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その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
第三話 その少女の結末を僕は知らない
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その紳士の覚醒を僕は知らない

 男達は闘った。本気で、相手を潰しにかかった。

 結果を言えば……その有利は唐突に終わりを告げた。

 切っ掛けはといえば、アルベルトの水晶剣が終わったことだ。

 最後の一振りを叩きこんだアルベルトが柩に向うために一時戦線離脱。


 その瞬間を待っていたように襲いかかるプリカ。

 そこへ妖精の輪によるトラップ発動。

 地味にアニアが手伝ってくれたようだが、それがマズかった。


 唐突な敵意にプリカが反応してしまったのだ。

 丁度のじゃ姫の頭の上にいたアニア向け、野獣が一直線に地を蹴った。


「ふぉっ!?」


「オルァ!?」


「やべぇっ!!」


 三人の男達が慌てて走る。

 それより先に近づいたプリカは、彼女を守るように展開していた殿中でござるを薙ぎ散らす。

 無礼でおじゃる達が蹴鞠を蹴るが、その悉くを弾き飛ばし、喉元に喰らい付くと同時にもう一体の顔面を掴み跳躍。

 のじゃ姫の前へと易々到着してしまった。

 あまりの凶悪な姿に震えるのじゃ姫、ソレを守るように必死に前に出てきたガルーが怯えながらもファイティングポーズをとる。


 邪魔っとばかりに手に掴んだ無礼でおじゃるをぶん投げ、ガルーを打ち払う。

 のじゃ姫の懐刀の一撃。それを軽々避けるプリカは、左腕を振り上げた。

 怯えた様子ののじゃ姫も思わずプリカの左腕を見上げる。

 振るわれた凶刃が彼女を切り裂くその刹那。


「忍ッ」


 さっと間に入った何者かが忍刀でプリカの腕を受け止め、背後ののじゃ姫を守る。

 サヤコのように黒い忍装束を着たその魔物、影からニンニンは続くプリカの一撃を見てのじゃ姫を抱き上げた。

 諸共に薙ぎ散らすプリカ。しかし影からニンニンとのじゃ姫の姿が、切り裂いた途端に霞のように消え去った。


「忍ッ」


 分身でござる。とでもいうようにネフティアの背後に現れた影からニンニンとのじゃ姫。

 のじゃ姫の安全を確保した影からニンニンがシュタッと消える。

 どうやらのじゃ姫を影から守っていたらしい。

 呆然としたままののじゃ姫を残し、彼は再び闇に消えた。


 獲物を見失ったプリカはまだのじゃ姫を見付けていなかった。

 周囲を見回し、ようやく見つけた時には、三人の男たちが迫りくる。

 だが、先程とは少し違った。


 三人の行動パターンを覚え始めたプリカはその連撃を悉く避け始めたのだ。

 少しだけ見せた隙のせいでプリカが学習してしまったらしい。

 華麗な水晶剣の一撃も、全裸の刺突も、魔王の拳すらも、悉く避け始めるプリカ。

 やがて……


「嘘だろ!?」


 驚くアルベルトの顔面には、プリカの開かれた掌があった。

 がしりと掴まれたアルベルトが悲鳴を上げる。

 放せ。とばかりに走る辰真。

 拳を突き出した瞬間、その腹にプリカの蹴りを喰らう。

 ぐっと呻く彼へとアルベルトが飛んできた。


 合間に突き出された変態紳士の攻撃を手で掴み、ステッキを引いて肘の一撃。

 顔面に喰らったロリコーン紳士の顔が血塗れになる。

 アルベルトを人間凶器として使用され、共に吹き飛ばされた辰真が被りを振るう。


「すまん、無事か?」


「ッルァ」


 大丈夫だ。そういいながら立ち上がる。

 二人の男が体勢を整えた頃には、血達磨のようにボコボコにされたロリコーン紳士がアイアンクローを喰らって空中に吊り上げられていた。


「マジかよ……」


「オルァ……」


 戦慄する魔王と勇者。

 敗北したロリコーン紳士がぺいっとネフティアの足元へと投げ捨てられる。

 のじゃ姫の悲痛な声。

 やはり、無理なのじゃ……そんな絶望じみた声を聞き、まだ負けられないと、変態紳士は動き出す。


 既に致死量のダメージを喰らっていたが、それでも必死に身体を起こす。

 前のめりに倒れた彼が目を向けると、涙目の幼女が自分を見ていた。

 まただ。また泣かせてしまった。守るべき幼女が苦悶で顔を歪ませている。

 何と無力か。何と歯がゆいか。

 強くなれたと思っていた。自分ならば幼女全てを守れるのだと勘違いしていた。

 ロリコーン紳士は涙に濡れる。


 守りたい。幼女を守りたい。

 力足らずの自分が恨めしい。

 動かぬ身体があまりに憎い。

 ああ、神よ。ロリコーン神よ。なぜ、幼女にかような苦難を与えるのか……


 そんな涙に歪む視界に、のじゃ姫の姿を塞ぐように現れる青白い足。

 はっとしてロリコーン紳士は顔を上げた。

 ゴシックロリータのドレスが見える。

 暗闇に隠れたデルタスポットが見えそうで見えない。

 違う、視たいけれど今はそういう場合ではない。


 しゃがみ込んできたネフティアが、優しくロリコーン紳士の顔を両手で掴む。

 何も言わないが、良く頑張った。そんな顔をしていた。

 歪む視界一杯に映るネフティアの顔が頭上にずれる。

 その刹那、チュッと額に何かが触れた。

 疲れなど、悔しさなど、憎しみなど、一瞬で吹き飛ぶ衝撃的な感触。


 後は任せて。

 そう告げて立ち上がった幼女は手に持っていた武具を起動する。

 滲む視界の中、ネフティアが再び闘いに参戦していった。


 今、何をした?

 ドクン。身体が熱い。

 幼女が、何をした?

 心音が、まるで身体全体に響くようだった。

 幼女が、私に、なにをしたぁぁぁぁぁっ!!?


「フオオオオオオオオオオッ!? FUOooooooooooooooooo――――ッ!!」


 刹那、ロリコーン紳士の身体が光に包まれた。

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