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その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
第二部 第一話 それが偶然の一致だと彼らは知らない
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その草の効果を彼らは知らない

 件のアルセは対岸の叢で何かを探っているようだった。

 僕らは慎重に警戒しながら川を渡っていく。


「この先はさらに魔物が強力になってるはずよ。人の手も入っていないから未知の生物ばっかり。気をつけてねリエラ」


「は、はい」


 ネッテが注意を促す。

 その顔の険しさからも、彼女にとっても未知の領域なのだと告げているようだった。

 でも、川を渡る間は他の魔物が襲撃を掛けてくることはなかった。

 魔物の方も滅多に見ることのない人間を見て警戒しているのかもしれない。


 アルセは叢の一角に腰を降ろして何かを探している様子。

 何をやっているのかと思えば、不意に一つだけ草を摘む。

 不思議そうに見つめるその手の中にあるのは、四つ葉のクローバー。

 へぇ、こちらにもあるんだね。やっぱり幸運のお守りになるんだろうか?


「ん? アルセ、それ、もしかしてラッキークローバーじゃない?」


「お、すげぇじゃんアルセ。幸運のお守りによく使われるんだぜソレ。しかも見つけづらいし」


 あ、やっぱり幸運のお守りになるんだ。

 ということはかなり希少価値の高い草と見た。

 売ればイイ金額になるんだろうか?


「ラッキークローバーですか。私初めて見ました。凄く高いんですよね?」


「ああ、1000ゴスくらいはするぜ、ただの葉っぱなのにな」


 葉っぱでそれは確かに高い。でもお守りとして一般人に手が出せない程ではなさそうだ。

 なにせ冒険者なら普通に手が出るお金だし。

 リエラでも買えるんじゃないかな。


「しかし、よく見付けたなアルセ。っつか、もしかしてこれを取るためにここに来たのか?」


 それはない。

 思わずツッコむ僕だったけど、誰にも反応されなかった。

 見えないとこういう時空しい。


 アルセはラッキークローバーを目元に持っていきまじまじと観察。

 頭の上に居るスライムモドキがプルプルしているのが何とも言えない。

 というかアルセ、頭の四つ葉は大丈夫なの……かぁっ!?


 喰った!?

 今、何の予備動作も無くラッキークローバーをアルセが喰った!?

 あまりの早業に誰もそれに反応できなかった。

 一瞬遅れ、全員が絶叫を迸らせる。


「ちょ、アルセぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」


「ぶひぁ!?」


「おま、それ喰いもんじゃねぇだろぉぉぉぉぉっ!?」


「私のお守りぃぃぃぃぃっ!?」


 密かに狙っていたらしいリエラの絶叫だけちょっと違ったけど、まぁ気にしない方向で。

 ラッキークローバーをゴクンと飲み込んだアルセはちょっと苦そうに顔をしかめていた。

 いやいや、何してんのアルセさん……

 というか、苦いのか……


 しかし、次の瞬間、僕たちは見た。

 アルセの四つ葉から、ニョキリとさらに二枚の葉っぱが生える光景を。

 増えちゃった!?


 そんな増えた葉っぱがスライムモドキの体内に存在しているという何とも言えない光景。

 吸収はされていないようだけど、ちょっと異常過ぎてついていけません。

 相も変わらずプルプルしているスライムから一枚の葉っぱだけが頭一つ飛び出ている姿は、まさに空色ミカンである。

 成長したせいで葉っぱの部分がスライムの身体より上に来たみたいだ。

 結果、スライムを貫通してしまっています。身体は大丈夫か!?

 というか、そもそもお前はスライムなのか?


「ふ、増えた……どうなってんだ?」


「こ、これを手に入れたかったってことじゃない? 多分」


「新発見だぞ。アルセイデスにラッキークローバー食べさせたら謎の進化を遂げるとか……」


「……そんなバカな」


 最後に口を開いたリエラが虚空に視線を向ける。

 多分僕に向けたかったけど場所がわからなかったらしい。

 僕の方から近づいて肩を叩いてみせると、リエラは一瞬驚いた後、僕に視線を向けた。


「あれ、どうなってんの?」


 さぁ? 僕には分かりませんが?

 当然だけどアルセは魔物なのだ、その行動を僕が分かる訳がない。

 なのでリエラの首を操って傾げさせてみた。


「あなたも知らないの?」


 自分の首を動かされて少し困った様な顔で、リエラが小声で聞いてくる。

 折角なのでリエラの首を二度ほど振って首肯の代わりにしてみた。

 あ、これいいな。リエラの言葉にリエラ自身の身体を使って返答する。

 分かりやすそうだ。


「そっか……アルセって、なんなんだろうね?」


 ホントにね。ただの魔物なはずなんだけどね。

 そして、このラッキークローバー食べちゃった事件の終結により、満足したのかアルセの奇行が収まったようです。

 僕らはアルセをひっつかんで元の川向こうへと戻ることにした。


 カインたちも多分アルセの用事は済んだのだろう。と帰り支度を始める。

 また、あの道を歩いて帰るのか……カインたち大丈夫かな?

 あ、ここで一晩野宿するの?

登場人物紹介


 アルセ

 ・アルセイデスと呼ばれる魔物。

  緑の肌と深緑の髪を持つ少女。

  アンブロシア、ラッキークローバーを食べて、頭の葉っぱが六つ葉になった。

  胸と下半身だけ蔦で隠してる。

  彼女の落とす蔦は10万ゴスの価値がある。城に1億ゴス保管中。

    木の枝装備中。頭にスライムもどきを装備中? 


  種族スキル:マーブルアイヴィ

        光合成

        水属性耐性Lv2


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