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その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
第四話 その二人が結婚することを僕は知りたくもなかった
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その証人達の身勝手を王子は知りたくなかった

「つ、次、次だ!」


 あまりにも衝撃的な三文芝居を見せられた傍聴席の方々に、叫ぶようにランスロットが告げる。

 なんか、可哀想になってきたなぁ。

 えーっと次に証人として現れたのは、また二人の男女だ。


 ただし、今度は女性はボーイッシュのオレンジヘアで、似合わないドレスを着ている。

 どっかの御令嬢みたいなんだけど、なぜか両手に嵌っているのは手枷。

 俯いた顔は暗く、全てを諦めきったような濁った眼をしていた。


 これは、完全に潰された御令嬢登場だ。嵌められて罪人エンド入っちゃいましたか?

 ルルリカへの恨みとか、きっとハンパないんだろうなぁ。

 それに……対応するような貴族の男はイケメン様だ。何故か半裸に包帯を巻き付ける出で立ちをしているが、多分傷を皆に見せるために上半身の服をはだけているのだろう。

 胸元には痛々しく見えるように包帯ぐるぐる巻きです。


「初めまして皆さん。ファーストネームの方は伏せますが、僕はカルロス。そちらに居らっしゃるマリアネットと婚約を結んでいたモノです」


 ふかぶかとお辞儀をするカルロス。随分と物腰が柔らかなイケメン様だ、爆死すればよかったのに。


「僕はマリアネットを愛していました。結婚も秒読み。そんな時に現れたのが、そこに居るルルリカでした。彼女は言葉巧みに僕に声を掛けて来て、気が付いたら彼女とデートをしていました。本当に、夢のような時間でした。思考に霞が掛かったように、彼女の笑顔が自分の幸せだと、思ってしまったのです。今思うと、随分と不自然だったように思います。まるで魅了魔法にかかっていたような……」


「茶番ね」


 ぼそり、カルロスがルルリカ断罪の話を告げていると、それをばっさりと切り裂くように冷めた声でマリアネットが呟く。


「マリアネット? き、君だってルルリカのせいで僕を刺したじゃないか! 死刑になるところを僕が温情で救ったんだぞ!?」


「温情? 無期懲役が? おかしな話ねカルロス」


 すっと顔を上げるマリアネット。その瞳がルルリカを見る。

 先ほどとは全く違う。強い意志を持つ不屈の瞳が真っ直ぐにルルリカを見ていた。


「無様ねルルリカ。まるで私みたい。恋する乙女なんて可愛いモノじゃなかった。私はこんな存在だから、女性として見られることは殆ど無くてね。甘い声を掛けてきたカルロスにコロッと騙されたわ。婚約者となって浮かれて似合わないドレスを買って。見て、皮肉なことにその時買ったドレスしか、こういう場所で着れる物がなかったのよ。似合わないでしょ?」


 長身で男っぽい彼女には確かに似合わない。ちょっと無理して女装した男性とも思えなくもない。顔は結構綺麗な感じなのに、身体やドレスと合わせるとなぜかちぐはぐな印象を受けてしまう。


「確かに、貴方とカルロスがいた時は悔しくて、柄にもなく嫉妬して、カルロスを刺したわ。本当、バカなことをしたものね。こんな男・・・・に人生を捧げるなんて」


「ま、マリアネット?」


「ずっと牢屋に居てね。気付いたのよカルロス。あなたは私を救ったんじゃない。私を殺す事が怖くて、でも二度と顔を見たくなかった。だから、無期限の罪にしたのよ。殺したことで不貞した罪に苛まれるのではなく、無罪にしてまた私と婚約を結ぶのでもなく、二度と私に遭わずに罪の意識にも苛まれない方法を選んだ。だってそうでしょう? 牢屋暮らしになってからずっと、あなたは私に面会すら来ないのだから」


 あー、うん。それ完全アウトだね。


「牢番の兵士から聞いたわ。婚約者、出来たそうね。新しい、私より可愛い子」


「な、そ、それはだねマリアネット……」


「私は人生を間違えてわ。あの時刺すのではなく貴方の頬を張ってれば、普通の生活が出来ていたもの。だから、私はルルリカに恨みはないわ。だって彼女は好きな相手が自分に振り向くように可愛らしく魅せていただけなのだから。それは、努力する私と変わらない。悔しいのは私が可愛くなかった。それだけのことだから」


 だから。と再びルルリカに視線を向ける。


「無実を願っているわルルリカ。でももし、犯罪者にされてしまうなら、明日からは隣同士よ。仲良くしましょうね」


 ふわりと不敵な笑みを浮かべ、マリアネットさんは去っていく。

 他の誰もが止めようとする中、既に用事は終わったと、彼女は一人牢へと去っていくのだった。

 やっべ、男らし過ぎるぞマリアネットさん。王様の目の前でマイペースに帰るとか、ヤバ過ぎる。

 数人の女性が待っていてくださいお姉様、必ずお救いします。とか叫んでたよ。これはもう弾劾パターン入りました。アンサー王子とパーシハル王子も真剣な顔で顔を見合わせていることから近いうち出て来るな、あのお姉様。


「あー、えっと、マリアネットは恨んでないみたいですが僕は……あ、やっぱいいです」


 何かを言おうとして、カルロスは気付いた。

 これ以上は、自分は望まれていない。

 周囲の傍観者は男らしく去って行ったマリアネットに感化されたようにカルロスに冷ややかな視線を送っていたのだから。


 すごすごと帰って行くカルロス。

 おいランスロットさんよ。今のところルルリカの罪っぽいこと全然ないんだけど?

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