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その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
第二話 その武闘大会の優勝者を僕は知りたくなかった
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その傲慢戦士の強さを誰もよくわからない

「Bブロック第一試合、ライツバァム VS カイン・クライエン!」


 闘技場へと上がるカイン。

 その前にいるライツバァムはカインを見てふん。と鼻を鳴らした。


「貴様みたいなどこの馬の骨ともわからんクズが試合に勝ち残るとはな。この大会の質も落ちたものだ」


「……いきなり挑発か?」


「挑発? 事実を述べているだけだ。全くこの戦いは国王陛下に捧げる騎士たちの神聖なる儀式だったはず。それを冒険者共などという粗野な者たちにも門戸を開いたのが運のツキだな。しかも、防具だけは随分と大枚を叩いたようだな。馬子にも衣装とはこのことか。粗暴な猿でも見栄えが良くなる」


 あの男、確かに顔は二枚目だけど傲慢過ぎるというか、むしろ気違いレベルの口の悪さだ。

 カインもちょっとピクついている。

 何も喋ってないのは怒りを押しとどめているからだろうか?


 話を聞いているウサミミお姉さんがコイツなに言っちゃってんの? みたいな顔をしているが、ライツバァムは気付いていない。

 完全に開始の合図を言うタイミングを潰されてどうしたものかと話の切れ目を探ってるみたいです。頑張れウサミミお姉さん。


「何も言えんか愚物。貴様のような存在は超越種たる私のような存在の糧となるしかないのだ。大人しく敗北を認め、以後このような神聖な闘いの場に顔を出すな。貴様の姿を見るだけで場が穢される」


「……言いたいことは……それだけか?」


 言葉が途切れた刹那、押し殺したようなカインの声で男も押し黙る。


「どうした? 一丁前に怒ったか? 猿でも己の蔑みには敏感らしいな。しかしだ、我は侯爵候補の剣士であるぞ? 下手に手を出せば無礼打ちだ」


「……いるんだよなぁ。自分が身分が高いからこういう闘いの場にもその地位を持ちだして相手を挑発するだけ挑発して棄権させるクソ貴族が。下手に攻撃した対戦相手は大会終了後に審問会開いて処刑にするからまた厄介過ぎるクズ野郎だ」


「ふん。貴族に逆らう方が愚かだと思わんのかね? たかだか下流階級の分際で我に話しかけるなど頭が高すぎる」


「ハッ。頭が高いのはどっちだか……いいぜ、処刑にでも何でもしてみろよ? ただし、俺に敵対するってのは、得策じゃないけどな。教えてやるぜテメェの大好きな地位とやらでよ?」


 ちゃきりとアルセソードを引き抜くカイン。

 太陽の光を受けてエメラルドグリーンに輝く刀身に、果たして何人の観戦者が見惚れただろう?

 天空へと掲げた剣をライツバァムに向ける。


「自己紹介するぜ? マイネフラン第三王女、ネッテ姫の専属勇者カイン・クライエン。我と我が君に仇なす輩を魔王と認定し、これを討つ!」


「こ、これはっ!? 勇者の魔王討伐宣言!? ら、ライツバァム選手、なんとこの試合で魔王認定されてしまったぁぁぁ!?」


「ば、バカな!? 勇者だと!? 待て、待ってくれ。魔王認定はさすがに待て! 俺は侯爵の息子だぞ! 魔王何かに認定されたら……」


 突然青ざめるライツバァム。なんだろう? 魔王宣言されたのがそんなに嫌だったのかな?

 というか、もしかして勇者の魔王認定って、二つ名辺りに魔王とか出ちゃうパターン?


「るせぇぞ三下ッ! さっさと始めようぜ?」


「そ、それではBブロック第一試合、開始はじめッ!」


 結果をいえば、ライツバァムは口だけでした。

 まさに手も足も出ないというか、開始直後に神速突破で懐に飛び込んだカインの一撃で剣が舞い、アルセソードを突きつけられたライツバァムが腰を抜かして気絶した。


 本当、これでは強さが全くわからない。というか、よく本戦に残れたなこいつ。

 あまりのあっけなさに、もはや会場中がぽかんと口を開けて魅入っていた。

 結局、ライツバァムが強かったのか弱かったのか、今となっては誰にもわからないことだった。


 次の試合はアンディとメリエの知り合い同士の闘いなのだけど、カインが勝利したことで彼に会いにネッテが立ち上がる。

 折角だし僕も労いに行こうかな。アルセ戻って来てないし、多分控室にいるよね?

 僕がネッテの後を歩きだすと、他の皆まで席を立っていた。勇者様もリエラ達に続くように着いて来る。

 いや、勇者さんお呼びじゃないから。


 結局、勇者様を引き連れて選手控室前にやって来た。

 丁度カインが試合会場から戻って来て、メリエと一言挨拶交わして別れているところだった。

 メリエはアンディのいる会場へと向い、カインは僕らの前へとやってくる。


「お疲れさま、カイン」


「ああ。つっても一回しか剣振らなかったけどな」


 頭を掻きながら苦笑するカイン。ネッテと話し合うさまはまさにリア充。ちっ。爆死すればいい。

 お、アルセが落ち込んでるルグスを慰めてるじゃん。

 控室を覗くとアルセがずもーんと項垂れているルグスの頭を楽しげに撫でていた。

 うん、そっとしておいてやろう。


「でも、魔王認定なんてしてよかったの?」


「ん? ああ、アレは本気で言ってなかったから魔王にはならないだろ。あんましムカツク相手全てを魔王認定して他の勇者に狙わせるとかはな。悪道勇者になりかねねぇし」


「あー。確かに。じゃああの人は魔王にはなってないのね」


「ああ。今頃ソレを知って安堵してるんじゃねぇかな?」


 さすがのカインも本気で魔王認定してはなかったようです。というか、そんなので魔王になるとか。無実の一般人が魔王化したら可哀想過ぎる気もします。天然勇者怖ぇ。

 話を詳しく聞いた限り、課金型勇者にはこの能力ないらしいけど、神様からのギフトによる天然勇者には普通に存在するスキルらしい。


 解除方法は他の勇者かスキルを掛けた勇者による、君は魔王じゃないよ宣言が必要になるらしい。余程敵対者となる勇者と密接でない限りは魔王の称号を返上するのは難しいらしい。

 折角だしエンリカさんを認定といたらどうかねカイン君。あれ、どう見ても魔王の域に達してるし。

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