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その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
第三話 その少女の結末を僕は知らない
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その無双生物を僕は知らない

 リエラが居れば、きっとチグサさんのパクリとか叫んでいたかもしれない。

 口元の油が風に乗って後方へと流れる。

 まるで喰らい付いて来そうな勢いで飛びかかってきたプリカ。

 ソレに対するはのじゃ姫を庇う老紳士。


「ふぉッ!」


 百枝刺しによる連撃を叩き込む。

 真正面に飛んできたプリカに当るその直前、空中を蹴ったプリカが上空へと逃れた。

 ばかなっ!? と驚く面々を後目に空中で身を翻したプリカの踵が見上げたロリコーン紳士の顔面に突き刺さった。

 倒れるロリコーン紳士を足場に再び空中を舞うプリカがレイドパーティーの中心へと落下してくる。


 ザシュッと大地に着地したプリカ。

 咄嗟の事に反応すら出来ていなかったニンゲンたちにニタリと笑みを浮かべる。

 裂けるような口元に、アレン達が戦慄を浮かべる。


 悪夢が走り出した。

 地を蹴ったプリカが呆然としていたアレンに襲いかかる。

 「やべっ」と慌てるアレンが剣を向けようとするが、それより速くプリカの腕が喉もとへと伸びる。


「させんっ!」


 盾役、アディッシュが咄嗟にアレンを突き飛ばしシールドで防御する。

 ガンっと盾に激突する音が響いた。

 だが、プリカの悲鳴は聞こえない。

 舌打ちするアディッシュがシールドバッシュを行うが、丁度シールドに両足付けていたプリカはその一撃を受けることなく空中に身を躍らせてアディッシュの背後を取る。


「アディッシュさ……っ!?」


 ルティシャの叫びに振り向こうとしたアディッシュ。

 しかしその頭に衝撃を受け吹き飛んだ。

 プリカの掌底を斜め下から突き上げるように喰らったアディッシュの兜が空を舞う。

 セミロングの麗人が顔を覗かせ、地面を滑走した。


「アディッシュ!?」


「「ええっ!? アディッシュさん女性だったの!?」」


「今更か!?」


 驚くアレン。別な意味で驚くメンバー。赤き太陽の絆でも彼女の素顔は知られてなかったようだ。

 苦痛に歪むアディッシュが身体を起こすより先に、プリカはさらにルティシャを蹴り飛ばし魔法を唱えようとしていたプラスタットの腹へと拳を叩き込む。

 空中に浮き上がり胃がせり上がったらしいプラスタットがその場に汚物を撒き散らす。

 そんなプラスタットのうなじに手刀を叩き込み意識を刈り取ったプリカは戦乙女の花園へとその魔手を伸ばす。


「そこまでよっ!」


 ようやく動きだしたイーニスがプリカの足を止める。

 鍛え上げられた筋肉から繰り出された拳を、しかしひらりと躱すプリカ、そこへ背後からステップして踏み込んだエンリカの拳が襲いかかる。

 さすがに避け切れないと悟ったプリカは突き出されたイーニスの腕にぶら下がり、全体重を掛ける。

 咄嗟に踏ん張ったイーニスの腕を鉄棒のように使いくるりと回転。

 エンリカの渾身の右フックを避けると、回転した勢いをそのままに、エンリカに膝を叩き込む。


 受け止めたエンリカの背後からバズの斧が振るわれた。

 勢いが留められたプリカの驚いた顔。

 エンリカが身体を沈めると同時にバズの斧がその上を通過してプリカへと襲いかかった。

 そんな刃先を、プリカは口で受け止める。


「ぶひっ!?」


 咄嗟に斧を引こうとするが、プリカの噛む力が予想以上に強く、うんともすんともいわなくなった。

 必死に斧に力を入れるバズ。しかし、斧の刃先に亀裂が入り、プリカの歯が刃に食い込んでいく。

 バギンっと致命的な音が響いた。

 バズの斧が無残に破壊され、ぺっと吐き出された刃先が地面に落ちる。


 さすがにこれ以上は踏み込めないと気付いたのか、プリカが初めて後方へとバックステップ。

 エンリカたちから距離を取り、四足で地面に着地する。

 たった数秒で大打撃だ。

 赤き太陽の絆は既に半壊。


 皆が戦慄の面持ちでプリカを見る。

 明らかに、エルフを逸脱している。

 エンリカの背筋にも冷や汗が流れていた。

 自分の知り合いが、久々の強敵として立ちはだかっている。


「子供、仕込んでる場合じゃなかったわね……マズいかも」


 お腹に手をやるエンリカ。既にそのお中には新たな命が宿っているらしい。

 なぜその状況でここに来たっ!? アレンは突っ込み入れたい気分に晒されたが、そんな妊婦であろうとも猫の手を借りたいこの状況ではむしろ助かる。


 相手のエルフがバケモノ過ぎる。

 モーネットも符術を用意は出来たが、あまりの素早さに投げつける隙がなく、手元から離せずにいる。

 油断なく構えるクラリッサとアリアドネがアイコンタクトを交わす。

 行ける? まだだ、少し待て。

 背後で弓を番えたカッタニアを流し見て、再び二人は頷いた。

 次はこちらから……仕掛ける! 


 唸るプリカの腹から更なる唸りが聞こえる。

 まるで腹を空かせた肉食獣だ。

 走り出したクラリッサとアリアドネ。

 接敵の瞬間左右に散開。

 二人の影に隠されていたカッタニアの放った矢がプリカへと迫る。

 逃げようとしたプリカに左右からクラリッサとアリアドネの追撃。

 気付いたプリカは……三つの攻撃が当る瞬間、真上に飛んだ。

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