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その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
間幕 その王国やエルフの村で起こったことを僕は知らない
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SSその冒険者が見た悪夢を僕は知るよしもない・前編

 マイネフランのギルドでは今、一つの依頼が頭痛の種になっていた。

 住民たちがお金を出し合って提出した、たった一つの依頼書。


 ~ゴボル平原で最近オークの群れが目撃されていると噂を聞きました。私達はまたゴブリンのような危機が訪れないか心配で夜も眠れません。ギルドで詳細を調べてほしいです。可能であれば早急に駆除してください

                王国民総意より~


 事情を知るギルドマスターやコリータにとってはまさに悪夢だ。眠れる獅子を呼び覚ますようなことをすれば、逆に本当の意味でマイネフランが滅びかねない。

 オークの群れが巨大化して街に攻め寄せるのが怖いのではない。

 その増えすぎたオークを討伐しようとしたバカな冒険者が彼女・・の逆鱗に触れることこそが悪夢であると言えた。


 だから、コリータは総合的な判断を元に、現在このギルドにいる最上級で信頼を寄せられるBランクハンター『オークのプリケツを愛でる会』に指名依頼を行った。

 正直不安はかなりあるが、それでも相手を無条件で攻撃して悪夢を発生させるような可能性のある冒険者には任せられない。


 できるだけオークに親近感を持ち対等に話が出来る存在が必要なのだ。

 そして選ばれたのが、オークの歩く後ろ姿が好きという同好の士を募って出来たパーティーに指名が入ったのである。


 そして、『オークのプリケツを愛でる会』はゴボル平原を歩いていた。

 この平原には狼モドキが群れを成して現れるために殆ど冒険者が居ないのだが、最近街道周辺の道から彼らが駆逐されつつあった。


 最近見つかったセルヴァティア王国周辺の森に住むと言われるツッパリやレディースにより狩られているかららしい。

 今回も最大30匹の狼モドキに三回ほど遭遇しただけでなんとかコーカサスの森へと辿りつく。

 『オークのプリケツを愛でる会』リーダー、ギルバーツは鼻先にある刀傷を擦る。

 とある冒険中に同業者に襲撃され負った名誉の負傷だ。観察対象だったオークを守り切れたのも誇りである。


 あの娘オークのケツはよかった。ぷりっとしていて歩くたびに揺れる豚尻尾がまたセクシーというか。思わずスト―キングをしてしまう程に魅惑的だったといえる。

 今は別の冒険者たちと冒険をしているが、時折ギルバーツのパーティにも入ってくれる意思疎通可能なオークなのもポイントが高い。できるなら彼女になってほしいくらいである。


 といっても筋骨隆々で厳つい顔のギルバーツと付き合いたいなどと相手が思うかは別問題。

 それに幼馴染が寝取られたと言っても相手はオーク。

 さすがに種族の壁を簡単には越えられそうになかった。


「隊長、今回のオークたちは意思疎通できるんですかね?」


 実は、オークのプリケツに魅せられたメンバーは彼以外女性だったりする。

 皆変わりモノの変態だ。

 オークに犯されるのは嫌だが、あのプリケツを振って歩く姿には癒される。らしい。

 女という生物は本当に分からない生き物である。


 今、訪ねて来たのはヒーラー役のモンク、ハーレットだ。

 彼女は背は低く髪を二房に縛っている子供っぽい容姿だが、付いた筋肉は本物だ。下手したらギルバーツより逞しいかもしれない。


「まぁ、闘う訳じゃないんだし、本当にオークの群れがいるか調べるだけでしょ? それともハーレットは闘う方がいい?」


「オーク殴るとピギィって声が出るのよね。あの声聞くの好きなのよ」


 そういえばその声が好きだから格闘家になったとか面接の時に言ってたな。彼女だけはプリケツ云々はどうでもいいらしくて、オークを殴りつけるのが好きだとか言っていた。

 スキルにも殴り過ぎてオークの天敵とか手に入れていた気がする。


 ハーレットに声を掛けたのは魔術師のソルティアラ。

 彼女は真正の変態だ。この前などバカ高い念写石を買ってオークのケツ取りまくってたからな。

 彼女はメスのプリケツよりオスの引き締まったプリケツが愛しいらしい。

 と言ってもオークの嫁になるなど死んでも嫌だとか言っていたし。乙女心は分からないモノである。


 最後に寡黙ながらも一番の理解者。プリケツマスターアキハ。

 何と彼女はプリケツを見るだけで個体の区別が付くのである。

 指摘された時は脱帽したものだ。オーク村で全住民のケツ見ただけで区別して見せたのは後にも先にも彼女ただ一人である。


 ギルバーツには彼女を越える術はない。とはいえ勝負してる訳じゃない。ギルバーツにとってはメスオークのケツ振って歩くプリケツ姿を見られるだけで幸せなのだ。

 アキハのような特異なスキルなど全く必要ないのである。


 そんな四人は森を分け行っていく。

 そんな彼らに悪夢の光景が待っていようなど、彼らは気付きもしなかった。

 存在するオークマザーの存在を知る時、彼らの苦難が幕を開けるのであった。

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