その幼女同士の対決を、紳士はきっと知らない
「さぁ、始まりました午後の部ベストエイトの闘いでーす!」
ウサミミお姉さん、ホッペにケチャップっぽいの付いてますよー。何アレ? 返り血?
元気一杯に拳を突き上げるウサミミお姉さん。
大会運営委員の一人がやって来て指摘すると、慌ててペロリと舐めるウサミミお姉さん。ケチャップっぽいのはなくなったけど、なんかエロかった今の。CG激写? 当然ベストショット頂きましたが何か?
「さぁ、本日の対戦は勇者を破りし緑の姫君、自由奔放。その小さな身体から何が飛び出すか全く分からないびっくり箱。まさに暴君、まさにじゃじゃ馬姫。笑顔の女帝、アルセ選手、登場ッ!!」
ちょっとウサミミお姉さん! アルセが暴君ってどういう事!!
これは個人的にO・H・A・N・A・S・Iすべきでしょうか?
「対するはその勇者のパーティー所属、青いリボンが空を舞う。赤い鎌の死神少女。聖龍華選手! 前回の闘いで心臓に剣が刺さってましたが大丈夫ですかーっ?」
「仔細ない。もう塞がった」
龍華が律義に返答するが、ウサミミお姉さんは普通に無視しました。
ちょ、龍華さんが可哀想。
ちょっと悲しげに視線を落した気がします。
「さて、やるか」
「おー!」
「では、第三回戦第一試合、開始!」
剣を引き抜く龍華。対するアルセはネギソードを引き抜きクルンと振るう。
そしてドレスアップしてますよー。といった感じで大井手さんの変身シーンを真似ていた。
魔法少女アルセ、かな。可愛い。可愛いよアルセ。もう可愛い。今可愛い。アルセ可愛い。
「大井手の真似か? 楽しそうだな」
変身が終わったアルセ。その容姿に変化はない。まぁそりゃそうだ。
でもアルセ、後で魔法少女服買いに行こうね。ポシェット使って一瞬で着替える方法を覚えればすぐにでも……僕、頑張るよ!!
「気が済んだなら、行くぞ!」
タンっと地を蹴る龍華。一瞬でアルセに肉薄する。
アルセもさすがに驚いたのか、おーっ!? と仰け反り振るわれた剣を転んで避ける。
遅れて地面から出現するマーブルアイヴィ。
しかし、龍華は既にその場に居なかった。
アルセの側面に回り込み、後転して来たアルセに剣閃を走らせる。
あああっ!? アルセの花がっ!
丁度頭を上げた時に龍華の剣が口を開いた花の中心に突き入れられた。
そして、ぱくっと咥え込む円らな瞳の花。これ、なんて呼べばいんだろ。パクパクフラワー? 普通にアレのパクリにしか思えなくなるから却下。パックンさんとかパックンマンとかだとさらにダメな感じだからえーっと。アルセのパクパク? ……なんだこの言葉の響き、なぜか恥ずかしいというか、エッチぃ感じがして来た。却下だ却下。なんか円らな瞳の花。でいいよね。うん。もうそれで統一で。
「ぬぅ、白刃取りか!?」
違うでしょ龍華さん。どう見ても違うから。
しかも剣に噛みついた円らな瞳の花は普通に喰らい付いて放そうとしません。
「やるな?」
「おー!」
背後に浮腕を出現させるが、察知したらしい龍華が剣を放して飛び退く。
懐から懐剣を取り出す龍華。まだ武器持ってるのか。
「これは下手に攻撃するのは危険だな。ならば、これでどうだ!」
龍華は即座に地を蹴って突撃すると、ネギソードと剣をかち合わせ、さらに肉薄。剣を放してアルセの腕を掴み取る。
「こ、これはぁぁぁっ。な、投げたぁ!?」
アルセが空を飛んだ。
きゃっきゃと楽しげに笑うアルセ、放物線を描きそのまま地面を転がる……って、アルセさぁん!?
アルセの奴、普通に今対戦中って忘れて楽しんだな。
空中で受け身を取ることもマーブルアイヴィを使う事もしなかったため、普通に場外まで投げ飛ばされたアルセが地面を転がって楽しげに土まみれになっていた。
「し、勝者、聖龍華!」
「ふぅ。これでなんとか首の皮は繋がったな」
敗因は、アルセが闘いに飽きて遊びだしたこと……か。
精神的な差による敗北じゃどうしようもないね。
まぁ、アルセが楽しんでたみたいだからそれでいいや。
満足したらしいアルセの花が剣を吐きだし、係員に誘導されながら控室へと帰って行く。
龍華は唾液塗れの剣を拾い上げると一度振って鞘へとしまう。
ちょ、それでいいのか龍華さん。
あの剣、絶対錆びるな。きっと僕だけじゃないはずだ。その事実に気付いたのは。
しっかし、鮮やかというかなんというか。相手が剣を向けなければ敵意を発しないと見抜いた龍華の作戦勝ちか、投げ飛ばされるだけならアルセも警戒しないってことだね。これは格闘系魔物が出た場合デメリットになるから僕からアルセに気を付けるように伝えないとね。
さぁ、次は勇者と魔族の闘いだ。
ネッテが手に汗を握るように不安げに会場を見る。
その横に寄り添うルルリカ。ちょっとルルリカさん、近過ぎる気がします!




