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その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
第六部 第一話 その武闘大会の予選を勝ち上がったアイツを僕は知らない
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その登録用紙に書かれていた内容を僕は知らない

「やっちまった……」


 宿の一室で、カインは両手で頭を抱えていた。

 今になって自分がアホな事を宣言したことに気付いてしまったようだ。

 何しろネッテを賞品として闘う宣言をしてしまったのだ。

 しかも闘う必要すらない決闘を受けてまで。

 今更取りやめるとも言えない。


 縋るようにネッテを見るが、溜息を吐かれるだけだ。

 彼女の気持ちが痛いほどに分かるだけに、僕も呆れた顔でカインを見ざるをえない。

 しかし、武闘会か。


「選手の登録は今日までらしいから、これから登録しに行きましょカイン。言ってしまった以上は参加して倒すしかないわ」


「そりゃそうなんだがよ……すまん」


「謝っても仕方ないでしょ。そう思うなら全力で勝ちなさいよね」


「……分かってる。あんな奴にネッテを渡したりはしねぇよ」


 顔を上げたカインは、自分の頬を張って気合いを入れ直す。


「っし、登録しちまうか」


「ええ」


 と、言う訳で、一度宿屋を出て闘技場へとやってきました。

 闘技場はどうみてもコロシアムに似ていた。

 入口には受付が設置されており、簡易の木製机の上に書類の束が置かれている。

 受付には男女が二人づつ。

 受付人数が多いので全員がフル稼働だ。


 列に並んでしばらく、ようやく用紙を貰い、簡易の説明を受ける。

 どうやら予選を明日行うらしい。

 大会は明日だけど、この予選で32名まで絞るらしい。

 カインが羊皮紙に必要事項を書いて提出すると、番号が渡された。


 0002。これが彼の番号になるらしく、明日の予選で使われる呼び名となる。

 どうもランス王子が手を回したらしく、カインだけ特別にその羊皮紙を渡されたのだ。

 おそらく王子の方は0001番なのだろう。どうでもいいけど。


「丁度良いわ。リエラさん、参加しましょう」


「へ? わ、私? い、いえ、いいですいいです。今回は見学で」


「闘ってください。私は、私はあなたと闘いたいんです。お願いします!」


 チグサが執拗にリエラを誘っています。どうしたらいいですか?

 まぁイジメてる訳じゃないから放置だろうね。


「まぁいいんじゃないの? 気楽に受けてくれば? 自分がどの程度の実力かもわかるでしょ?」


「そ、そうですかね?」


 アカネの言葉でリエラも揺れる。

 今回はプレッシャーはないし、本当に腕試しに受けるだけ受けちゃうか? とチグサと共に列に並び直していた。

 そんなリエラたちを、アルセはなんとなく眺めている。

 あ。もう。また指口に咥えてるし、最近しなくなったのに、ばっちいよアルセ。


 って、あああ。あいつ、普通に並んでやがった!?

 気付けばマリナが羊皮紙数枚持って戻って来た。ルクルとソレを広げて何やら魔物同士で楽しそうにしている。出るんですかマリナさん?


「ちょっとエロバグ」


 アカネ?


「今の、見た?」


 今のって、なんだよ?


「ついさっき闘技場から出てきたの……メリエさんじゃなかった?」


 メリエ? なんであいつがコイントスに?

 コルッカで消えたけど、何処にいったか不明だったんだよね?


「他に三人いるパーティーだったわ。全員女性。赤いツインテールの騎士風の女に大きな白い包みをもった女、それとロリポップな杖持った女の三人と一緒だった」


 よく見てますね。


「あの子、一体何してんのよ」


 それは知りません。

 くいっと裾を引っ張られて振り向く。

 アカネとの会話とも呼べないアカネの一人言を放置して、裾を掴んできたアルセに向き直る。

 相変わらず笑顔だねアルセ。さっき居なかったけどどこ行ってたの? んで、何か用かな?


 ああ、闘技場の中が見たいんだね。

 カイン達はまだ話し合ってるところみたいだし、いいよ、行こうか。

 僕とアルセは手を繋いで闘技場内へと向う。

 気付いたパルティが後を付いて来たけど、どうしたの? なぜ戸惑い気味に近づいて来るんだろう?


 見えない僕に警戒するように手探りでアルセの横を探すパルティ。

 そういえばパルティは武闘大会に参加しないんだね。

 そんなパルティは僕の逆の手を見付けると、ソコを支えに僕の隣へとやってくる。


「あの、どこにいくんですか?」


 それはアルセの気の向くままにさ。

 パルティの疑問は自分に向けられたとでも思ったのか、アルセが微笑みを浮かべて来る。

 パルティはその笑顔に癒されつつ、結局疑問を解消する術はなかった。


 階段を上がり、二階席にやってくると、喧騒が僕らを包み込んだ。

 普段は本当にコロシアムとして見世物になっているらしい。

 魔物との戦いをやっているらしいフルプレートの男に負けるなーと声援を送っている。

 すごいな。さすが闘技場。熱気が凄い。


「おー!」


 感心しているアルセにパルティ。

 パルティは感動というよりは闘ってる男の動きに注視しているようだ。

 剣士の動きでも見て覚えてるのかな?


 それからしばらく、僕らはアルセと三人で闘いを眺め、喧騒に飲まれるように声援を送った。

 気のせいか微妙に距離が縮まっていた気がしたけど、僕の気のせいだよね?

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