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その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
第三話 その少女の結末を僕は知らない
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SS・その宝箱談義を僕は知らない

 宝箱というのは魅惑の箱だ。

 ただ、箱という訳じゃない。

 ダンジョン内にぽつんと存在する妖しい箱なのだ。


 しかし、冒険者は躊躇い無く開ける。

 なぜならばソコに夢が詰まっているからだ。

 何も存在しない箱は殆ど無い。

 宝箱は空けてしばらくすると再び内部に何かしらの宝を有し、新たな開放者を待っているのだから。


 存在自体が謎の宝箱。

 ダンジョン内に住む妖精が宝を設置しているとか、ダンジョンは生き物であり、冒険者を誘いこむために宝箱に宝を生成しているのだとか、変な爺さんが宝箱に宝を入れているのを見ただとか、都市伝説的な物は沢山ある。

 でも、ホントのところどうなんだ? ってところは確かにあるのだ。


「私、ルティシャ・エナ・カーディナルはその秘密を、ついに掴んだの!」


 興奮しながら叫ぶのは、赤き太陽の絆の一人、ルティシャである。

 ネフティアはどうでもいいとワンバーカイザーのパン部分をつつきながらベットの上に寝転び足をパタパタとしている。

 ここは大人数パーティー用の大部屋である。

 セルヴァティア王国に急造でクーフ監修のもと立てられた宿屋なのだが、無駄に造りが凝っている。

 木造の部屋に無数のベッド。


 のじゃ姫がワンバーカイザーをひしと抱きしめ座り込み、それをベッドの上でネフティアがつつく。

 幼女二人に囲まれるワンバーカイザーを血涙流す勢いで悔しげに睨むロリコーン侯爵。

 さすがに初老の男が割り込むことは出来ないとにっくんと何故か召喚されたままの殿中でござると共に二人の幼女を見守っていた。


 赤き太陽の絆メンバーは思い思いにくつろいでいる。

 宿屋でルティシャの宝箱談義はいつもの事らしい。

 姿を見せることになったアディッシュは鎧を脱ぎ捨て鍛え上げられた四肢を自分で揉んでいる。

 やはり鎧を着ると全身が疲れるらしい。

 気を利かせたクラリッサが彼女にマッサージを提案して頷くアディッシュをベットに寝そべらせその背中をマッサージし始めていた。

 宝箱談義に聞き飽きたので他の事をしたかったようだ。


 アディッシュが鎧を着ている最大の理由は、どうも対人コミュニケーションが苦手らしい。

 喋るなどという高尚なもの、私には出来ない。という理由で鎧を着込んでいたそうだ。

 コミュ障を極めた女。それがアディッシュという女性を表現する的確な説明であった。


「カレンツァ洞窟の宝箱は自動復帰システムが付いてるんですよ! しばらく隠れて見てたんですけど、なんと突然上蓋が閉じたと思って開けたら、空だった宝箱に1000ゴスが!」


 プラスタットとヒックスはカッタニア、プラム、サヤコと共にガールズトーク。

 途中で引き入れたイーニスにアレンとの話を事細かく聞いては笑っている。


 ヒックスはアリアドネと共に正座してルティシャの話を真面目に聞いている。

 話をしっかりと聞くのがアリアドネの真面目なところ、ヒックスは逃げ出すタイミングを見失っただけらしい。


「アーヴァン山脈の宝箱はハーピーとガンダルヴァがどこからか手に入れてきたアイテムを詰め込んでいるわ。多分一匹一匹担当の宝箱があるんでしょうね。良いわよね、自分専用宝箱。想像しただけでもう、幸福っ」


 アレンとモーネットはチェス盤を引っ張り出して対戦中だ。

 クーフが千年前に作って柩に納めていたのを貰ったらしい。

 暇つぶしに使ってくれ。と駒の説明などをして貸してくれたのだ。


「いいなモーネット、これで俺が勝ったらその胸揉ませろよ」


「あなたも覚悟してくださいアレン。私が勝てば荷物持ちですよ。ふふ。久しぶりにマイネフランで散財しそうですね。皆の装備一式と回復薬を箱で欲しいし、後は……」


「俺を殺したいのかお前は……」


 アレンは女性との勝負事はほぼ確実に相手の胸を揉むという条件で勝負する。

 なので女性は自分が勝てる戦場でなければまず受けない。

 今回は初めてのチェスなのでアレンも勝てると踏んだのだが、モーネットは既にチェスの特性を把握しているらしく、次々とアレンの駒を盤上から消して行く。


「それでね、木製宝箱と木製型ミミックの見分け方は留め金の部分なのよね。普通の木箱は留め金外したら上蓋取れるでしょ? でもミミックの場合は留め金に見せてるだけの肉体だから、ネジが回らないのよ。だから素人でも木製宝箱のミミックを見分ける時には背後に回って留め具を回してみればいいのよ。宝箱開きさえしなければ襲って来ないから、見分けるだけなら楽勝よ」


 ルティシャの話は終わらない。

 ネフティアはふっと思考を現実から逃避させる。

 エンリカに連れて行かれたプリカがどうなったのか、折檻部屋という名前のダンジョンに幽閉されたらしいのだが、そこで人格を変える程の地獄が待ちうけているらしい。

 安全になるのか、さらに壊れた存在になるのか、まぁ、今自分が考えるだけ無駄だな。とネフティアはふっと息を吐きだし、ワンバーカイザーをつついて遊ぶのだった。

明日から主人公視点に戻ります。

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