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その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
第二話 その武闘大会の優勝者を僕は知りたくなかった
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AE(アナザーエピソード)・その勇者の恨みの深さを彼は知りたくなかった

 正直に言おう。彼女、荻島千草はフィグナートに召喚されてから、自分の強さに酔いしれていた。

 自分は勇者なので強い。危機に陥っていたフィグナートを召喚直後に救えたのだから自分が負けることなど滅多にないだろう。

 民衆からの賞賛を受け、自分が負けるなどあってはならない。むしろ勝って当然だ。

 ずっと、そう思って来たし、事実彼女が負けるような状況は、今まで一度も無かった。

 約束された勝利をもらたす戦乙女。


 栄光を約束されし者。他の誰もが成し遂げられないことを成し遂げし者。

 フィグナートの英雄となった後も、ずっと続くと思っていた。

 確かに、自分だって最強ではないので敗北する事はあるだろう。それくらいは予想できていた。

 ただ、異世界の知識の御蔭で、敗北は更なる自身の強化に繋がり、敵を打ち倒せるものだと思っていた。

 強敵、例えば魔王などに一度敗北し、強くなって撃破する。それはある意味王道だ。


 きっと、自分が負けるならそんなところだろう。そう、高をくくっていた。

 その敗北は、あまりにも衝撃的だった。

 闘った相手は、同じ勇者でもなければ魔王でもない。ただの……村人だったのだ。


 聞けば、冒険者として駆け出しの村人で、確かに対戦初期はチグサの実力に怯えていたのだ。

 しかし、まるでスイッチが入ったようにこちらが反応できない速度で動き、受けきれない攻撃で翻弄された。

 気が付けば、敗北していた。


 手も足も出ず完全に敗北したのは後にも先にも彼女だけである。

 後から、もっと私はやれたんだ。そんな気持ちがふつふつ湧き起こり、アレは違う、敗北じゃない。油断だ。そんな思いが湧き起こってくる。

 心の底では分かっているのだ。全力を出しても彼女には敵わないのだと。


 それでも、もう一度、自分の納得いく闘いがしたい。

 負けるなら負けるでもいい。全力を出して届かないのならチグサだって納得できた。

 なのに、彼女はスイッチをなかなか切り変えてくれない。

 弱いままの彼女では楽に勝ててしまい逆にストレスが溜まってしまう。

 だから、大会に出場するように促した。前回同様一対一の負けられない闘いならば、きっと。そう思っていたのに、闘う理由も用意して対戦時に伝えて本気を出して貰うはずだったのに……


 彼女は負けた。敗者復活戦で、目の前のどこの馬の骨とも分からない男にッ。

 こんなのに負けた彼女を許せない。そして、折角の舞台を台無しにしたコイツを許せない。コイツさえいなければ、おそらくリエラとの対戦になっていたのにっ。


「それではDブロック第四回戦! フィグナート帝国の勇者チグサ・オギシマ VS Cランク冒険者グエン、試合開始!」


 チグサにとって、目の前の男は自分とリエラの闘いを穢した悪人だ。

 ソレを思い返す度に殺意が芽生える。

 コイツさえいなければ。コイツさえいなければコイツさえいなければコイツさえいなければコイツさえいなければコイツさえいなければコイツさえいなければコイツさえいなければコイツさえいなければコイツさえいなければコイツさえいなければコイツさえいなければコイツさえいなければ……

 昨日から何度繰り返した言葉だろうか?


 すらりと引き抜く刀を両手で掴み、チャキリと刃を向ける。

 ソレを見たグエンの喉がゴクリと鳴った。

 彼にとっては災難だろう。

 折角武闘大会で有名になろうとなんとか敗者決定戦で本戦出場枠を手に入れたというのに、なぜかフィグナートの勇者に恨まれているのだ。


 意味が分からない。いや、彼が恨まれる理由は理解はできる。

 彼女の知り合いらしき少女を彼が撃破してしまったからだ。

 しかも、最後の六枠が決まる直前にだ。

 彼女の離脱があった御蔭ですんなりと六枠が決まったのだが、もしもグエンが手を下さなければ、七人でのバトルロイヤルとなっていただろう。その場合本戦に出場していた誰かが予選落ちしていたのは確実だ。それはグエン自身かもしれない。


 これは試合だ。仲間が倒されたからと恨みを受けるの筋違い。勝者だけが上に上がれる。そのくらいチグサも理解はしているはずなのだ。

 生唾を飲み込んだグエンはチンクエディアを構える。逆の腕にはゾーリンゲン。二つのナイフを構え、いつでも動けるように軽く腰を落とす。


 凄いプレッシャーだった。

 こうして対峙しているだけでチグサから発せられる殺意がバシバシとグエンに叩きつけられる。

 正直、生きた心地はしない。

 これが試合という大会の一幕ではなく殺し合いの場として出会っていたならば、きっとグエンは即座に逃げに徹していただろう。


 相手の殺意を一身に受けつつも、胸を借りるつもりで、闘う。それがしがないCランク冒険者……紫のギルドハンターが取れる唯一の闘いだ。負けることは覚悟した方がいい。むしろ勝つ見込みなどない。それでも、勇者と闘った。その土産話だけでも彼らランクの冒険者仲間にはいい話のネタになる。


「行くぜ、嬢ちゃん」


「さっさと来なさい。楽には潰しません」


 余程恨まれているらしいな。グエンは苦笑いしつつも気を引き締める。

 最初から出し惜しみは無しだ。そもそも自分程度が奥の手を出し惜しんで勝てる相手ではない。


「高速突破!」


「きぇええええええええええぇいッ!!」


 スキルを使って突っ込んだ瞬間だった。

 おおよそ女性には出せないと思われる程の大音量を口から吐き出すチグサ。

 正眼に構えた刀がぶれる。

 チグサが一歩踏み出した。それを認識した瞬間。グエンは……闇に飲まれた。

 どうでもいい知識:ランク分けに付いて

 ギルドランク以下に対してランクが決まってます。


 橙:   駆け出し冒険者。ランク外。あるいはGランク

 黄:   半人前冒険者。D、CランクからはバカにされがちFランクとも呼ばれる。

 緑:   一人前冒険者。Eランク。とりあえずここまでなら採取依頼だけで成れる。

 青:   Dランク冒険者。このランクでようやく護衛依頼などが受けられるようになる。世界が広がる冒険者ランク。

 紫、赤:  Cランクと呼ばれる冒険者たち。ここで足止めを喰らうのは才能の無い冒険者と呼ばれ、犯罪に走るモノや裏稼業に手を出す者が多い。魔物退治で辿りつける平均ランク。

 白、黒:  Bランク冒険者。ここまでくれば国から専属契約等の依頼も来るらしい。

 銀、金:  Aランク冒険者。まさに英雄的パーティー。この辺りになると単独パーティーでドラゴンを狩れる。国の危機等にその近隣ギルドに居ると強制依頼を受けさせられるようになる。

 虹:  Sランク冒険者。世界には殆ど指で数えられる程の冒険者。あるいはどこそこの勇者とも呼ばれ、魔王討伐などを成し遂げた者、救国の勇者などがこれに類しており、たった一人で万の軍勢を破壊する人間兵器とも呼ばれている。

 透:  過去に一人か二人ほど出たという噂だけが存在するランク。魔神でも撃退しない限りはまず与えられないと思われるランク。

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