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その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
第四話 その二人が結婚することを僕は知りたくもなかった
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その逆転を女は知りたくなかった

 完全勝利。奥の手を出すまでも無かったわね。とアカネは得意げに鼻を鳴らす。

 悔しげに震えるランスロット。

 既にルルリカを断罪すべき証言者は一人もいない。

 一人も、居ないのだ。


 まさか全員ルルリカの罪を問わずに去っていくとは思ってもみなかった。

 同じ被害者という事でよく彼らの状況を調べることなく招いたのはミスである。

 しかし、全員が全員ルルリカを恨むことなく去っていくなど誰が思っただろうか?


 何故こうなった?

 ランスロットは頭を抱える。

 これでは目的が達せられない。


 どうしたらいい?

 どうすればいい?

 悔しげにアカネを睨む。


 アカネはその視線に挑発的な笑みを返した。

 さぁ、次はどう出る?

 そんな笑みにランスロットは拳を握る。


 机に打ち付けようとして、ふと、止まった。

 確かに、証人は役に立たなかった。ルルリカの悪事を証明するには少々難しい。

 ならば、既に確定しているルルリカの悪事を発表するのは、どうだろう?


「そういえばルルリカ。俺に纏わりついていた時、妙に俺に寄ってくる女性が少なくなっていたね。おおかたどちらか・・・・が妨害していたのだろうけれど、君は一人、完全に気付いてないライバルがいたのを知ってたかな?」


 ぞくりと底冷えするようなニヤついた笑み。

 起死回生の一手を思いついたとでもいうような醜悪な笑みを向けられ、ルルリカが怯えたように身を竦ませた。


「そうだったんだ。居たよ、こちらに帰って来ていて唯一まともにルルリカの罪を問える存在が。最後の証人喚問だ。テーテ・フィアステールを証人として喚問する!」


 テーテ・フィアステール?

 誰だソレ? みたいな顔でざわつき出す傍聴者たち。

 ネッテとアカネも顔を見合わせ首を傾げる。

 あかん、完全に予想外の人物だ。下手したら、ルルリカに罪が付きかねない。


「ふふ、よかった。声が掛けられてなかったから私の事忘れているのかと思いましたわランスロットお義兄様」


 しかも傍聴席に居るしっ!?

 すっと立ち上がった御令嬢。地味目のドレスに紫のストレートヘア。カチューシャを填めた彼女は優雅に歩き出し、証人席へと向かう。

 顔立ちはかなり綺麗だ。立てば牡丹云々とかいう言葉がよく似合う……お姉様だ。多分10代後半くらいだろう。


「初めまして皆様。テーテ・フィアステール。フィアステール公爵令嬢でございます。この度はランスお義兄様にご召喚頂き、ここで話をさせていただきます」


 冷酷な視線をルルリカに向けるテーテ嬢。なんか凄いドS系女子って感じがひしひしします。なんだろう、こう、生徒会長やってそうな先輩に思えてきます。

 ヤバい、これはこれで素敵な人だ。付き合って下さ……


「主聖暦3822年5の月33の日が昇る時」


 いきなり意味不明の言葉を吐きだしました。すいません、宗教関係者はお断りしております。


「ランスロットお義兄様はそちらに居るネッテ王女との婚約を破棄致しました。その後ルルリカさんが彼との婚約を蹴りネッテ王女に求婚しました」


 あ、ああ、予言とか電波じゃなくて暦なのね。一応主聖暦とかいう謎暦だけど月日については同じように思っていいのかな。

 となると、主聖暦になって3822年過ぎてるわけだね。んで、あの日が5月33日と……33日!? 日本より日にちが多いっ!?


「るー?」


「え? あー。あのねルクルちゃん。主聖歴って言うのはこの世界を作りし主が定めた聖なる暦という意味で、今日は主聖歴の6の月3の日っていって……」


 ルクルにパルティが告げる。

 うん、パルティさん、ルクル分かってないよ。多分暦の意味自体分かってないと思う。

 ところでパルティさん、一月は何日あるんですかね? あ、その辺りの説明はないんだね。うん。知ってた。僕の声伝わらないの知ってた。


「なんと可哀想なお義兄様。ルルリカさんを心の底から愛したというのに、ルルリカさんはそんなお義兄様の思いを踏みにじり、あろうことか女性同士の恋に向ってしまわれたわ。だから……」


 ニヤリと、冷笑を浮かべてテーテはルルリカを見下ろす。


「我が国の法律に照らし合わせルルリカ・テルテルボールは不子の罪を犯したことをここに明言します」


 なんだその不子? の罪って。

 僕と同じくざわつく傍聴席。どうやら国民も殆ど知らないようだ。

 ソレに気付いた宰相さんが立ち上がる。

 国王が告げる。静粛に。その声を聞いた傍聴席が鎮まる中、第一王子と第二王子が苦虫噛み潰した顔をしていた。

 え? なに、その罪ってマジでヤバい感じ?


「知らぬ者もおるようですな。では私からご説明いた……」


 宰相さんが声を出そうとしたその刹那、テーテさんは彼の声が出るより先に告げていた。


「不子の罪とはすなわち、恋愛又は婚姻において子孫が必要無いと告げる罪にございます。これはこの国の少子化防止のために数年前に作られた、前王様の作られた法律であり、子を作らぬ、あるいは子がいらないと堕胎する等を行った男女を罰する法にございます。男性は局部を切り取り晒し首に、女性は子宮に石を詰め込み晒し首にする罰則だったと記憶しております。罰はもう少し酷かったかもしれませんが」


 罰則がえげつないよ!? しかも結局子供出来なくなるしっ!? 本末転倒な罪の償い方だなっ!?


「つまり、女性同士の恋愛を選んだルルリカ・テルテルボールは子供が必要無いと宣言したも同じこと。よって不子の罪により有罪となることをここに宣言致しますわ」


 このテーテさんが何者かは知らないけれど、これ、逆転されてピンチになってません?

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