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その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
第二話 その武闘大会の優勝者を僕は知りたくなかった
497/1818

そのエキシビジョンマッチが行われなかったことを、彼は知らない

 決勝が決まった。

 勝者コーデリア。あまりにもあっけないというか観客を無視した勝利宣言に、無数の何かが壇上へと投げ入れられる。

 頭を押さえ、飛び交う小物から退避するウサミミお姉さん。

 呆然としたままのコーデリアは戻ってきた龍華により退避してしまった。

 二人揃って大会運営者の居る場所へ辿りつくと、遅れてやってきたウサミミお姉さん交えて交渉を始める。


 龍華もさすがにこの結果は許せなかったのか? と思ったが違うらしい。

 大会運営者もウサミミお姉さんもなんだかうんうんと真剣に頷き始めている。

 そう、確かにこの大会、最後を飾るにしてはあまりに尻切れトンボである。


 だが、既に勝者を決めてしまった決勝戦をやり直すというのはあまり褒められたことではない。そもそも普通に闘えば結果が分かり切っている闘いをもう一度などやるべきじゃないだろう。

 ならば、大会最後を飾るのはどうするべきか。


「皆様、静粛に、静粛にっ!」


 再び壇上へと上がったウサミミお姉さんが声を張り上げる。

 ざわつく観客たちから罵声が飛び交うが、ウサミミお姉さんは必死に告げる。


「これより、急遽ではありますが三位決定戦を行いたいと思います。対戦者は今大会準決勝で敗れた二人の男達。そう、この国の王子、ランスロット王子と、不屈の勇者カインとの一騎打ちでございます!!」


 急遽の闘いが決まり、罵声が一転、歓声に変わった。

 しかし、直ぐには始められない。

 各選手への通達もあるし、なにより会場はモヤッとなボールを投げまくったような惨状となっている。

 これを掃除しなければどうにもならない。

 よって、これから有志を募りつつ闘技場の清掃で休憩時間が設けられた。

 既に夕焼け空になったオレンジ色の空を見上げ、はふぅと息を吐くウサミミお姉さん。

 なんとか、暴動は起きなかったなぁ。と安堵した顔をしている。


「ネッテさん……」


「ええ。急遽だけど、おそらくこれで決まるわね。ルルリカ、カインのところへ行きましょう」


 休憩時間を待つ間。僕らはぞろぞろと全員でカインのもとへと向う事にした。

 さぁ、エキシビジョンマッチみたいなもんだけど、ついにカインとランス王子の闘いだ。

 そして、僕らは戦慄させられる。


「え? これから試合? この二人が? いや、普通に無理だから」


 二人の容体を見る回復魔法師さんが何言ってんの皆さん? みたいな顔をして首を振った。

 今、二人の身体は確かに回復魔法で全快してたりはする。

 でも、カインもランスロットも意識不明の重体です。


 カインは持てる全ての力を出し切ったせいで下手したら数日は寝込むかもしれないとか。龍華相手に無茶したんだねきっと。まぁ、新技連発してたから仕方ないだろう。

 そしてランスさんはといえば、なんかうわごとみたいにアルセ怖いという謎の言葉を呟いているらしい。意識? こちらもありません。


 大会運営者が会場の整備を終えたらしくカイン達を呼びに来る。

 うん、二人とも意識まだ戻ってませんが?

 大会運営者の顔はすこぶる悪い。

 優勝が余りに酷な状況だったので急遽行おうとした三位決定戦。しかし、両者が会場に来れないとなると。宣言詐欺である。

 これはマズい。無理矢理なんとかしようにも二人の意識が無い状態では闘いすら出来はしない。


 頭を抱えて悶え始める大会運営者。

 彼が戻って来ないことに不審を覚えた他の運営者もやってくるが、現状を確認する度に悶える人間が増えていく。


 そんな彼らの意思など無視し、ネッテはカインの手を握る。

 心配そうな顔ながら、両手で握ったカインの手を持ち上げ、祈るように額を付けた。

 「カイン……」呟くようなその声に、ピクリ。カインの瞼が動く。

 気絶していても、彼はネッテの勇者だった。

 ネッテが彼を心配し不安に刈られる時、彼女を安心させるために、男はゆっくりと目を覚ます。


「ここは……俺、どうなった?」


 ふと、横を見れば、ネッテが居た。

 心配そうなネッテの姿に、カインは跳ねるように起き上がる。

 あんたご都合主義にも程があるだろ。どんなチートだよ専用勇者!?


「ネッテ!?」


「カイン。良かった。気が付いたのね」


「あ、ああ。それで、その、負けた……のか?」


「優勝者が、さっき決まったわ」


 その言葉に、顔を青くするカイン。肩を落としてすまない。と小さく告げる。

 しかし、多分彼は勘違いしてるのだろう。直ぐに理解したネッテは涙目を人差し指の横で拭って笑みを浮かべる。


「優勝はコーデリアさん。これから、三位決定戦があるのよカイン」


「そうか優勝はコーデリア……ん? 三位決定戦?」


「ええ。カインと、ランスの一騎打ち」


 それは、カインにとっては僥倖だった。

 龍華に破れたことは残念だが、同じ準決勝でランスも敗北していたらしい。

 カインがソレに気付いた瞬間、彼は身体を起こし立ち上がる。


「行くよネッテ。今度こそ、俺は絶対に負けない。あいつだけには、絶対に」


 力強く踏み出すカイン。

 大会運営者が彼を伴い部屋を出る。

 でも、皆さん気付いてませんよね? もう一人の対戦者、まだ起きてないですよ?


 結果、カインを早々に出場させた大会運営者の方々は、対戦相手が来ないという理由で再び客席からの罵声を浴びることになった。

 エキシビジョンマッチがランス王子のせいでお流れになったことを、彼は気絶していたので知ることはなかった。

 一応、グダグダ大会フォローのための次話予告

 大会委員「こ、これ、どうしたら収拾つくんだ!? 誰でもいい、なんとかしてくれっ、準決勝なみじゃなくていい。それなりに決勝っぽい闘い出来る二人いないのか!?」


 ???「あら、もしかしてコレ、チャンス? じゃあ、闘いましょうか……リ・エ・ラ・さん?」


 リエラ「え?」


 とばっちり\(>_<)/

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