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その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
第二話 その武闘大会の優勝者を僕は知りたくなかった
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その腕が誰のものかを勇者は知らなかった

「小細工なんざ通用しねェぞ!!」


 地中から襲いかかるマーブルアイヴィを悉く避けては伐採していく手塚。

 勇者の名は伊達じゃ無く、物凄い速度で無数に現れる強靱な蔦を全て切り裂いて行く。

 徐々に近づく手塚の姿にアルセもこのままじゃ勝てないと気付いたらしい。


 うーんと考えた結果、周囲にアルセギンを撒き散らした。

 少し間を置いて、にょきにょきっと生えだすアルセギン。


「おーっとアルセ選手が一杯!? これが伝説の約束されたアルセ郷かぁ!?」


 アルセに囲まれる世界……か。なんて恐ろし……楽しそうな場所なんだろう。

 笑顔で駆けまわり始めたアルセギン。

 どうやら初見らしい勇者様は少し戸惑っている。


 無防備に走り始めたアルセギン達を見回していたが、危険はないと気付いたのだろう。

 足を踏ん張り目の前に走り込んで来たアルセギンを真っ二つに切り裂く。その刹那。

 アルセギンが破裂した。


「ぐがあああああああああああああああっ!?」


 女性とは思えない絶叫が。ちょぉっ。アルセさん、勇者様になんてことを!

 あまりの衝撃にのたうち回る勇者様。

 バトルロイヤル見てたり参加してたりしてた人たちが手塚に同情の視線を向けている。

 分かる。分かるよその痛み。あの痛みは体験しないと分からないぜ。とか頷いてる奴が結構いるみたいです。


 さらにのたうち回る手塚が状態回復魔法を唱えた瞬間、体当たりして破裂するアルセギン。

 折角治まった目の痛みが更なる痛みで塗りつぶされる。

 無限目潰し玉葱攻め……アルセ、なんて恐ろしい技を……


 状態回復を行った手塚だが、アルセギンを警戒したのか眼を瞑ったまま立ち上がる。

 どうやら眼をつぶってれば玉葱による目潰しはならないと思ったようだ。

 単純だけど効果的。でもそれ、見えませんよね?


 眼を瞑った彼女に再び襲いかかるマーブルアイヴィ。

 ソレを、何故か普通に避けていく手塚。

 先程より動きは悪くなったが、マーブルアイヴィだけでは手塚を止めきれない。

 徐々に近づく手塚に困った顔になるアルセ。

 さすがにちょっと勇者相手はきつかったかな?


「ソコ、だぁ!!」


 奮われた一撃をネギソードを生成してぎりぎり受け止めるアルセ。

 身体は鋼鉄化してるのかな? 地面にめり込みながらもなんとか手塚の一撃を受け止める。

 が、次の一撃、返しの突き上げを受け止めるにはやはり力不足か上空へと跳ね上げられるアルセ。


「テメェ、目潰しなんざしやがって、唯で済むと思うなよ!!」


「おおっと、手塚選手新たに剣を一本取り出した! 何でしょうかあの剣、刀身が炎で揺らめいているぞぉ!? これが魔神から手に入れたというレーヴァテインなのかぁっ!!?」


「ライトニング!」


 クラスターソードが帯電する。

 ぱりぱりと放電を起こすクラスターソードと炎を発する剣をクロスして掲げ、アルセに向ける。


「くたばれっ! フレアライトクロス!!」


 次の瞬間、アルセ向けて確実に致死性の高い一撃が放たれた。

 ちょぉっ!? それはやり過ぎっ。

 アルセェェェェェッ!


「ひゃあああっ!? ちょ、ヤバい、結界が!!」


 ウサミミお姉さんが威力の高さに思わずしゃがんで頭を抱える。直ぐに我に返って見上げた視線の先には、上空数百メートルでせめぎ合う結界とフレアライトクロスの姿。あまりにも頼りなく軋む結界は、今にも砕かれそうだ。


 というか……砕けたっ!?

 抵抗を失くしたフレアライトクロスがそのまま上空へと飛翔していく。

 魔法で作られただろう結界の亡骸がキラキラとした光の粒子として地面に落下していく。

 普通に綺麗な光景だなぁと思わず魅入ってしまった。


 って、アルセ! アルセどうな……

 なんとアルセは既に闘技場に戻っていた。

 どうやら咄嗟に幻夢の浮腕を使って自分を引っ張り、フレアライトクロスの射線からぎりぎり逃れたようだ。

 はふぅと息を吐いて手塚の背後に立っていた。


「あー、ちょいとやり過ぎちまったかな?」


 上空を見上げて苦笑する手塚。その背後に近づいて来たアルセは思い切り手塚に体当たり。

 笑顔でどーん。っとぶつかった。

 気付いてなかったらしい手塚は面白いぐらいにたたらを踏んで闘技場ギリギリの場所まで追い詰められた。が、ぎりぎりで踏ん張る。


「チックソッ。アレを避けたのかよ!?」


「おー!」


 ネギソードを二つ生成したアルセがクロスして振り下ろす。

 多分フレアライトクロスのまねだろうけど、手塚のような一撃は放てない。

 ただクロスしたネギを振り下ろしただけで、何も出ないことにあれ? と首を捻るアルセ。

 そりゃでないでしょ?


「つっても、もう終わりは見えたがな! くらっ!?」


 離れた距離から剣を振ろうとした手塚。しかし、突如その首根っこを何かに掴まれた。

 引き倒される手塚が慌てて体勢を整えようとするが、重力に引かれた身体は、闘技場に足を残したまま地面に尻餅をついていた。


「な。なん?」


「こ、これはぁぁぁ! なんと手塚選手の背後から空に浮かぶ腕が出現し手塚選手を引っ張り倒してしまったぁ! 先程もアルセ選手を助けていた謎の腕、これは一体なんなん……んえ? なんですかこの資料? へ、浮き腕?」


 何か伝えようとしていたウサミミお姉さんに大会運営者から差し出される羊皮紙。


「し、失礼しました。今のはアルセ選手の幻夢の浮腕による攻撃と判明しました。アルセ選手が見えない誰かを使っての不正ではなくそういうスキルだそうです。よって、文句なく言いましょう! 勝者、アルセェェェェ!!」


 か。勝った。アルセが勝ったーっ!!? 金髪少女が車椅子から立ち上がった程の衝撃的な展開に、僕は眼から涙が止まりません。うおおおおアルセぇぇぇぇっ!!

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