その本戦第一試合の出場者を僕は知りたくなかった
「やぁ、今日もここに来てくれたか。本当に良かった」
本戦開幕の日、僕らはネッテの付き人という形でコイントス王の横に作られた特等席へとやって来ていた。
観戦を行うのはネッテ、ルルリカ、アカネ、リエラ、僕、パルティ、レーニャ。
アルセ、何処行ったんだろう?
ここに来る少し前までは一緒だったんだけどなぁ?
まぁ、ルグスがずっと付いてたし、問題はないだろうけど……
というか、どうしようこの配置。
右にリエラ、左にパルティ。まさに両手に花状態です。
二人とも僕がいるのは知ってるので、わざわざ席を一つ空けてくれてるのが、嬉しいね。
アルセ用の席といい張れるので誰かが座る事もない。
僕も安心して観戦出来るって訳だ。
というか、目の前の座席に座って酒かっくらってるのってさ、影兵さんじゃない?
あんたこんなところで何してんの?
しかも横には美少女。あーまた酒飲んでるでありますか!? とか窘められてるけど、しかたないなぁとか許容されてるようです。
あの、もう一人の男の娘が見当たりませんが、もしかして別行動? あの子だけのじゃ姫の方に回したのかこいつ。
なんて奴だ! 自分がリエラやアルセを見守りたいからって別行動するパーティーの護衛を新人に任せやがったんだ! そして自分は美少女と二人で護衛旅。う、羨ましくなんてないんだからね!
「ああ、そうだ。ネッテ王女は対戦表は御覧になられましたかな?」
「対戦表、ですか? いえ、見てないですね」
コイントス王に語りかけられたネッテが答えると、コイントス王はお付きの宰相さんにアレを。と告げる。
宰相さんは用意してあった羊皮紙を数枚手にすると、ネッテ達に配って来た。
受け取ったリエラとパルティが同時に僕に見せてくれる。
そして二人してソレに気付いて互いの視線を合わせて驚いていた。
「……えっと、パルティさん?」
「あの、リエラさん?」
同時に相手がなぜそんな行動を取ったのか理解して、何故か僕に視線を向ける。
あの? 何か?
なぜか半眼で見つめて来る二人に居心地の悪さを感じます。僕、何かしました?
「どうしましたぁリエラさん、パルティエディアさん?」
「「な、なんでもないですルルリカさん」」
ほぼ同時に慌てて告げる二人は互いに顔を見て恥ずかしそうに押し黙る。
対戦表は左右共に同じことしか書かれてないけど……おお、この試合は四ブロックに分かれてるんだね。Aブロック第一試合から対戦者の名前がつらつらと出て来てる。
えーっと、ああちょっとリエラ、第一試合の最初の人の名前、指で見えないよ。
とりあえず、第二試合はルクルと手塚至宝って人の対戦だ。第三試合はモブ男!? 対戦者はモブ彦!? ちょっと神様!? 名前考えるの面倒になったのか!?
んで、第四試合は聖龍華さんとルグス。Aブロックで知り合いがもう出てる。
Bブロックは、ライツバァムという人とカインの対戦が第一試合。アンディとメリエが第二試合。この二人、どっちが勝っても次はカインとの対戦か。まぁカインが勝ちあがること前提だけど。
アルッツェオという人とミルクティさん? 何この明らかに偽名的な名前は。ゲーム用に付けたような名前だ。本名だったら可哀想そうな気もするな。これが第三試合。
第四試合はアキオくん。リエラに浮沈撃喰らってた世紀末覇者風の男だ。デヌというフード纏った男と対戦するらしい。あいつ、運良く生き残っただけみたいだし、ここで消えるだろうな。
Cブロック第一試合はフォン・エヴァンス君。王国騎士団長の息子さんらしい。これは期待出来る闘いになりそう。相手がランス王子じゃなければね。八百長でランス王子が普通に勝ちあがりだろうな。第二試合はベルティーガさん、老人格闘家らしい。マリナとの対戦になる。
第三試合はドラッツァ。龍人族の男の人とケフィン君。犬人族の若者らしい。
第四試合はロッツガルドという貴族風の男の人で、フランネさんという飛龍乗りの槍使いと闘い。残念ながらこの大会で飛龍に跨ることはできないらしいのでフランネさんはただの槍使いとしてしか闘えないみたいだ。ちょっとしたハンデだね。
Dブロックは第一試合にメドヴィン。最強の魔術師という触れ込みが書かれているけど自称らしい。コーデリアさんというリエラみたいな騎士見習いの少女との対戦だ。第二試合がリアッティとケトル。ケトルの貞操は大丈夫だろうか?
