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その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
第三話 その少女の結末を僕は知らない
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その魔物? を倒していいのかを彼女は知らない

「あれ? ちょっと待ってエンリカ、あれ、コイツとおんなじタリアン種じゃない?」


 叢からに見えたロウ・タリアンを見付けたアニアが指差す。即座に動いたエンリカが見敵必殺とばかりにロウ・タリアンを一撃で爆散させていた。

 皆、なぜかイラッとした顔でロウ・タリアンを葬るエンリカに何も言えない。

 おそらくロウ・タリアンは何かやってはいけないことをしてこの拳系エルフの怒りを買っているのだろう。可哀想にと、モーネットは魔物ながらに同情してしまうのだった。


「変ですね。ロウ・タリアンならボス敵であってもおかしくないのに……他にもっと強いのがいるのかしら?」


「ぶひ」


 エンリカに頷くバズがピクリと反応した。ソレに気付いたネフティアがオリハルコンチェーンソウを起動する。

 のじゃ姫とロリコーン紳士も何かに気付いたようで危機感を露わにし始めた。

 彼らの態度に異変を感じたアレンとモーネットがパーティーメンバーに戦闘態勢を取らせる。

 次の瞬間、叢からソレは飛び出した。


 黄金色に輝く肢体。

 座禅を組み、徳の高そうな顔をしたソレは、まるで奈良の大仏のような神聖な姿の仏様だった。

 サヤコがソレに気付いてあ、奈良の……と口を開きかけたが、誰もその姿を知らないと思いだし口を噤んだ。


「えっと……おナラ仏? うっ。また面倒な相手そう……」


 魔物図鑑を渡されていたユイアが図鑑に乗った相手を見て呻く。


「皆さん気を付けてください、そいつのオナラ、物凄く臭いみたいです! とくに握りっ屁をくらうと即死しかねない程悶絶……」


 しかし、彼女が言うより先に、おナラ仏は中空を移動して自分の握られた手をアルベルトの前へと突きだした。

 ぱっと開かれた腕から黄色い靄が放たれる。

 直撃した瞬間、アルベルトが絶叫と共に地面を転がり始めた。

 泡を噴いてびくんびくんと悶絶を始めた水晶勇者に戦慄が走る。


「ぜ、全員散開するな!」

「逆よアレン! 全員散開、全体攻撃に注意して!」


 アレンが密集形態で敵に備えるが、モーネットは逆に散開を指示する。

 ユイアの言葉から敵の特性を直ぐに理解した彼女は札を取り出し遠距離から攻撃を加える。


「接敵は危険よ。この森は遠距離組優先で行きましょ!」


 叫ぶと同時にスキル封じの札を投擲するモーネット。

 おナラ仏の額にぴたりと張りついた瞬間、その懐へと飛び込むネフティア。

 唸りを上げるチェーンソウが真下から二つにおナラ仏を引き裂いた。


「ば、罰あたり……じゃないよね?」


 サヤコが不意に声を漏らすが、聞いたプラムは首を捻るしかなかった。

 時折サヤコは変な言葉を口走るので、今回もそれだと判断してスルーする。

 倒された仏像からはどうやら金塊と仏像が手に入るらしい。真っ二つに割れたおナラ仏から同じく真っ二つに割られた木彫りの座禅型仏像が落ちていた。


「あー、アイテム体内に持ってるパターンか」


「というか、コレ、中身空なんですね。宝箱みたいな存在?」


「そもそもあの悪臭はどこから出されてるのかしら?」


 戦乙女の花園メンバーがアイテムを漁りながらどうでも良さそうに疑問を投げ合う。

 別に答えを期待している訳ではなくただ疑問をいいながらきゃいきゃいと楽しげにしていた。

 そんな姿を見ながら、バルスは女性って怖い。と思ったとか。

 悶絶し続けるアルベルトに冷ややかな視線を向けたネフティアは、次の脅威に備えて警戒に入るのだった。


 アイテムを入手し終えた面々はバズを先頭にしてさらに奥へと突き進む。

 途中、デ・ブゥと鼻垂れ小僧の群れや、おナラ仏と大きなネズミが出現したが、ネフティアたちのパーティーに掛かればそこまで苦戦する相手でもなく、おもにアルベルトが悶絶し、バルスがデ・ブゥに喰われそうになって漏らした以外、被害は殆ど出なかった。


 ただ、出番すらなかったロリコーン紳士とのじゃ姫が少し寂しそうだったが、ソレは些細な問題だといえる。

 やがて、再び開けた場所で、ついにそいつの姿を見付けることが出来た。

 群がっていただろう魔物群れを倒し、その亡骸をうずたかく積んだ山の上、ネフティア達を見下ろすようにワンバーカイザーを貪る一人のエルフ。


「やっぱり、来たのねエンリカ」


 まさに魔王のように死骸の山に腰掛けていたプリカがゆっくりと立ち上がる。

 底冷えするような視線を受け、ニンゲンたちは気圧されたように一歩引いていた。

 醜悪だ。そう思える程に、それはエルフという概念を逸脱していた。


 バクリ、最後の一欠片を口に放り込むプリカ。残ったワンバーカイザーの四肢を放り投げると、そこでワンバーカイザーが再生を始める。

 のじゃ姫が思わず身を乗り出しのじゃぁ! と叫ぶ。それを諌めるように留めたロリコーン紳士が前に出た。


「随分と大所帯になったわね。でも、渡さない。私はワンバーちゃんを絶対に渡さない! この獲物は……ワタシノモノダッ」


 獣じみた顔で四つん這いになり、唸りを上げるプリカ、人としての尊厳を捨てた彼女は、まさに獣の如く、ネフティアたちへと襲いかかった。

 おナラ仏

  種族:有命武具 クラス:リビングスタチュー

 ・黄金で出来た仏様。どこからともなく飛んで来る有難そうな顔の金属像。

  握りっ屁が超強力。下手に喰らうと悶絶死の危険もある。倒すと体内にある木彫りの仏様を手に入れられる。しかし、外側の方が金銭的価値は高い。

 ドロップアイテム・木彫りの座禅型仏像、金塊、数珠、おナラ袋

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