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その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
第二話 その武闘大会の優勝者を僕は知りたくなかった
482/1818

その王子が死にかけているのを僕らは知りたくもない

「つ、続きましてCブロックに移ります。第一試合は我らが期待の王子様っ。ランスロット=ドゥア=コイントスぅっ!!」


 デヌさんの御蔭でざわついていた観客席も、王子の出場とあって少しづつ落ち付きを取り戻している。

 魔族は恐ろしいが、ここにはその魔族すら倒しかねない猛者たちがいる。

 きっとデヌが優勝はしない。誰かが討伐してくれるはず。

 そんな根拠のない安心感で、再び席に付く観客たち。腐っても観戦好きのコイントス民らしい。

 会場に現れたランスロットが腕を上げて周囲にパフォーマンスをすると、次第、観客たちが黄色い悲鳴を上げ始めた。


 なんか、人気だねランスロット。

 あれかな。外面はいいんだろうね。頭の方は蛆湧いちゃってるんだろうけど。

 観客の心を掴んだランスロットは満足げに眼を細め、対戦相手の現れる入場口に視線を向けた。


「さぁ、我らが王子に挑戦するのは、なんと前回の試合で王国の拳聖と呼ばれしベルティーガ選手を圧倒した魔物の出場者! アルセ姫護衛騎士団突撃隊長、マリナーマリナのまりなぁ!!」


 マリナさんいつの間に突撃隊長に任命されたの!?

 威風堂々出撃したマリナさんは入場口から颯爽登場。途中で助走付けて飛び上がり、空中でくるりと回転して会場入りした。

 スタリと石畳の上に着地したマリナは対戦相手と対峙する。


「それではCブロック第一試合、開始!!」


 本来ならば、ベルティーガと闘って苦戦しながらも勝ち上がるランス王子が見れたのだろう。

 しかし、対戦者に勝ち上がったのは僕らのパーティーの新人、マリナだった。

 ランスは油断なく剣を構えてマリナを見る。

 まるでこれからボクシングします。といった様子で拳を握り軽いステップを踏むマリナ。

 互いに相手の間合いを計りつつ最初に仕掛けるのは……マリナだ!


 即座に地を蹴り助走を付けたドロップキック。

 先制攻撃を受けたランスロットは慌てることなく身体を捻ってこれをやり過ごす。

 石畳に着地するマリナ。その刹那、ドロップキックの威力で石畳が破砕される。


 は? とランスロットが間抜けな声を上げていた。

 飛散した石が周囲に飛び散り、小さな石がランスロットの頬に小さな傷を付ける。

 しかし、それが気にならない程に、青い顔でランスはその一撃が齎した光景を見て戦慄いていた。

 もしも、ベルティーガのように剣で防御していたら……


 慌てて武器を構え直し、マリナを注視するランス。

 気を抜いてはならない。アレは、強い。ただの魔物とは一線を画している。

 軽くクレーターを作りだしたマリナがへこみから上がってくる。


「とぉっ!」


 可愛らしい声とともにドロップキック。

 当然避ける。ランスは直ぐ横を飛んで行くドロップキックに冷や汗を掻きつつ、交錯する直前に剣の柄でわき腹を突く。


 一撃必殺にはならなかったがダメージを与えられたのは確かだ。

 またも石畳を割り砕いたマリナがわき腹を痛そうに押さえている。

 なまじ、女性の姿をしているからやりづらい。


 威力は即死級、可愛さのせいで知らず手加減を入れてしまう。ランスにとってはやりにくい相手なのだろう。

 わき腹が痛むみたいだ。マリナはドロップキックを封印して走り出すと、ランスに蹴りを放つ。接近戦になった途端、ランスも剣で迎撃。

 剣対蹴りの闘い。しかしそれが互角に見えるということは、つまりマリナの蹴り技術がそれだけ高いということだ。


 切りつけられたら? 足を切り落とされたら? それだけでマリナの不利になる。

 なのにマリナの蹴り技を受けるだけでランスロットは手一杯になっているようで、むしろランスの方が押されているようだ。


「舐めるな、魔物がァッ!」


 気力で蹴り足を真上に跳ね上げる。

 渾身の一撃とばかりに一歩踏み込み、袈裟掛けに切りかかる。

 右足が真上に跳ね上げられ、無防備になったマリナだったが、咄嗟に軸にしていた左足で地を蹴る。


 剣がマリナに当る瞬間、マリナの膝が剣の腹に叩き込まれた。

 ベギンと剣が折られ、刃先が回転しながら地面に飛んで行く。

 場外の土に突き刺さる刃先。

 ランスが呆然とソレを見送った時、既にマリナの追撃は始まっていた。

 振り上がった右足による踵落とし。


 気付いたランスが真上を見るのと、彼の頭にマリナの踵が襲いかかるのは同時だった。

 ぎりぎり、本当にぎりぎり身体を逸らしてランスは蹴りを回避する。

 が、身体は避け切れず、胸元に踵を喰らう。


「がぁっ!?」


 衝撃で防具が真っ二つに破壊され、胸骨が砕けた。

 さらに着地した右足を軸にしての左の蹴り。

 くの字になっていたランスの腹に直撃した。


「ごぉっ!?」


 血反吐を吐き散らし吹っ飛ぶランスロット。

 おおぅ、これまさかのランス敗北!?

 しかし、ランスは場外へ強制転移はされない。どうやらまだ致命傷には至ってないらしい。

レッツ私刑リンチ

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