

 次の瞬間、宰相と国王様がネッテの前に走り出て来て土下座していた。

 滅相もございません。そんな言葉が聞こえた気がしたが、民衆の目の前でネッテに頭を下げる国のかしらを見せつけられて呆然とする傍聴者たち。


 テーテさんは完全に戸惑っている。

 相手の粗を見付けたと思い皆が攻撃すると思ったのに、なぜか国王が土下座するという意味不明の混沌とした場になっている。

 なぜ、こうなった?


 彼女は知らないのだ。ネッテが王族だということしか。

 だから、国王達の行動が理解できない。

 国王達にとってマイネフランと敵対するということは国が滅びるに等しいことなのだ。

 絶対にネッテと敵対してはいけない。

 ルルリカについてはともかく、ネッテとの、否、マイネフランとの仲を修復出来ない程に壊してはならないのだ。


 それならばルルリカを無罪にしてしまえばいいのだが、それは国民にも示しが付かない。

 国として、ルルリカは断罪して、ネッテ王女には納得のいくルルリカの罪科をここで決め、そして穏便に帰って貰う。

 ランスロットの処遇についてはその後で構わない。今はとにかくネッテを不承不承納得させて無事にマイネフランに返す。それが国王にとっての最善の道なのである。


 ランスロットを暗殺などする気も無いネッテに根も葉もない罪を着せて断罪など、する訳がなかった。他国の姫を王族暗殺の罪で投獄などしようものなら、それもマイネフランの王女をとなれば、確実にマイネフランが動く。

 噂では現国王はゴブリン討伐の際にツッパリたちに国を守らせたらしい。

 魔物使いの国という二つ名が付いているマイネフランに敵対すれば、ゴブリンの大軍を屠ったツッパリの大軍により王国が蹂躙しかねない。ということらしい。

 あ、これデヌさんとミルクティさんが得意げに教えてくれました。

 真相? どうなんでしょうねぇアルセさん?


「好きだッ。俺と結婚しろ!」


 ネッテと国王たちとのやりとりを気にせず、そんな声が轟いた。

 なんだ? と思ってそちらを見れば……うそんっ!?

 嫌がるマリナを強く抱きしめ、強引に口付けしようとしているランスロットさん。

 マリナがその唇に手を当ててぎりぎり防いでいる。


 は? はああああああああああああああっ!?

 皆が唖然としているなか、マリナに愛を囁き始めるランスロットさん。目がマジだ。

 どうしてそうなった? あ、もしかして……


 あー、その、うん。まぁ、なんだ。

 アカネさん、そんな頭抱えないで。

 状況察したリエラやパルティ、ネッテも頭を手で押さえて沈痛な顔をしていた。

 ああ、あいつやりやがった。そんな顔しないでください。

 あれは僕のせいじゃないんです。


 僕はやろうとはしたけどバグらさなかったよ?

 あいつが勝手にバグ弾の上に落ちてバグっただけだから。

 だ、断じて僕のせいじゃないんだからね?


「ら、ランス?」


「え? あ……父上。これは失礼。見目麗しき女性を口説くのに、つい我を忘れておりました」


「いや、その……」


「父上、私はこの娘と結婚致します」


 いや、そんなキリッとした顔で言われても。っつかマリナが凄い嫌そうに暴れてるんですけど?

 マリナがランスロットの拘束を振り切り、思いっきりドロップキック。

 ノーモーションからの会心の一撃だ。


「あっ♪」


 そして喰らったランスロットは何故か嬉しそうに声を漏らしてふっ飛ばされるのでした。うん、完全バグったなアレ。

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