表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
第二話 その武闘大会の優勝者を僕は知りたくなかった
481/1818

その男の正体を僕は知りたくなかった

「おおっと、ミルクティ選手の先制攻撃が全て防がれた。ラギライアの魔法弾にコルラリカの魔法弾。まさかの攻撃に私、金額の心配をしてしまいますっ!」


 普通に魔法弾込めてもらうだけで高いしね。

 僕らはアルセの御蔭でタダ同然だけど、普通の人はあの高額を払ってるんでしょ。二発撃つだけでもかなりの出費だ……よ?


 しかし、ミルクティは二発程度では止まらなかった。

 銃弾を手早く換装すると、連続射出。

 デヌが何らかの手を撃つ前に彼の動きを封じるような弾幕戦を始める。

 な、なんて恐ろしい一斉射撃!?


「こ、これはぁぁぁっ!? ミルクティ選手まさかの魔弾大判振る舞いぃ!? 爆炎と凍結の乱舞だぁ!! 一体どれ程の金額が今消費されているのでしょうか!? あまりに膨大な金額に全身が震えてしまいます!」


「ええい、こんだけ打ち込んでも無傷か!?」


「障壁に阻まれ無駄だ。分からんのかニンゲン?」


 少し苛ついたような男の声が聞こえた。

 デヌさんは男性で間違いないようだ。というか、そのフードが爆炎に煽られて脱げていた。

 紫色の肌を持つ美形イケメン。額にエメラルドグリーンの宝石みたいなモノがハマっていて、額からは角が一対。


「ま。魔族だぁぁぁッ!?」


 突然、観客席が阿鼻叫喚に包まれた。

 あれ? なんかちょっとヤバい感じですか?


「ま、魔族? あの、ネッテさん、どういう?」


 事情を知らないらしいリエラが横のネッテに尋ねるが、ネッテは首を傾げている。

 代わりに青い顔をしたルルリカが答えた。


「昔、コイントスを滅ぼしかけた存在です。魔族。紫の肌に一対の角、額には宝石があり、カーバンクル族とも呼ばれる人型の魔物。勇者により駆逐されたはずなのに……」


 おお、ルルリカが珍しくブリっ娘化しなかった。よっぽど恐怖を感じてるらしい。普通にシリアス感を醸し出している。これ、もしかしてカレー食べてる場合じゃない?

 というかルクル、そろそろカレー飽きて来たんだけど。いや、追加はいらないから。


「度し難い。この程度の存在が我等を駆逐したというのか? 父は人間には関わるなと言っていたが……ふっ。これでは弱い者いじめにしかならんな。確かに関わる意味がない」


「言ったわね! これは使いたくなかったけど……」


 魔法銃をしまったミルクティは新たな銃を取り出……ちょ、待って、それサブマシンガンという名前の存在じゃないですか!? この世界にもあるのソレ!?


「おおっとミルクティ選手。デヌ選手の種族を知ってもまだやる気かぁ!? 手にしているのは、何でしょうか? 魔銃に似てますが……」


「現代チートの力を見せてやるわ!」


 デヌに向け突撃するミルクティ、迷いなく引き金を引く。

 その刹那、誰もが聞いたことのないような音が連続で響いた。

 バババババと発砲音が鳴り響き、鉛玉がデヌ向けて放たれた。

 うわぁ、やっちゃってるよミルクティさん。


「アイツ、まさか転生者かよ!?」


 勇者様も気付いたか。っていうか、お二人普通に僕らに混じって観戦してますね、手塚さん、龍華さん。メリエはどうした? もう一人のパーティーも居ないけど?


「ふむ。この世界だと銃は未知の武器か。魔銃はあるのに不思議なものだな」


「そんな感心してる場合かよ? アレ、いろいろヤバいだろ。この世界にあんなもん伝えていいのか!?」


「ソレを私に言われても困るぞ。この世界に転生している以上彼女はこの世界の住民だ。それが異世界技術を伝えたとして、我々にどうこうする理由はあるまい?」


 そうですね。確かにその通りだよ。でもこれで戦争に使われるようになったら危険だ……よ?

 確かに、一般人相手には脅威の銃弾。

 しかし、デヌには全く効果がないらしい。

 防壁に阻まれカンキンカンキン音を鳴らしながら弾かれております。


「嘘でしょ!?」


「本当だ。武器に頼るだけでは我には勝てん!」


 今度はこちらの番だ。と飛翔するデヌ。中空で一時停止すると、大空へと腕を向ける。

 闇が渦を描いて集まった。


「潰れろニンゲン。貴様等の浅はかさを噛みしめるがいい」


 巨大な暗黒球が会場へと放たれる。

 驚愕な面持ちで見上げるミルクティを黒い塊が飲み込んで行った。

 数秒後、場外に強制転移させられたミルクティが気絶していた。


「し、勝者デヌ選手!! ちょ、こ、これ、どうしたらいいんですか? え、ええ!? このまま続けるんですか!?」


 大会運営者、神経図太いな。

 デヌさんも自分の正体がバレたら大会どころではないと思っていたのだろう。珍しそうな、感心したような顔をしている。


「あの、デヌ選手、大会中はその……」


「言わずとも分かる。大会中は一選手。この盤上で闘うことを宣言する」


 ウサミミお姉さん泣きそうです。

 なんで私この仕事引き受けたんだろう。とか青い顔で呟いているのが見えます。

 え? 聞こえるじゃないかって? さすがに観客からは呟き聞こえないよ。

 なんとなくそう呟いてるのがわかるんだ。これ、バグった恩恵みたいなもんだろうか?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