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その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
第四話 そのバグの怒りが齎した結果を彼らは知りたくなかった
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その対戦相手が違う事を彼女は知りたくなかった

「さて、準備は良いな?」


「は、はい!」


 緊張を解す目的で、リエラの手を握ってあげていた僕のもと、というかリエラのもとに、ゴードン、アレン、モーネットがやってきた。

 試合会場が目の前にあり、多くの学生や一般人が観客席へと押し寄せている。

 どうやら客寄せパンダみたいな役割もあるらしく、決闘は街の一大興行みたいなものらしい。


 各王国にもなぜ決闘するに到ったかと勝敗条件、勝利時に手にする物についての報告が既になされており、幾つもの国から使者が見学に来ているらしい。

 特に注目なのはトルーミング王国とフィグナート王国の使者だ。両方肩身狭そうに苦虫を噛み潰した顔をしている。


 何しろ自国の王子が決闘を引き起こし、しかも理由が女性を手に入れるために罠に填めたが失敗したから。という恥であるならば、勝敗に関係なくこの理由が各国に伝えられた時点で国にとっては大打撃であることを、王子たちが知らないからである。

 国王からいろいろと指示された使者たちは、結果次第で自分たちが突きつけなければならない国王の指示を復習するので精一杯な様子だ。


「正直まだ不安はある。しかしだ。俺らがやれることはとりあえずやった。後は全力で倒して来い」


「ダメでもご安心ください。私たち、『戦乙女の花園』が必ず救出します!」


「俺ら『グラスホッパーズ』も協力してやっからよ。気楽にいけ嬢ちゃん。なぁに一人で英雄迷宮踏破できる実力があるんだ。若造一人くらい一捻りだろ」


 すいません。手伝いました。リエラ一人でクリアしてません。

 これ、ちょっとヤバいですか?

 本来あそこの踏破でリエラの大幅レベルアップだったのかな?


 リエラも苦笑いで彼らの対応をしていた。

 大丈夫かな、既にストレスかかりまくって顔が土気色ですよ?

 そのまま彼らと別れてふらふらと会場入りして控室へ向って行くリエラ。


 僕はその横を手をつないだまま一緒に歩いて行くんだけど、これ、かなりヤバいですよ。

 下手したら棄権の可能性すらありそうです。

 控室に辿りつく。

 既に来ていたアルセが笑顔で僕に突進。足元に抱き付いて来たので受け止める。


 アルセはほんと可愛いね。ほら、リエラ、アルセの笑顔で癒されたまえ。

 リエラもアルセに視線を向ける。

 よかった。若干だけどストレス発散になったようだ。


「のじゃ!」


 がんばるのじゃ。みたいな顔で片手を突き上げるのじゃ姫。近づいて来たので頭を撫でてやると、少し困惑した顔をしてくる。

 むぅ。今のは褒めるところじゃなかったの?


「リエラ、ごめんなさい。後から考えたらこの決闘、受けることなかった気がするわ」


「その通りね。私のパーティーからすれば洞窟内に手足縛ったまま放置してやれば闇に葬れたのよ。王族殺しにもならないし、二十階層のボス部屋にでも置いてくれば良かったと思うわ」


「ジェ、ジェーンさんは過激だと思います。でも、確かにそうすればこんな思いすることは……うぅ、胃薬、ないですか?」


「状態回復魔弾なら大量にあるわよ?」


「一瞬戻るんですけど直ぐ悪化してしまって……うぐっ」


 って、リエラ!? リエラが吐血した!? 胃に穴あいちゃった!?

 即座に回復魔弾と状態回復魔弾が打ち込まれる。

 既にリエラの精神は限界の様です。


 アメリスもさすがにヤバいこと言っちゃった。といった顔をしている。

 その顔には若干だがリエラならきっと何とかしてくれるという期待も含まれているのがなんとも。

 エラい人に目を付けられたねリエラ。


「そろそろね。リエラ。負けないで」


「リエラ。俺らが教えた技を使えば、オーギュストなんかにゃ負ける訳がねぇ。もっと肩の力を抜け。勝利できるのが当然の試合に出ると思って行きゃいいんだ」


 カインさん、それ、ただのプレッシャーにしかなってません。

 口々に応援されながら、リエラが一人、控室を出る。その横をあるく僕。そして背後からひたりひたりと近づいて来るルクル。

 怖い。ストーカー怖いから。

 メリーさんじゃないんだからあなたの後ろに居るのとか、止めてください。ホントマジで!


「あ、ルクル、何か用?」


 ルクルに気付いたリエラが聞くと、慌てたようにルクルはカレーライスを差しだしてきた。

 これ食って落ち付けってことらしい。

 いや、これから運動するから胃に負担がかかる食事は、ね?


 仕方ないのでリエラの代わりに食べてあげることにした。

 ちょっと待ってねリエラ。これ食べたら行くからさ。


「入場してください! ジーン・エーゲ・フィグナート、オーギュスト・デン・トルーミング側代表者ぁ! チグサ・オギシマッ!!」


 ……へ?


「え?」


 今、なんか聞いてはいけない名前を聞いた気がするのですが?

 慌ててリエラが走りだす。

 あ、ちょっとリエラさん。待ってカレーが……


 会場に飛び出したリエラが見つけたのは、試合会場に佇む一人の女。

 こちら側だと思っていた勇者チグサが、敵側代表としてそこにいた。


 ガシャン


 そしてリエラが飛び出たことでリエラ側の通路に鉄柵が落ちて来ました。

 ……あの、僕、まだ試合会場入ってないんですけど?

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