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その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
第四話 その二人が結婚することを僕は知りたくもなかった
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その婚約破棄の罪を国王は知りたくなかった

「ルルリカさんは逃走時、崖に向って逃げました。それをネッテ王女が追った。彼女から逃げるのに夢中だったルルリカさんは、崖から足を踏み出したのです」


 すっとルルリカに視線を向けるアカネ。

 うっと呻くルルリカ。威圧されたみたいだ。

 これから私が告げることには一切口答えするなよ。そんな意味が込められた視線に、思わずルルリカはこくこくと首を振る。


「これを救ったのはネッテ王女。彼女を引き上げる代わりに自身が谷底へ落ちて行きました」


 この言葉にざわつき出す傍聴席。

 ランスロット王子が告げる王族侮辱罪よりも重い罪犯してない? なんて言ってますが、ハイ。事実です。

 ルルリカさんは今、王族暗殺未遂の罪を持ってます。


 この罪状が告げられれば問答無用で絞首刑確定でしょう。

 でも、とアカネさんが国王に視線を向けた。


「ネッテ王女は勇者カインにより救出され、二人は無事に私達と合流しました。そこで、彼、ランスロット王子は助けられたルルリカさんを連れ、命を救われ皆から声をかけられるネッテ王女に告げます。もう我慢の限界だ。お前は、危うくルルリカを殺すところだったんだぞ。と」


 ざわり。傍聴席が揺れた。

 これが本当の事であれば大問題だ。

 婚約者であるネッテ王女の安否を気遣おうともしないばかりか、惚れた相手である一般女性が死にかけたのがネッテのせいだとでも言うように激怒したわけだ。

 つまり、ネッテ王女の生死などどうでもよかったとでも言っているように聞こえる。


「せ、静粛に、静粛にっ!」


 唖然として口を開いたまま固まっている国王様に代わり、直ぐ横に居た第一王子が民衆をなだめる。

 第一王子はイケメンだ。もはや非の打ちどころの無いイケメン様なのだ。

 頭はいい、運動もできる。顔も良い。そして女性に優しい熱血漢。もう、なんか絵にかいたように真面目で性格イケメンの漫画にしか出て来そうにない才色兼備の王子様だ。さすがのルルリカも彼に言い寄るのは諦めたようだ。逆に手玉に取られそうだったのでアレには手を出せませんでした。とか本人の目の前で先日告げてたよ。王子様はにこにことして僕らのやりとりを観察してたけど。


 えー、この際なので告白します。僕らは一度、この王子様と会っているです。今回の裁判でいろいろと聞きたい事もあったのでネッテが会談の場を急遽設けさせて貰ったのだ。

 第一王子と第二王子を招いた会談は、なんか結構楽しく終わった。リエラが第二王子に声を掛けられていたけど、丁重にお断り願いました。ついでにパルティさんにまで声を掛けようとしてたから足引っ掛けてやりました。

 あんな綺麗な奥さん居るのに……爆死しろ軽薄第二王子!


 ナンパ師みたいな髪の長い優男風第二王子に呪詛を送っておく。アレ以上近づいて来るならバグ弾打ち込もうかと思ったんだけど、奥さんが蟀谷こめかみに血管浮かせながら耳を引っ張って行きました。どっかの国の王女様らしいけど、結構じゃじゃ馬さんらしい。

 尻に引くタイプなんだそうで、第一王子が笑いながら教えてくれた。


 まぁ、そんな感じで、あの二人は実はこちらサイドの存在だ。

 なので今回の話も既に聞いていたので驚きはない。

 王様が呆然としているので司会進行を第一王子が引き受けるらしい。


「ランス、今の話、本当かい?」


 弟に話しかける兄の声はとても優しい。出来る兄さん持って辛くないかいランスさん?


「う、それは……あ、兄上、その……」


 国王陛下に話すよりも随分と慌てた様子のランスロット。

 兄が相手になった瞬間物凄く狼狽し始める。


「ランス? ちゃんと言ってくれないと分からないよ?」


「で、ですから、それは、あの……」


 どうもランスロットはお兄様が苦手らしい。

 あ、ちなみにこの第一王子がアンサー。

 第二王子はパーシハルというらしい。

 なんかちょっと、オシイ?


「アカネさんだっけ? 中断してすまない。続きを」


 ランスロットから声が返ってこないため、仕方なくアンサーがアカネに続きを促した。


「はい。皆が驚く中、彼はさらに告げました。今までのルルリカへの嗜虐行為、あまりにも目に余る。ネッテ・ルン・マイネフラン。お前との婚姻、破棄させて貰う。……この言葉から、この時まではランスロット王子はルルリカさんの好意を罪だとは認めていらっしゃいませんでした。つまり、この時までルルリカさんの罪はなかったと言っていいでしょう。最初にあったルルリカさんから言い寄ってきたという王族侮辱罪は無罪であることを証明しておきます」


「そうだね。その話を聞くと、今のところ彼女に罪はない。いや、ネッテ王女に対しては暗殺未遂の疑惑があるけれど、どうかなネッテ王女?」


「不問ですわアンサー王子。私はルルリカが罪を犯しているとは思っておりません。こうして私が生きているのが証拠でしょう? 事故は起きましたが彼女に罪はないでしょう」


 ネッテの言葉に頷くアンサー。つまり、現時点までに置いてルルリカに罪はない。

 それを聞いたランスロットがぐぅっと呻く。

 その顔が少し赤いのは羞恥? それとも誰かへの怒り?

 あ、ルクル、今はカレー食べちゃダメなんだって。確かに美味しそうだし食べたいけど、ほら、他の傍聴者の注目集めてるから、匂いが辺りに充満してるからっ。凄くカレーに全員の視線が向ってるからっ。近くに居るおっさん涎垂れてるからっ。しまってぇ!!

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