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その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
第二部 第一話 それが偶然の一致だと彼らは知らない
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その生物の硬さを彼らは知らなかった

 結局、スライムモドキはアルセの頭に乗せられ捕獲? されてしまったようだ。

 笑顔のアルセは御満悦だ。

 ……と思いきや、またも単独行動を始める。


 何をする気かと思ったら、川に入ってそのまま真っ直ぐ川を突っ切る。

 本当に自由奔放だねアルセさん。

 団体行動を心がけてください。


 慌ててアルセを追おうとしたけれど、運悪くカインたちの前に出現した鰐のような二足歩行の魔物のせいでアルセを追えなくなっていた。

 うん、なんだこいつ。ちょっと恐い。

 夜だから眼がギラギラ輝いている。


 どうしたものかと思ったが、アルセは魔物、魔物同士であるこの周辺で戦いになることはないと思う。

 初見の相手だし、リエラが心配なので僕も一応こっちにいる事にした。

 鰐人間とでもいえばいいのだろうか? 銛を手にしたそいつはカイン達を見るなり戦闘態勢に入る。


 いきなり戦う気か。

 まぁ、目の前に見知らぬ生物が現れたらそれは警戒しますよね。

 さすがに唐突という訳ではなかったのでカインたちも戦闘準備は万全だ。


「マジかよ!? この人数差でやる気か!?」


「カイン、バズ・オーク、魔法を唱えるから防壁よろしく。リエラは他の敵が来ないか警戒して!」


「は、はいっ!」


 リエラはこんな場所に来ること自体が初めてなので鰐人間を見て恐怖していた。

 しかし、ネッテの言葉にはっとしたように動き出す。

 アルセソードを引き抜き震える両手で構えると、周囲を忙しなく見始める。

 うん、ド素人丸出しだね。


 僕も多分普通に闘うことになってたらリエラみたいになってただろう。

 でも、僕は相手に見えない存在だからさ。全然恐くなかったりするんだよ。

 鰐人間珍しいくらいにしか思えない。


「ガァッ!」


 吼えるように銛を突き出す鰐人間。

 カインはこれを予備の剣で受け止める。

 どうやらメインで使っていた剣はスマッシュクラッシャーのハンマーで完全に砕けたようだ。

 身体は回復できても武器までは無理か。まぁそうだよね?


 冒険を行うために武器屋で粗末な剣を大量購入していく冒険者とか何度か見たけど、その理由がわかった気がする。

 ただ、やっぱり手慣れた剣ではないせいだろう。鉄の剣のためか多少扱い辛そうにしている。

 今までより幾分落ちる剣の様だ。


 そしてバズ・オークは肉弾戦である。

 彼の武器も破壊されているので側面から近づいて思い切り殴りつけている。

 予備の武器、持ってないからなぁ。手甲が地味に活躍中だ。


 しかし、相手は鰐人間。

 鰐皮によって拳の方が傷ついているようだ。

 ってバズ・オークさん。手甲してない方で殴ったんかい!?

 あ、そっか。硬い鱗を手甲で殴って手甲まで壊すと後々に響くもんね。防御としても使えるから残してるんですか。そうですか。

 ……一瞬バカじゃないかなって思ってごめんなさい。


「マジかよ!? コイツどんだけやりづらいんだ!」


「ブヒァッ!」


 バズ・オークが同意するように鼻を鳴らす。


「バズ・オーク、あいつの銛、奪えるなら奪っちまえ!」


 カインの言葉に同意を示し、殴るのをやめたバズ・オークが銛を奪いに向う。

 銛で牽制しようとする鰐人間だったけど、カインが上手くフォローして銛を掴ませる。


「ガァッ!」


「ブヒッ!」


 鰐人間と豚人間の銛奪い合いというよく分からない闘争が始まった。

 地面に倒れて二転三転、上になったり下になったりと忙しない。

 僕は適当な石を拾って鰐人間の目元に向って、投げる。

 長く続きそうだったのでフォローする事にした。

 だって、もうネッテが魔法唱え終わって放とうとしながらバズ・オークが邪魔で戸惑っていたし、あまり時間を掛けると他の敵きそうだし。


 石が目に当ったせいだろう。

 鰐人間が呻きを洩らして力を緩ませる。

 そのおかげでバズ・オークが銛を奪い取って転がり逃げた。


「コ・ルラ!」


 氷の魔法が鰐人間を穿つ。

 やったか。とばかりに息を飲んでいると、目に見えて動きを鈍らせる鰐人間。どうやら爬虫類らしく温度変化に弱いらしい。

 けど、やはり身体が堅いのはどうにもならないらしい。

 カインの攻撃が効いている気がしない。


 バズ・オークは奪った銛を巧みに使って鰐人間の目を貫く。

 悲鳴が上がった。

 やはり剣より突きに特化した銛の方がこいつには効果があるようだ。


 最後には大きく開かれた鰐人間の口に銛を突き入れトドメを刺した。

 どうやら口の中が弱点らしい。

 まぁ、弱点と呼べる弱点じゃないけれど。 


「な、なんとかなったが、こりゃ集団で襲われたら無理だな……」


「相当危険な生物ね。ギルドの方に報告しておきましょう。この辺りの生態はまだ余り解明されてなかったはずよ。魔物情報だけでもお金がもらえるわ」


 魔物……というよりは魔人って感じだったよ?

 魔族の知識ある生物なんじゃないかな?

 バズ・オークみたいに話しかけてみたら意外と通じたかもしれない。

 今度アルセで試してみるのもいいかな?


「そういえば、アルセはどこに?」


 ふと、リエラが思い出したように呟き周囲を探る。

 件のアルセは……既に対岸に渡っていた。

 速いよっ!?

 鰐人間

  川から出て来た二足歩行の鰐。銛を持つ程度には知能がある様子。

  鱗が硬い。

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