ザイツシードというムキムキお兄さんが第三試合に出場。前回優勝者らしい。いいのか? 順当に勝ってたらカインと闘う前にコイツと闘ってランス王子消えないか?
大井手真希巴というおそらくこいつも日本人だろう人と闘うらしい。
第四試合、トリを飾るのはチグサとグエンの試合。グエンさんはリエラを倒したあの冒険者だ。
その対戦表を見ながらふと、パルティの対戦表に眼を移す。
Aブロック第一試合。ストラウスという名前のおっさんと、対戦するのは……アル……はぁぁぁぁっ!?
「第一試合、本年度最年少にして初の魔物の出場です! 緑の姫君、アルセイデスのアルセェェェ!!」
ウサミミの司会者が高らかに宣言する。
試合用に組まれた四角い石畳で作られた試合場に、左の出場口から件の人物が現れる。
楽しげに、笑顔を湛えてアルセさんが現れた。
ちょ、まっ……何してんのアルセぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!?
クイズ、優勝者はだ~れだ?
第一問、Aブロックからのベスト8入りは誰と誰?
Aブロック編
第一試合 アルセ VS ストラウス
アルセ:言わずと知れた緑の姫様。攻撃スキルは血塗れ大根、不折れの白ネギ、アルセギン、マーブルアイヴィと多彩な能力を持っている。
アンブロシアを食べ知恵のある魔物となっているため、どう行動するかは全く予想できない。
ストラウス:初っ端専用やられ役? のおっさん。龍華とのバトルロイヤルで運良く三人のうちの一人に残された人。
第二試合 ルクル VS 手塚至宝
ルクル:アンブロシアを食べて知恵を付けたクルー・ク・ルー。カレーライスを武器にする海兵隊の一人。遠近両刀使いだがいささか攻撃力に難あり。ただし、顔面カレー投げによる目潰しが決まれば強敵すらも倒す。
手塚至宝:異世界の勇者。銀色に輝く軽鎧を身にまとい、クラスターソードという名の剣を扱う。物凄く胸がデカイが背は小さい。ツインテールに赤い髪、乱暴な口調のため対戦者によっては即行喧嘩腰になることも。チート勇者のため攻撃防御共にハンパない。全回復魔法に状態回復、復活魔法あり。と多彩過ぎるスキル持ち。
第三試合 モブ男 VS モブ彦
モブ男:マサーニ家の長男。貴族ではなく剣術道場を切り盛りする父に育てられたため。剣術の腕はそこそこ。弟と共に本選に出場した。
モブ彦:マサーニ家の次男。兄と本戦出場を果たし、初回で潰し合う事に。兄弟ならではの熱い試合が行われることだろうと思われる。
第四試合 聖龍華 VS ルグス・タバツキカ
聖龍華:異世界から来た勇者パーティーの一人。巨大な二連の赤い鎌を楽々振りまわす幼女。致死のダメージを受けても即座に復帰して来るうえに、その小柄な体を俊敏に動かし迫りくる鎌の一撃は、コイントス王国兵士では反応できない程。
ルグス・タバツキカ:アルセにより召喚された不死王。多彩な攻撃魔法を持つが命中率が頗る悪い。物理反射、魔法反射の能力を持ち、空中を浮遊している。
正解者の中から抽選で10名の方にふわふわもこもこにっちゃんストラップが当り……ません!
正解による報償などは一切ございませんので良ければ暇つぶしにどうぞ。




