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その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
第四話 その二人が結婚することを僕は知りたくもなかった
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その裁判の始まりを僕は知りたくなかった

裁判始まりました。

裁判内容? 適当です。

実際の裁判は見たこと無いので、ほぼ逆裁の知識。憑依やらなにやらはありませんが多分デタラメだと思います。

 その日、コイントス城のとある一室を貸し切りにして、その裁判が始まろうとしていた。

 僕は傍聴席に座ったリエラの背後に立って部屋を見た。

 どう見てもこれ……裁判所だよね?


 真ん中に裁判長の座る長い席が縦に二列、左右には検事側と弁護士側の座席があり、その正面や周囲を取り囲むように傍聴席。

 僕がいるのは弁護士側の背後で、丁度ネッテとルルリカ、あとなぜかアカネの後ろ姿が見える場所だ。

 弁護人としてネッテ、そしてアカネが参加しているのである。

 リエラの隣に座ったカインが疲れた顔をしながらも、肩の荷が下りた視線でふぁっと欠伸をかます。

 カイン、リエラ、アルセといった感じに順々に座っている僕らは弁護側の傍聴席を結構斡旋させてもらっている。

 人数多いしね。


 検事側には宰相のおっさんとにっくき第三王子ランスロット。

 彼はホント諦め悪いよね。掌返すの速いし。

 裁判長席に座るのは王様。

 その両隣りには第一王子と第二王子。

 この辺りは日本の裁判とはちょっと違うかな。

 木槌もないし。


「それではこれより、ルルリカ・テルテルボールの裁判を始める。以降、ルルリカと呼ばせて貰うが、ルルリカよ、中央の台のもとへ。指摘者ランスロット=ドゥア=コイントス、彼女の罪状を述べよ」


「ええ、父上」


 ルルリカが王の御前へと向かう。

 台座の背後に立ち、前を見れば、丁度見上げた位置に国王陛下のお顔がこんにちわ。という状況だ。

 余程の悪人でもない限りこの状況では完全に思考を麻痺させる。

 さすがのルルリカも硬直しているようだった。


 そして、立ちあがったランスロットにより、彼女の王族侮辱罪という罪が告げられた。

 確かに、ランスロットに声を掛け、彼の恋心を奪い、見事に振ったのは侮辱罪に当るだろう。

 多分、それだけだったら即死刑で問題無いと思う。僕も反論できません。


 ただし、そこにネッテ王女との婚約破棄を絡めたり、カインと婚約してしまったネッテの行動がルルリカのせいだとのたまったり、この際だから他の不幸な出来事もルルリカのせいにしようとか、最悪すぎます。

 盛り過ぎたランスロットの罪報告に、傍聴に来た一般人からざわつきが漏れる。

 ああ、戸惑ってる。皆戸惑ってるよ。王様も頭抱えてる。

 気付いてランスさん、鼻高々に胸張ってる場合じゃないよ。今の説明人々から悪意を向けられる悪手だから。


「ルルリカよ、ランスロットはこう言っているが、これは事実か?」


「ふぇっ!? え? ええと……」


「国王陛下、折角弁護に私たちがいるのです、彼女に問わずこちらに質問をくださいませんか? 彼女への質問はお控えください。私達が口となります」


 国王相手にづけづけと告げるアカネさん。元異世界人なだけあって裁判を知る彼女は被告人の証言が一番危険なのを良く知っている。

 弁護しようにも被告が認めてしまえば何も出来なくなるのが弁護士だ。

 ゆえに、裁判では被告が喋ることは殆ど無い。


 罪を認める場合と詳しい説明が必要な時に説明するくらいだろう。

 他は全て弁護人に任せてしまった方がいいのだ、弁護人が本気で被告を助けようとしているのならばなおさらに。


「よかろう。では問おう。今の証言に、相違はないか?」


「異議あり。相違だらけだと証言いたしますわ」


 ニタリと、アカネが立ち上がり告げる。異議申し立ての際に指を前に突きつけるのはやめなさい。弁護士だからってそれやる必要無いからね。

 弁護人席から立ち上がると、ゆっくりと歩きながらルルリカの前へとやってくる。

 そこを通り過ぎたり戻ったり。勿体ぶりながら歩きまわる。

 うん、アレだね。昼ドラとか見ててやってみたかったんだね。なんとか畑さんのモノマネとかしてる場合じゃないよ。あの人検事側だからね。


「まず、王族侮辱罪という罪についてですが、国王陛下、この国ではどのような事が罪に当るのでしょうか?」


「ん? それは王族を侮辱したものが……」


「まずはそこです。王族の侮辱。つまり王族がソレは侮辱だといえばなんであれ侮辱と取られてしまいます。では、ルルリカさんが何を行ったか順に明らかにしていきましょう」


 ぽんとルルリカの前に在る台に手を置いてアカネさんは不敵な笑みをランスロットに向けた。

 ほんと、楽しそうだねアカネさん。って、ちょっと、チグサがそわそわしてる。自分もやりたいって感じの顔してるっ。この人も裁判モノ好きなのか。


「ネックになるのは王族侮辱罪に相当する罪があるかどうか。ルルリカはランスロット王子に声を掛け、恋仲になろうとした。成る程、確かに打算有です。王族に一般女性が声をかけるのですから。ですが、恋する乙女が惚れた相手に声を掛けることは罪なのでしょうか? 宰相様はいかがです?」


「わ、私か!? う、うむ……」 


「例えば、あなた好みのメイドが新人としてやって来て、一目惚れしました。と告げました。彼女は貴族侮辱罪に当りますか? 国王陛下は? いかがでしょう?」


 アカネによる論破が始まった。男として、これが罪だと頷く訳にはいかないだろう。

 さぁ、どうするディマルト国王。 

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