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その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
第六部 第一話 その武闘大会の予選を勝ち上がったアイツを僕は知らない
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その緊急指名依頼を僕は知りたくなかった

「それじゃ、今日は冒険者ギルドで登録して、学校にその証明書で冒険に出る旨を伝えて公欠。その後は旅支度して明日には出発。いいわね?」


 ネッテの一言で僕らは今、冒険者ギルドへとやって来ていた。

 本日ここに居るのは戦乙女の花園と赤き太陽の絆。なんか言い争ってますが?

 どうやら依頼された場所がモロ被りしたらしい。


 討伐依頼のようで、二つのチームが狩る者は違ったらしいのだが、アレン率いる赤き太陽の絆が狙っていた魔物を戦乙女の花園がついでに倒してしまったそうだ。

 それで依頼達成不可になったことでモーネットさんに喰ってっかかっているらしい。


 冒険者ギルドでは時々あることらしく、その辺りは当人同士で何とかしてくれ。ってことだ。

 どうも二人ともヒートアップしだして終息出来なくなっているようで、放置していれば取っ組み合いになりそうな様相だった。

 トップクラス同時のいざこざなために他の面々も遠巻きに見ているしか出来ないらしい。

 随分と珍しい。あの仲の良さそうな2チームが。


「ちょっと失礼」


 丁度受付前で激論している二人を邪魔に思っている人を代表し、アメリス嬢がにっちゃん抱えて近づいて行く。

 顔はにこやかなので怒っている訳ではないだろう。ただ仲裁して来ますわといった様子だ。


「ごきげんよう、お二方」


「あ゛ぁ゛っ!……っ!?」


「邪魔で……す?」


 横から声を掛けてきたアメリスに威嚇しようとした二人、その視線が見つけたのは、黄色いふさふさのウサ達磨。

 先程までの喧騒はどこへやら。一瞬にして血の気が引いた顔をした二人は慌てて距離を取る。

 二人とも、間違って下手にアメリスに突っかかったら、暴発しかねない核弾頭ミサイルを鼻先に突きつけられたような顔をしている。


「はい。仲裁完了ですわ。わたくし、お怒りの方を仲裁するのだけは得意ですのよ」


 それは仲裁ではなく脅しです。

 刀同士で戦争している場所に黒い船で無数の砲門向けてやってきて、開国シテクダサーイというのと同じです。


「アレン、何怒ってんだ? モーネットさんも、随分仲悪そうだったけど」


 カインの言葉で再起動した二人は標的をカインに変えた。


「聞いてくれカイン! モーネットの奴が俺らの獲物を奪いやがったんだ!」


「ですから、アレはこちらに攻撃して来たから迎撃して倒しただけだと何度言えば!」


「テリトリー外に奴が出て来るかよ! お前らの誰かがトレイン行為しなきゃ出て来ないはずだろ!」


「そんなことしませんっ! 第一、私たちがキカザール倒してるところにどうやったらヨイドレなんて来るのですか! あなたたちが酒瓶でも放置していたんでしょう!!」


「知るか! 俺らはまだ一本すら開けちゃいなかったんだよ! 前々から放置でもされてなきゃ誘因されるもんか!」


 ……あー、うん。御免それウチのせいだ。

 僕は思わず背後に視線を向ける。

 そこには一般冒険者に紛れこんで酒を飲もうとしている影兵さん。

 パートナーだろうか? 若い女の子に酒を奪われてダメです。とか言われて泣きそうになっている。


 そういえば、冒険者ギルドではあの人結構見掛けてたな。背景に溶け込んでたから気付かなかったけど、顔を見た後だとそういえばあの時いたなって思いだせる。

 女の子の方も途中からよく見てる気がする。

 その横でホットミルク飲んではふぅとか吐息を漏らしてる可愛らしい女の子は初見だけど……あ、違う。あれ男だ。


 影兵のおっさんがお前だけ飲むなとか拳骨落としてるので女の子ではないのだろう。あの人なんやかんやで女性には甘いみたいだからなぁ。

 パートナーの女の子に頭が上がってない時点でその性格は確定だろう。


「ま、まぁまぁ。ヨイドレなら数体いるはずだろ?」


「つってもよカイン、そいつらが倒した後いくら酒使っても出てこねェんだよ! 多分最後の一匹を倒しやがったんだリポップするかどうかも分からねェのに待ってられるかよ! もうすぐコイントスで武闘大会があるんだぞ! 今から出なきゃ間に合わねぇ」


「ですから、ヨイドレのアイテムは全てお渡しすると言っているでしょう!」


「うるせぇッ。他人の施しなんざいらねェんだよ! 俺らはAランクだぞ。自分等が狩って無い魔物で依頼達成? そんなのプライドが許せるか! あんましグチグチ言うようならその胸揉みし抱くぞコルァ!」


「ホント、女性の敵ですねあなたはッ」


 で、最初に戻る……と。

 僕は無言でアルセを抱きあげると、二人の顔前に持っていく。

 またも邪魔だ。とばかりに二人声を揃えて振り向いたアレンとモーネット。その視界に収まった満面の微笑みを見て呆然とする。


 アルセの笑顔、それは平和への道標。

 うん。最高に可愛いよアルセ。

 押し黙った二人を放置して、ネッテがギルド員に語りかける。

 埒が明かないのでカインに二人を任せて用事を済ます事にしたらしい。


「あ、丁度良かったです。のじゃ姫様はいらっしゃいますか? 指名依頼です」


 ギルド員がチーム名を確認して聞いて来る。

 のじゃ。とのじゃ姫がやって来ると、ギルド員は一枚の羊皮紙を彼女に手渡した。

 皆してその羊皮紙を覗きこむ。


ー シンシ キトク スグカエレ

           ユイア ー


 新たな問題が、発生したらしい。

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