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その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
第二話 その武闘大会の優勝者を僕は知りたくなかった
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そのわかりやすい出来試合を全員が知りたくなかった

「出てきたなランス王子」


 カインが会場を見下ろし神妙に言葉を紡ぐ。

 ネッテもあまり歓迎してない顔でこくりと頷いた。


「Cブロック第一試合、フォン・エヴァンス VS ランスロット=ドゥア=コイントス!」


 武闘場へとやってくる二人の男。

 若々しい騎士はフォン・エヴァンスだろう。


「なんとこのフォン選手、この国最強といわれる王国騎士団長の息子なのです! そして対するはその王国騎士団長に剣を習った我が国期待の第三王子! ランスロット王子です!」


 え、あいつ期待されてんの?

 多分、僕らのパーティー全員の疑問だったのだろう。

 すっと横を見れば、コイントスの王様が沈痛な面持ちをしている。

 アレが国民の期待を集めているなんて……と疲れた顔をしていた。


 なるほど、知能は低くても剣士としての腕は良い。うん。それって脳筋っていうんだよ。

 会場では剣を抜いたフォンとランスが戦闘を繰り広げていた。

 確かに凄い、でも騎士団としての剣だからだろうか?

 どこか他人に見せる剣舞のように見えなくもない。

 というか、剣舞を披露してないか? 今のフォンに攻撃されるところとか、まるで打ちあわせ通りの場所に来たので転がって避けましたって感じするぞ?


 待て、もしかして、いや、さすがに王子ともあろうお方が八百長など……

 あ、ダメだ。剣舞だと思ったら普通に演技してるようにしか見えなくなってきたぞ?

 そんな事を思っていると、どうも僕だけではなかったらしい。

 周囲がざわつき始めていた。


 綺麗な演舞は確かに素晴らしいが、なんとなく勝者が分かってしまう。

 これ、多分出来試合だ。ランスが勝つようにしたちょっと苦戦するけど苦戦した相手倒したよ、俺凄いだろ? という実力を周囲に見せるためにわざと相手に負けて貰う八百長だ!


 案の定、フォンが実力の半分も出してないような状態でランスに敗北した。

 ヤジは飛ばないがかなりざわついている。しかし、皆ランスがそんな事をわざとするとは思ってないようで、今のはランス王子によるエキシビジョンマッチみたいなモノじゃないか? という結論に至ってしまっていた。

 いや、唯の出来試合だからさ、ランス王子不正してますよ?

 誰か高らかに宣言しちまえよ。多分王族侮辱罪で死刑になるけど。


「あの野郎……あんな分かりやすい不正するのかよ……」


「しかも次の試合、マリナの相手はベルティーガのお爺さんじゃない。確かランス王子に格闘術教えてた先生よ!」


「あいつどんだけ……ッ」


「カイン……負けないで」


 不安そうに告げるネッテに、カインは新たに決意したようにコクリと頷く。

 負けられない闘いがそこにあった。負けちゃいけない敵がいた。自分の背に、大切な人がいる。

 ならば、絶対に勇者は負けられない。カインの勇者スキルが全力発動した瞬間でした。


「Cブロック第二試合、ベルティーガ VS マリナ!」


 第二試合はベルティーガとマリナの闘い。格闘師範というだけあってベルティーガはムキムキで老練な男だった。どっかの格ゲー辺りに出て来そうな体格をしている。

 その対戦相手になるのが小柄で身軽なマリナなので、観客席からは戸惑いの声が漏れている。


 さすがに体格差があり過ぎじゃないか? あの女の子可哀想。

 そんな声がそこかしこから上がる中、ついに第二試合が始まった。

 ベルティーガが油断なく構えたその刹那、マリナが跳躍からのドロップキック。


「とーっ」


「むぅっ!」


 唐突な先制攻撃に攻撃の構えを即座に解いて両腕クロスでドロップキックを受け止めるベルティーガ。しかし、その威力を見誤った。

 ベギンと二つの音が響く。

 ベルティーガを蹴りつけ地面に着地したマリナがステップを踏みながら相手の攻撃に備える。

 しかし、ベルティーガの両腕がぷらーんとしてます。


 ええ!? といった様子が会場中から伝わってきます。

 そりゃそうだよね。少女のドロップキック一発で歴戦のツワモノっぽいお爺さんの両腕が折れるとか、びっくりだよね。でもマリナ、偽人ですからーっ。残念っ!!


 驚いたのはベルティーガも同様だった。

 まさか自分の腕がたった一撃で使い物にならない状態になるとは思わなかったのだ。

 致命傷ではなかったために普通にダメージも通ってしまっている。


「ぬおおおおおおおおおおおおッ!!」


 筋肉を張り巡らせて骨折した腕を肉で支える。こ、この人は化け物か!? 普通に腕が元に戻った!?


「手加減はせんぞ小娘ッ!!」


「とぉッ!」


 走りだしたベルティーガに一足飛びで近づくマリナ。左足を地面に付けて突撃して来たベルティーガに右の回し蹴りを叩き込む。

 腕を犠牲にガードするベルティーガが右腕のストレートでマリナを襲う。

 次の瞬間、左足で飛んだマリナがストレートをギリギリ躱す。そして身体を捻っての左足による踵落とし。


 ベルティーガが反応するより早く、彼の頭蓋にマリナの踵がめり込んだ。

 ように見えたけど、どうやら即死系攻撃は闘技場内では無効化されるらしく、どれだけ陥没したように見えてもベルティーガは気絶しただけのようだ。一瞬で場外に転移したベルティーガがどさりと倒れた。


 マリナ……圧勝の図。どうもアンブロシア食べたせいで戦闘知識が爆発的に増えたッぽい。やばい、なんか……すごく某豚好きエルフに見えて来た。

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