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その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
第四話 その二人が結婚することを僕は知りたくもなかった
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その意味不明な場所で暴走した王子がどうなるかを誰も知らない

「ルルリカ・テルテルボール。敢えて訊こう。不子の罪を、認めるか?」


 第一王子が代表するように告げる。

 ごくり。生唾を飲み込むルルリカ。

 その口が開かれるより先に、第二王子が言葉を告げる。


「いいか、自白するにしてもだ。よぉく考えろよ? 不子の罪ってのは重罪だ。何せ子供を堕胎させたりして殺害したことになるんだからな。情状酌量の余地などなく、身体に石詰められるんだ。二度と子共は産めなくなるし、罪人として首を斬られて人生も終わる」


 思わず想像したのだろう。ルルリカの顔が青くなる。

 というか、傍聴席にいる方々の一部が物凄い土気色してるんですが。

 想像しちゃったの? それとも、罪、犯しちゃってたの?

 たまらない。とばかりに女性が一人走り去る。多分トイレかどこかに向うようだ。


「私は……」


 言葉が出て来ない。

 自然震えだすルルリカ。その思考は何故か手に取るようにわかった。

 彼女は本気でネッテに惚れたのだ。

 そしてネッテの幸せを願っている。


 カインとネッテが幸せになれるならば、自分など死んでも構わない。その思いは本物だ。でも、それを本当に告げられるかといえば、否だ。

 誰だって死ぬのは怖い。

 まして拷問を受け殺されるのを自分からお願いするというのは、余程のドMでなければ絶対に回避したいことだろう。


 人間の身体ってのは自分から死ぬのを防ぐ働きを持っている。

 本能が自殺を防ぐのだ。

 だから……自分から死を選ぼうとするルルリカを本能が留める。

 口から水分が消え去り、喉から声が漏れ出なくなる。

 喘ぐように声を出そうとするルルリカは、しかし、一言すらも続けることができないでいた。


 そんなルルリカの表情を、これまた苦痛の表情で見つめるネッテ。

 たった一言。側室でも構わない。そう言ってしまえばルルリカは助かる。

 でも、それはつまりカインとルルリカが子作りするのを許容することを意味している。


 それを許せるか? ネッテは葛藤していた。ルルリカを助けたいと思いつつも、ルルリカとカインがくっつくのだけは許せなかったようだ。

 お互いに辛そうな顔で視線を交わすネッテとルルリカ。

 二人同時に声を出そうとして、やはり声が出なくて詰まる。


 ネッテが先に声を出せばルルリカは無罪、カインの側室としてマイネフランのモノとなる。

 ルルリカが先に声を出せば有罪。子宮石詰の後、市中引き回しのうえ獄門打ち首……どこの江戸時代?

 そして先に声だだしたのは……


「ええいまどろっこしいっ。さっさと言えルルリカッ! お前は犯罪者となって死んでしまえッ!!」


 検察側で貧乏ゆすりをしていた王子様が切れるように叫びながら立ち上がる。

 机をバンッと両手で叩く彼の姿に、現場は一瞬で沈黙した。

 何でお前が声出してくんの? そんな顔が傍聴席を席巻する。


 なんか、ちょっと……イラッと来ました。

 そうなんだよね。元々こいつがルルリカのこと言わなきゃこんな複雑な状況にならなかったんだよ。うん。そうだよね? こいつが元凶なんだよね?


「っ!? やめなさいエロバ……っ!」


 アカネが咄嗟に叫ぶ。しかしすぐに気付いて思わず口を自分の手で塞いだ。

 えろば? と周囲がざわめく中、停止を促された僕は投げようとしたバグ弾をすっぽ抜けさせてしまう。

 ひょろひょろっと飛んで行くバグ弾はゆっくりと漂いランスの横を通り過ぎていく。

 は、外したっ!?


 が、動いたのは僕だけじゃなかった。

 もともとランスロットに良い感情を抱いていなかったらしい二人の少女もまた、動いていた。

 バグ弾が通り過ぎた後に、ランスロットの顔面へと飛んで行ったのは、カレーライス。

 まだ何か言おうとしていたランスロットを「ほぶっ」と黙らせる。


「とぉっ」


 さらにその後ろから走り込むセーラー少女。

 途中で床を蹴り空中で捻り回転。両足を揃えてランスロットの顔面に張り付いた皿向けてドロップキック。

 ちょ、皆が見てる前で何してんの二人ともっ! 相手王子、王子さんですよ魔物どもっ!?


 見えない顔面に両足直撃。

 吹っ飛ぶランスロット。

 あ、バグ弾の上にランスロットが……


 ふよふよと地面に落下しようとしていたバグ弾を押しつぶすようにランスロットの背中が倒れ込む。

 あーあ。折角避けたのに……ま、いいか。当てる予定だったし。


 そして再び静寂。

 ゆっくりと、ランスロットを黙らせたマリナがバックステップ。

 皿が衝撃で割れてしまい、血塗れのランスロットがマリナを睨む。

 テメェ、魔物、何をしやがった。そんな顔をした次の瞬間、がばりと起き上がったランスロットがマリナに襲いかかった。


 完全に意識を奪ったと思っていたマリナが驚く。そんな彼女にランスロットが飛びかかる。

 乱闘でも始まるのか!? 傍観者の皆が想定外の事態に青い顔をしておろおろとしていた。

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