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その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
第二話 その武闘大会の優勝者を僕は知りたくなかった
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その男の焦りを僕は知る気はなかった

「次はえっと、ドラッツァさんとケフィンって人ね。ドラッツァさんは……あら、珍しい。龍人族じゃない。ケフィンは犬人族ね。これはもう勝敗は見えたようなものね」


 アカネが対戦表の簡易説明見ながら告げる。

 正直知り合いじゃないのでどうでもいい試合が二戦、いやDグループの第一戦目も合わせて三戦あるわけだ。

 ちょうどいいや。今のうちにトイレ行って来よう。


「あら? どこに……あの、ちょっとお花を摘みに行ってきますわ」


 僕が仲間内から出ていくのに気付いたアカネが立ち上がる。

 ネッテたちににこやかに微笑み退席すると、僕の横を歩きだした。


「どこに行く気?」


 あんたと一緒でお花摘みですが何か? 透明人間なだけでトイレは行くよ僕だって。フィールド上なら誰も見てないって分かってるから野花に肥料あげたりしてるけど、さすがに公共の場でそんな事はできません。僕は犬じゃないのでマーキングする気はありません。


 トイレに向った僕を見て、ああ、あんたもトイレか。と納得したアカネ。

 もしかして僕が何か変な場所に行こうとしてたとか思ったのかな? それで監視役として来たと? それならさ、背後から男子トイレまで着いて来ているルクルを引き離してくださいません?

 手塚さんに敗北してからずっと僕の背後から離れてくれないんですけど。

 ルクル、わかってるよね。ここ男子トイレ! 


 ルクルの腕を持ち上げ男子トイレだと特有のプレート差して教えるが、顔を赤らめるだけで普通に着いて来た。

 ちょぉっ!?

 小便器におっさんが二人ほどいて、やって来たルクルに呆然と魅入っている。

 え? なんでここに美少女が? そんな顔をしながら……ひぃぃ!? こぼれてる、付着してる、ズボンズボンッ! 手ぇ!?


 気付いたおっさん二人は慌てて濡れたズボンを引き上げ走り去ってしまった。

 ちょ、手をっというかズボン洗って行きなさい、その格好は恥ずかしすぎるぞ!

 同じ男として気が動転して逃げ去った二人に合掌しつつ。僕は仕方無くルクルを個室に押し込み、小便器で用を足す。


 ズボンのファスナーを閉めた頃、背後の個室の扉がぎぎぃっと開いて能面のルクルがゆっくりと現れる。怖い、怖い怖い怖いっ。男性トイレに女性がいるだけでも驚きなのに、背後からとか、ひたりひたりと近づいて来るのがまた……


「ひぃぃっ!?」


 そんな個室から幽霊のように現れるルクルを見てしまった魔術師風の男がトイレに入ろうとして悲鳴を上げた。

 余程恐怖だったのだろう。そのまま気絶して後頭部を打ち付け盛大に漏らす……って、何か物凄いことにぃっ!?


「どうした? 何かあった……うわぁ!? メドヴィンさんっ!?」


 悲鳴に気付いて駆け寄って来たのはさっきのおっさん二人だ。濡れたズボンのままやって来た二人はメドヴィンさんを二人で抱えて医務室へと向ってしまった。

 というか、なんかもう、予想外過ぎる結果になっちゃったんだけど……


 僕、知ぃらないっと。


 ルクルとトイレを出ると、通路を男達の軌跡が点々と続いていた。

 うん、戻る時は別ルート通ろう。

 少し待っているとアカネが戻ってくる。


「何か悲鳴聞こえたけど、何かした?」


 え? 悲鳴? 僕は普通にトイレしただけですが?

 知らないよ。メドヴィンさんなんて……あれ? そういえばなんか名前見たことある気がするな。

 まぁいいか。


 別ルートを通って会場に戻る。

 その途中、怒声が響き渡った。

 なんだ? と僕らは足を止める。


「ふざけんなベルティーガ! お前、次の闘いで俺を勝たせる役だろ! なに負けてんだよ!」


「若、そうは言いますがな、まさかあのマリナー・マリナの攻撃力があれ程高いとは予想外で。最初の一撃で両腕が持って行かれたのが痛恨でしたな」


「言い訳などいい! これではあのクソ勇者のパーティーと闘うことになるじゃないか。あいつと闘う前に出来るだけ消耗したくないのだ! 手の打ちも見せたくなかった!」


「王子、終わったことをこれ以上責めるのは、ベルティーガでなくともあの輩と闘うのは骨が折れるかと。それよりも第二回戦の対策を考えねばなりますまい。相手はベルティーガを破った相手です」


 はい、これランス王子たちだ。どうやら二回戦目も不正を行おうとしてマリナに阻止されたことを憤慨しているようです。

 ベルティーガさん、やっぱり負けるために勝ち上がる予定だったのか。

 となると、貴族と書かれたロッツガルドさん辺りが三回戦目で不正役ってことかな? 四回戦目は多分大会前優勝者の人だろう。

 で、決勝でカインと闘いぶっ倒す予定。だったと。


 その思惑は脆くもマリナに壊されたわけだ。ざまぁ。

 アカネもその事に気付いたようで僕と同じ顔してざまぁと呟いてました。

 僕らは気分も上々にして観客席へと戻るのだった。

 ちなみに、第三回戦はドラッツァさん、第四回戦は飛龍乗りの槍使い、フランネさんが勝利してました。……ロッツガルド? 知らんがな。

 第四問、Dブロックからのベスト8入りは誰と誰?


 正解者の中から抽選で10名の方に変態紳士の抱き枕が当り……ません!

 正解による報償などは一切ございませんので良ければ暇つぶしにどうぞ。


 Dブロック編


  第一試合 メドヴィン VS コーデリア

 メドヴィン:自称最強の魔術師。自称するだけあって魔法の質は高く、並みの魔術師なら彼の言動が実力に裏打ちされた者であると気付くだろう。取り巻きにおっさん二人がいる。


 コーデリア:つい先日騎士団の面接に受かったばかりの少女。今回は仲間内で大会参加して自分の実力を知ってこれからの修行の参考にする目的だった。何を間違ったか一人本戦出場してしまい戦々恐々している。


  第二試合 リアッティ VS ケトル


 リアッティ:女性好きの変態王族護衛の一人。トルーミング王国から全国指名手配を受ける前にこの大会で賞金を手に入れて別大陸に高跳びしようと参加した。


 ケトル:フィグナートの第四王女。忍者に憧れを抱き、魔法を駆使して忍術に似せた魔法体系を作り始めてる先駆者。暗殺スキルはまだ勉強中。


  第三試合 ザイツシード VS 大井手真希巴


 ザイツシード:前大会優勝者。その拳は岩をも砕き、鋼の肉体はあらゆる一撃を体表で留めると言われている。


 大井手真希巴:異世界からの参加者。ロリポップな杖を扱い重力魔法を扱うモブ顔の魔法少女。


  第四試合 チグサ VS グエン


 チグサ:フィグナートの勇者。リエラと闘いたかったが、グエンによりその闘いを邪魔された。グエンを逆恨みして憎悪を募らせているらしい。


 グエン:冒険者内でもかなり高齢に位置するおっさん。そろそろ引退を考えており、この大会で自分の実力を見せつけて、貴族からの剣術指南役に招いてもらうことを狙っている。引退後の就職先に向けた切実な思いで本戦に出場したのだが……

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