その無双生物が強過ぎることを僕は知らない
「その動きを、待ってました!」
モーネットの札が飛ぶ。
プリカに当るその刹那、プリカは弓を引き抜き柄で札を叩き落とす。
その背後に迫るサヤコ。
忍刀の一撃を空中を蹴ったプリカが躱し、避けた先に攻撃仕掛けたプラムに逆に喰らい付くように襲いかかった。
「プラムっ!」
「ひっ!?」
攻撃したプラムの一撃を腕で弾き飛ばし、その顔面へと拳を叩きこむ。
咄嗟にファイアブレスを吐きだすが、意に介せずプリカの一撃がプラムに叩き込まれた。
呻くプラムを掴み取って投げ飛ばす。
次矢を番えていたカッタニアを巻き込みプラムが木に激突、そのまま二人とも意識を刈り取られた。
「強い!?」
「なんだよこのチート生物はっ!?」
悪態付きながらアレンとモーネットが参戦。
さらにクラリッサとアリアドネが迎撃する。
「はっ、すげぇや。数千年の時を経てあの高慢ちきエルフどもは随分凶暴になったんだな!」
叫びつつ一番先に攻撃を届かせたのはアルベルト。
水晶剣がプリカに当るその刹那、プリカは転がるように脱して水晶剣へとワンバーカイザーを投げつける。
「なっ!?」
驚きつつも既に切り裂くモーションに入っていた水晶剣。飛んできたワンバーカイザーを二つに切り裂きその命を終えていた。
「くそっ!!」
「輝く私」
反撃とばかりに飛びかかってきたプリカ。そのアイアンクローがアルベルトを捉えるその刹那、割り込んだアニアが自身を発光させた。
不意の一撃にアルベルトを巻き込み目を潰されたプリカが悶絶する。
「今ですッ!」
モーネットの符術が飛ぶ。
プリカに張りつく一瞬前、プリカが身を翻して飛び退いた。
四足で一気に距離を取った彼女は、再生したワンバーカイザーのバーガー部分を咥え取り、ずざざと地面を滑走して止まる。
まさに野生の犬か狼が獲物を咥えながら敵と闘っているようだった。
「この人数でも苦戦か!?」
「素早いからむしろ多人数の方が不利なのです!」
しかも、戦闘音を聞き付けたデ・ブゥが二体現れる。
運が悪いというべきか、悪態付くアレンがそちらに意識を向けるより先に、爆音が轟いた。
ギュイイイイイイイイイッと回転を始める最強の工具が振るわれる。
たわむ肉の塊が悲鳴を上げた。
斬撃を吸収するはずの肉は回転する刃に巻き込まれデ・ブゥの壮絶な断末魔が響き渡る。
そのバックサウンドを聞きながら、プリカが再び復活したワンバーカイザーを食い散らかして投げ捨てる。
相変わらず聞こえる腹の音。
プリカは未だに腹が減っているらしい。
まさに底無しの胃袋。ワンバーカイザーを喰らいまくっていたせいで毎日のように腹を空かせるバケモノへと成長してしまったらしい。
そんな化け物へ、再び武器を構えるアルベルト。
「ふぅ、久々だ。魔王と対峙した時以来だぜ、ここまで絶望的な闘いは、初めてこの剣を使った時と魔王戦くらいしかないと思ってたんだがな……」
戦慄の面持ちで水晶剣を構えるアルベルト。
さらにじりと距離を詰めるアリアドネとクラリッサ。
プリカが再び身をかがめて飛びかかるその刹那、背後に回っていたイーニスとエンリカの体当たりがプリカに襲いかかった。
今回の一撃は予想外だったらしい。避けることすらできないプリカが押しだされ、そこへクラリッサとアリアドネが武器振る。
プリカの身体にクロスするように剣閃が走った。
ぐぎゃぁぁぁっと女性らしくない悲鳴を上げるプリカ。
地面に倒れるかと思いきや、そのまま踏み込み二人の頭を掴み取る。
「「なっ!?」」
驚くクラリッサとアリアドネの頭を思い切り打ち合わせる。
物凄い音がして二人が逆方向へと仰け反った。
ソレを逃さんとばかりに再び二人の頭を引っ掴み、今度は地面に叩き付ける。
もはや悲鳴すら上がらなかった。
地面に陥没した二人は痙攣したまま動かなくなる。
すたりと着地したプリカの身体から血飛沫が漏れる。
「ウンディーネヒール!」
しかし、次の瞬間使われた精霊魔法によりプリカの傷はみるみる塞がってしまう。
思わず舌打ちしたのはアレンだけではなかったはずだ。
「ヒックス、二人の回復を頼む」
「は、はいっ!」
怯えるように震えていたヒックス。しかしアレンの声を聞いて弾かれたように頷いた。
「イーニス、仕掛けるぞ!」
「いいわよダーリン」
え゛っ?
驚いたのはアルベルトやモーネットだけではなかった。デ・ブゥを二体屠って勝利の踊りを踊りかけていたネフティアも、のじゃ姫を守るように立つロリコーン紳士も、エンリカやバズ、サヤコにユイア、バルス、そしてプリカまでが驚きに動きを止めていた。
「あ、アレンさん、もしかしてお二人付き合って……」
「ちげぇっ! 無性に胸が揉みたい時に揉ませて貰ってるだけだ! イーニスだけなんだよ揉ませてくれんのはっ! デカパイだぞ、ちょっと筋肉質だけど柔らかいんだぞ! 目を瞑ってれば綺麗な女性の胸なんだぞ!」
おっぱい星人の悲しい現実がそこにはあった。




